学生の窓口編集部

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筆者は大の菓子パン好きです。毎朝菓子パン2〜3個とコーヒー、おなかが空いている夜には3個はペロリ、ということもあります。糖尿病クリニックで患者さんの食事指導にあたる管理栄養士の西山和子さんにそれを話すと、「菓子パン3個だけで1日分に必要なカロリーを食べている計算になるんですよ。それ以上の食事はすべて、『1日のカロリーオーバー分』になります。しかも栄養バランスが非常に悪いです」と目を丸くされました。そこで西山さんに、菓子パンのカロリー情報や食べ方の注意点について聞いてみました。

メロンパン、アンパン、チーズ蒸しパンの合計で1,500キロカロリーに

まず気になるのは、パンとごはんではどちらがカロリーが高いのかということです。西山さんは、人気の菓子パンを例に挙げて説明します。

「菓子パンは1個だとおなかがいっぱいにならないのでカロリーが低いと勘違いしていることが多いのですが、実はごはん一膳よりもかなりカロリーは高めなんです。

例えば、コンビニやスーパーで売っているメロンパンは1個につき100グラムもありませんが、メロンパン・チーズ蒸しパン・デニッシュパン・クロワッサンは1個約400〜550キロカロリー、アンパン・クリームパンは約250〜350キロカロリーです。大きめや、チョコレートやクリームで味付けしてあるメロンパンなら1個700〜800キロカロリーになります。

一方で、白いごはんはお茶碗に軽く一膳で約150グラム・240キロカロリーです。100グラムに換算すると約160キロカロリーになり、菓子パンに比べるとカロリーはかなり低くなります」

えっ、そんなに差があるのですか。昨夜の食事では、白いごはんに変えて、メロンパンとチーズ蒸しパンを食べたのですが……。

「それだけで、1,000キロカロリーは食べていますね」(西山さん)

ええっ、筆者の一日の基礎代謝は、ヘルスメーターによると約1,200キロカロリーなんですけど……。朝と昼の食事分を足すと、すっかりカロリーオーバーです。

メロンパンとチーズ蒸しパンのカロリーを初めて知った人は、たいていがく然とされます。1日に必要な摂取カロリーの基本は、身長170センチの人で約2,000キロカロリー、160センチの人で約1,800キロカロリーです。これ以上を毎日食べて積み重ねると、カロリーオーバーになって太っていきます」と言う西山さんは、メロンパンについてこう説明を続けます。

メロンパンのカロリーが高い理由は、メロン風味のクッキー生地にあります。小麦粉、バターやマーガリン、砂糖をたっぷり使ってあり、グラニュー糖や食用油でコーティングして焼き上げています。フルーツのメロンの栄養素はありません」

続いて、ドカ食いが目立つ菓子パンの組み合わせと栄養についても注意を促します。

「見た目にシンプルな食パンは、5枚切りで1枚約200キロカロリー、ロールパンは1個約100キロカロリー、コッペパンは約300キロカロリーです。たくさん食べても大丈夫そうという安心感からか、バターやマーガリン、ジャムをたっぷり塗ってドカ食いする人が多いようです。それらを塗るとさらに100〜400キロカロリーはオンされ、バタートースト1枚で約300〜500キロカロリーになります。それに、これらだけだと栄養が糖質と脂質にかたよります。

調理パンを選んだ場合、焼きそばパン(約350キロカロリー)とコロッケパン(約350キロカロリー)とドーナツ1個で約1000キロカロリーになります。調理パンだとおかずと一緒に食べているような気になりますが、これも栄養素は糖質と脂質にかたよっています」(西山さん)

■クロワッサンやデニッシュを食べた日は揚げ物料理は食べない

ではここで西山さんに、菓子パン好きにとって、カロリー過多にならず、また栄養バランスがかたよらない食べ方を教えてもらいました。

・コンビニやスーパーで買うときは、パンの包装にカロリー表示シールが貼ってあります。買う前に必ずそれを確認する習慣をつけましょう。どのパンがどれぐらいのカロリーかが把握できるようになり、買い過ぎ食べ過ぎ予防につながります。

また、「1個300キロカロリー以上のパンは買わない」と決めるなど、マイルールを設定して実行しましょう。

・スポーツの前など、エネルギーを確保したいときには、アンパンなど糖質系の菓子パンを1個食べるのはカロリーオーバーにはなりません。ですが、夕食時や後にスイーツのように食べる、寝る前に食べると、就寝中、糖分が中性脂肪となり脂肪細胞に吸収され、皮下脂肪や、メタボの原因となる内臓脂肪がつきますから、どの菓子パンでも避けるようにしましょう。

・クロワッサンやパイ、デニッシュなどは、たっぷりの油でサクサクとした触感に仕上げてあります。このタイプのパンを食べた日は、脂質のとり過ぎを避けるために、ほかの揚げ物料理を食べないようにしましょう。

・フランスパン(100グラムで約280キロカロリー)や雑穀入りのパンなど、噛(か)みごたえのあるパンを選ぶと、カロリーは減りませんが、噛むことで満腹感を得られ、脳の活性化の助けにもなります。

パンには、糖分だけではなく塩分が多く含まれています。塩分をとり過ぎると、むくみや高血圧など体に負担がかかります。食パンは1日に2枚まで、菓子パンは1日1個までにしましょう。

・菓子パンを食べた日は、ケーキなどスイーツを食べるのを避けましょう。

・コンビニやスーパーで買い物をするときは、パンだけではなく、野菜サラダなど野菜の総菜、チーズや卵、鶏のササミなど低カロリーのタンパク質と、ドリンクには糖分や脂肪分控えめの野菜ジュースを選び、いっしょに食べましょう。

・どうしても菓子パンを食べたいときには、あまりお勧めはできませんが、おやつとしてではなく食事と考えて、主食のごはんや麺を少し減らしましょう。そのうえで、野菜などの食物繊維が含まれる料理、タンパク質の薄味のおかずも食べて、栄養バランスを整えることを意識してください。

最後に西山さんは、

「菓子パンを食べ過ぎたと思ったときは、食後にいつもより多く歩くなど、運動を心がけましょう」とアドバイスを加えます。

聞けば聞くほど、菓子パンが高カロリーであることに驚きました。日常的にカロリーオーバーしているという発見もありました。これからはせめてパンのカロリー表示を確認し、組み合わせ方や栄養バランスを意識するように心がけたいと思います。

(品川緑/ユンブル)

取材協力・監修 西山和子氏。糖尿病専門・ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)にて管理栄養士、糖尿病療養指導士。糖尿病、生活習慣病、メタボリックシンドロームの患者さんを対象に、パーソナルな食事指導にあたる。『専門医が考えた 糖尿病に効く「腹やせ」レシピ』(福田正博 洋泉社)の監修担当。また、食生活に関する記事の執筆、監修多数。