NHK『あさイチ』で「尿もれ対策」特集。40歳以上の3人に1人が経験する尿漏れの原因は?投薬や手術で治療が可能。予防には骨盤底筋へのダメージを防ぐ
2026年5月20日放送のNHK『あさイチ』は「尿もれ対策最新情報▽排せつリハビリで生活が変わる」の特集。そこで、女性に多いの尿漏れなど「尿のトラブル」について専門家が解説した、『婦人公論』2011年7月22日号(2022年3月改訂)の記事を再配信します。*****いつもと違う、どこか調子がよくない…と思っても、かかりつけ医のいない人はなかなか気軽に聞けないもの。小さな不調に大きな病気が隠れていることもあるので、油断は禁物です。また、人になかなか打ち明けられない悩みも、日々医療は進歩し、治療法が開発されていることも。大切な自身や家族の健康は、ぜひ医師に相談してみてください。女性に多い病気を中心に、症状、原因、治療、予防の4つの観点でご紹介します。第2回は、「尿のトラブル」です。(取材・文/読売新聞 渡辺勝敏)
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目次
● 症状 歩くだけ、腰を上げるだけでも漏れる
● 原因 骨盤底の筋肉がダメージを受けて起きる
● 治療 筋力トレーニングと投薬、手術治療も
● 予防 骨盤底筋をいたわり水分を摂りすぎないこと
〈症状〉歩くだけ、腰を上げるだけでも漏れる
40歳以上の3人に1人が経験しているという尿漏れ。せきやくしゃみ、スポーツや重い物を持ち上げるなどの動作で腹部に圧力がかかった時に出てしまうのが、尿漏れの半数を占める腹圧性尿失禁です。症状が重くなると、歩くだけ、腰を上げるだけでも漏れることがあります。
もう一つは、急に我慢できない尿意が襲ってくる切迫性尿失禁。膀胱が勝手な収縮をする過活動膀胱が原因です。帰宅して鍵を開けようとする、冷たい水に触れるなどの刺激によって尿意が起こったり、トイレの前まで行って間に合わなかったりといったケースは、過活動膀胱ですね。
頻尿や尿漏れがあると、映画や旅行など、尿意を我慢する必要がある場所に行くのがおっくうになってしまうことも。これは精神的にもよくありません。治療法はあるので、泌尿器科医に相談してください。
一方、頻尿や尿を出しきれていない感じから始まって、やがて排尿後にツーンとしみるような痛みを感じ、尿が濁ってくるのが、細菌性の膀胱炎です。尿が臭くなることもあります。
〈原因〉骨盤底の筋肉がダメージを受けて起きる
妊娠・出産によって尿道括約筋など骨盤底の筋肉がたるむと、尿道の締まる力が弱くなります。これが腹圧性尿失禁の原因です。そして、尿意切迫感がある過活動膀胱は40歳以上の日本人の約14%に生じます。脳卒中やパーキンソン病など神経に関連する病気が原因の場合もありますが、加齢に伴って骨盤底の筋肉が弱くなっていくことも関係しています。そのほか、膀胱や子宮などが膣から出てきてしまう骨盤臓器脱、男性の場合は前立腺肥大症も過活動膀胱を招く原因に。腹圧性と切迫性をあわせもつ混合性尿失禁も少なくありません。
膀胱炎は、細菌が尿道から膀胱の中に入り、繁殖して発症するもので、原因菌の8割は大腸菌です。「トイレに行くのを我慢するとなりますか」という質問をよく受けますが、尿は本来無菌なので正確には「NO」。ただ、膀胱に菌が入り、排尿の間隔があくと、菌が排出されずに膀胱内に留まる時間が長くなり、繁殖しやすくなります。対策は、膣や肛門にいる菌が尿道口から膀胱に入らないようにすること。陰部の周囲には普段から菌がいます。性行為の後、そのまま寝てしまわずに排尿して、尿道に入ったかもしれない菌を出すのも予防の一つです。
〈治療〉筋力トレーニングと投薬、手術治療も
腹圧性尿失禁も切迫性尿失禁も、骨盤底の筋力の低下が関係しているので、骨盤底筋訓練が推奨されています。膣と肛門を締めたり、緩めたりを10回ぐらい=1セットとして、毎日5セットほど続けてください。2〜3ヵ月続けると約7割の方で効果を感じられます。
腹圧性尿失禁には、尿道の抵抗を高める「β2アドレナリン受容体作動薬」という飲み薬が使われます。副作用として、指先のふるえや動悸が出ることがあります。2週間ぐらいで効果がわかります。もっとも効果が確かなのは、グラグラしている尿道をテープで支える手術(下図参照)で、膣や下腹部を小さく切開して、ポリプロピレンでできたメッシュ状のテープを入れる方法です。
尿道の支え方によってTVT手術とTOT手術という2通りの方法があります。いずれも局所麻酔で、1〜2泊の入院で実施で手術可能です。
切迫性尿失禁を招く過活動膀胱には、抗コリン薬やβ3アドレナリン受容体作動薬が処方されることが多いですが、トイレに行くのを少し我慢することで膀胱を広げる「膀胱訓練」を併用するとより効果的です。
膀胱炎治療は抗菌薬の服用が中心。水分を多めに摂って膀胱を洗い流せば、悪化を避けられます。
●尿失禁の手術治療

尿道をテープで支える手術。支える方法は2通りある(図提供◎巴先生)
〈予防〉骨盤底筋をいたわり水分を摂りすぎないこと
尿漏れの予防は、骨盤底に負荷をかけないようにすることです。重い物を持たない。排便時にいきみすぎない。お産では、靱帯や骨盤底筋が伸びるため、元に戻ったとしても、出産前と同じにはなりません。また、肥満は骨盤底筋を自分の体重で傷めていること。肥満の方はまず減量を。骨盤底筋訓練も役に立ちます。太っていて、腹圧性尿失禁がある方は、体重を減らすだけでも改善します。
最近、気になるのは、脳血管疾患の予防などの理由で水分を摂りすぎる方がいること。確かに狭心症の方の心筋梗塞を防ぐ可能性は少しはあるようです。また脱水はよくありませんが、過剰摂取は頻尿の原因になるうえ、過活動膀胱治療薬も効きにくくなります。1日で、体重(kg)×40ccよりも多く尿が出る方は多尿で、水分の摂りすぎです。自分の尿量を排尿記録で確認してみるとよいでしょう。水分を摂ったらすぐにトイレに行きたくなる人も、トータルの摂取水分量が多すぎる可能性があります。
膀胱炎の予防は、大腸菌を寄せ付けず清潔にしておくこと。排尿・排便時は前から後ろに拭きましょう。便秘や下痢をすると大腸菌が増え、尿道に入る危険が高まります。尿漏れで尿漏れパッドを使っている場合、湿気により細菌が増殖しやすくなるので、適切な容量のパッドを使用し、こまめに取り替えるようにしてください。
