ザ・ビレッジズで演説するトランプ米大統領=1日、フロリダ州/Roberto Schmidt/Getty Images

(CNN)先週は週明け早々から、トランプ米大統領にとってとんでもない週になった。

わずか24時間のうちにさまざまなことが起きた。保健福祉長官が10代男子の精子が減少する危険性を唱える間、トランプ氏は(またもや)居眠りを始めたようだ。同氏はホワイトハウスを「おんぼろ屋敷」と呼び、ベネズエラを51番目の州にする案に思いを巡らせた(すでに同国首脳を拘束した後のことだ)。インディアナ大学のフットボールコーチ、カート・シグネッティ氏のすぐ隣に立ち、直接顔を見ていたようだが、その直後に同氏をなかなか見つけられなかった。

11日深夜には過激なSNS投稿を連投した。1時間もしないうちに50回以上の投稿と再投稿。普段からとっぴな投稿が多いトランプ氏だが、これは度を越えていた。その中には、2020年大統領選でドミニオン社の投票装置が数百万票を削除したという、とうの昔に誤りが証明された説や、ヒラリー・クリントン元国務長官のメールサーバー問題、デマサイトから引用した共和党上院議員の偽発言、民主党有力者らの不名誉なAI(人工知能)生成画像、黒人についての侮辱的な動画3本(このうち1本には『いつも悪だくみしている…』という字幕がついていた)、オバマ元大統領の逮捕を求める2件の投稿が含まれていた。

懸念を招く類いの行動であることは間違いない。だが来月80歳になるトランプ氏はこれまで、本来の追及を免れてきた。その大きな理由として、同氏が高齢とみなされるよりずっと前から10年以上にわたり、公の場で奇妙な行動を繰り返してきたという背景がある。

実際、トランプ氏のこういう行動に対する採点は甘い。同氏はよく、反対派が「トランプ錯乱症候群」で過敏な反応を示すとぼやいているが、逆に「トランプ感受性低下症候群」とも言うべき風潮の恩恵も受けている。

ただ一方では、米国民が同氏の行動に懸念を強めていることを示す証拠が増えつつある。

最近の事例

トランプ氏が最近見せたおかしな行動は、先週の例以外にもたくさんある。

トランプ氏は先月、イランが同氏の要求をすべて受け入れたと何度も発表した。これは今も事実無根だったとみられている。イラン攻撃についての同氏の発言は常に、驚くほど現実からかけ離れている。

ある時は、バンス副大統領が戦闘終結に向けた交渉のため、パキスタン行きの飛行機で出発したと主張したが、この時バンス氏はまだ地上にいた(そして結局、出発することはなかった)。

トランプ氏がイランの「文明全体を破壊」すると脅し、明らかな戦争犯罪を予告した後、元盟友の間では同氏を解任するため、大統領が職務遂行不能になった場合の手続きを定めた合衆国憲法修正第25条の発動を提案する動きもあった。

同氏はまた、今月初めから立て続けに、公の場でとりとめのない演説を繰り返した。わけの分からない演説も多く、特にフロリダ州の退職者コミュニティー、ザ・ビレッジズでは支離滅裂な話の中で何度も悪態をついたり、マイクの不具合について怒鳴り散らしたりした。

人々が肩をすくめる理由

だがトランプ氏は意識的にしろ無意識的にしろ、今まで何年もかけて、こういう行動に対する米国民の耐性を育ててきた。

少し前、24年大統領選に向けた選挙戦で何度か分かりにくい話を披露した後、トランプ氏は自身が「九つくらいの違った話をして、それがすべて見事にまとまる」という「織り合わせ」の話術について語り始めた。

トランプ氏は、このような場で自分が発言する内容の最終的な一貫性を誇張していた。だが今度は突然、時々散漫になるその演説を、自身も含めた内輪のジョークと位置づけ始めた。さらには自身に隠れた弁論の才能があるしるしだとまで言い出し、そういう説を信じそうな層に売り込んだ。

トランプ氏はイラン攻撃関連などで絶えずうそや誤った発言を繰り返してきたが、人々はそのたびに肩をすくめてやり過ごすことが多かった。大統領1期目にみられた虚偽の主張、誤解を招く主張は3万件超を記録。同氏が事実をねじ曲げても、もはやニュースにはならない。

そして時が経つにつれ、戦略的なうそとみられる発言と、同氏がまき散らす現実離れした誤りを区別することは難しくなる。

トランプ氏はこれまでのキャリアを通し、人目を引くことを好む性向を示してきた。リアリティー番組のスターなら恐らくだれでもアドバイスする通り、注目を集めるにはなにか変なこと、衝撃的なことをするのが一番簡単な方法だ。

だがそれを繰り返すと、聴き手は次第に意図的な挑発とうかつな失言の区別ができなくなる。すべてがショーの一部かもしれないと判断される傾向がある。

米国民が懸念強める気配も

とはいえ、人々が疑念を棚上げにできる期間は限られている。失言がますます明白に、頻繁になってくると、見ている人々はいったい何が起きているのか、年齢のせいではないかと疑い始めることが多い。

さらに最近の世論調査が示す通りトランプ氏の支持率が下がるにつれて、有権者は同氏の失言に目をつぶるのが難しくなっている可能性もある。

実際にデータをみると、不支持率の高さに加え、国民の間でトランプ氏をいわば「ちょっとおかしい」ととらえる傾向が強まっているのは明らかだ。

ロイター通信と調査会社イプソスによる最近の世論調査では、トランプ氏が年とともに「ますます気まぐれになった」と答えた人が全体の61%、共和党支持者の中でも30%を占めた。

別の調査では、トランプ氏の「情緒が安定」していないとの回答が71%、安定しているという回答が26%だった。24年大統領選後に調査機関ピュー・リサーチ・センターが報告した62%対37%の結果に比べて、差が広がっている。

米紙ワシントン・ポストとABCニュース、イプソスが先月実施した調査で、トランプ氏が大統領の職務で要求される頭脳の明晰(めいせき)さに欠けると答えた人は、過去最高の59%に上った。23年に比べると16ポイントも上昇している。

同じ調査で、トランプ氏が重要な決断を慎重に検討していないとの回答は全体の67%、共和党支持者でも30%に上った。

この結果は何を意味しているか。生か死かの決断を委ねられた国家元首が、慎重に決断を下していない。そう考える国民が大半を占めるということだ。

大統領としてのトランプ氏に対して、これは驚くほど悲観的な見方だ。同氏の支持率が過去最低を記録したタイミングと一致しているのは偶然ではない。

国民がこれまで気づかなかったというわけではなく、ただ目をつぶるのが一層難しくなってきただけだ。

本稿はCNNのアーロン・ブレイク記者による分析記事です。