「助けて」より「火事です」無期懲役囚が明かした性犯罪者の思考、“狙われたとき”の言葉の意味
ここ数年、子どもや見ず知らずの女性に性加害を繰り返し、命を奪った受刑者たちを取材してきた。
性犯罪者の思考に触れる機会が増えるにつれて、想像もしていなかった発想や考えに出合うことがある。
もちろん、彼らの話を一般化することは難しい。それでも今回は、そのうちの一人である無期懲役囚の証言を紹介する。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●狙うのは「スカートをはいた人」
現在、無期懲役刑に服している男性は、10代の高校生から50代まで、幅広い年代の女性に性暴力を繰り返してきた。
「私の欲求としては、不特定多数の女性と関係を持ちたいというのがあります」
犯行に共通するのは、被害者と面識がないという点だ。
「スカートをはいた人を基本狙っていますね。状況は一人歩きをしていて周りに人がいないことです。場所は住宅街でも大きな道路沿いでも特に気にしていません」
さらに、自身の視点から“対策”のようなものも出してきた。
「私のように、見ず知らずの人を狙う事案であれば、一人で出歩かない。露出の多い服は着ない。油断しないことじゃないですかね。特に、車の通りが多い道路だからと安心しないことです」
実際に、男性は交通量が多い道路のすぐ近くで事件を起こしている。
言うまでもなく、どんな服装をしていようが、夜道を一人で歩いていようが、被害に遭う理由にはならない。ただ、このような思考を持つ人間が現実に存在することもまた事実だ。
●無期受刑者「助けてと叫んでも効果ない」
では、仮に男性のような人間に狙われた場合、逃れる方法はあるのか。
記者の問いに対して、思いもよらない答えが返ってきた。
「ムダに犯人を挑発するようなことを言わず、大声で叫ぶことだと思います。
『助けて』『やめて』と叫んでも、トラブルに巻き込まれたくない人が多いので、あまり効果はありません。
一番いいと思うのは、『火事です。逃げて』を連呼することだと思います。やじ馬は来るし、家の中の人も出てくる可能性が高く、助かる可能性は高いと思います」
周囲の「好奇心」と「自己防衛本能」にうったえることが、結果的に自分を守ることにつながるという発想のようだ。
●「私が言えるのは殺人まで至らない方法」
男性は「ただ」と前置きし、こう付け加えた。
「強姦に至る事件の多くは、身内や顔見知りが多く、私のように行き当たりばったりにする人は少ないと思うので、参考になるのか分かりません。なので、触られるだけ、犯人が集団の場合は、役に立たないと思います。
特に、痴漢や強制わいせつのケースですと、人ゴミでも起こりますし、性犯罪の被害者にならない方法はないと思います。私が言えるのは、強姦や殺人にまで至らず、痴漢や強制わいせつの被害で止めるためのことでしかありません」
●過去2回プログラム受講も再び性犯罪
日本では、2004年の奈良小1女児誘拐殺人事件をきっかけに、2006年から性犯罪者に対する特別な再犯防止プログラムが導入された。
国の調査では、一定の成果を出しているようだが、すべての受刑者にあてはまるわけではない。
男性は今回が3度目の服役だ。過去2回、再犯防止プログラムを受講したが、出所後に再び面識のない女性を襲った。
「殺害するつもりはありませんでした」と語る。しかし、被害女性に反抗的な態度を取られたことで首を絞め、死に至らしめたという。
●刑務所のプログラムを「机上の空論」と疑問視
刑務所でのプログラムは意味がなかったのか──。
男性は、事件を起こしそうになった際の対処法を考えた時間が「一番印象に残っている」と振り返る一方で、こう語った。
「女性のいない刑務所で考えたものですから、机上の空論でしかなく、あまり役には立ちませんでした」
そのうえで、再犯防止に必要な対策について、次のように持論を展開した。
「何度も再犯をしている私からしますと、再犯率の高さを刑務所のせいにするのは間違っていると思います。
刑務所で行われている教育自体には意味があると思いますが、出所後にも月に1度くらいでも再教育やグループミーティングを行ってくれる機関があれば再犯リスクは下げられるのではないでしょうか。
そういった機関が皆無という訳ではありませんが、有料のところや高額のところが多いですね。また、平日の早い時間に行われており、受講するためには仕事を休まなければならず、出所後稼ぎが少ない人はなかなか受けられないというのが現状ですね。
今であれば、リモートでできるようなものがあるかもしれませんが、大げさなものでなく、同じような加害者同士で話し合える場があるだけでも違うのではないかと思います」
●「死刑の方が気が楽だった」
別の機会には、こんな考えも示した。
「再犯を防ぐための対策は私にも何がいいのか分かりません。現行の刑事施設で行われている教育だけでは全く効果はないと思います。
教育で取り入れてほしいと思うことは、リアルな性被害者との対話ですね。その苦しみを直接ぶつけられた方が私はたまらなく辛いと思うからです。
うまく言えませんが、事件後への影響や怒りを直接言われると凹むと思いますが、印象として強く残ると思うからです」
なぜ再び刑務所に戻るとわかっていながら、衝動を抑えられないのか。
「『刑務所に戻るから我慢する』という気持ちは、出所後半年くらいしか維持できません。これは性犯罪者に限らないと思います。簡単な手段を知ってしまうとやめられないし、刑務所の苦より、面前の苦をどうにかしたくなるからだと思います」
無期懲役刑が確定し、社会に戻ってくる可能性は低い。彼は、その現実を前にしてこう吐露した。
「死刑の方が気が楽でした」

