赤坂サウナ火災で問われた「“作動しない”非常ボタン」動かない時に確認すべき3つ
設備検査は非常ボタンを押した時にベルが鳴るかどうかに加え、ベルの音量が大きすぎず小さすぎず適切なラインにあるかなど、設備の状態や信頼性を厳密に計測する。こうした細かなチェックが人々の安全を守っているのだ。
また、非常設備の寿命について福田氏に尋ねてみると、多くの機器は5年ほどで耐用年数を超えるという。
「当社では定期交換というのを推奨していますね。非常ボタンって平時であれば使わないし、使う機会が来ない方が良いものですから、長く放置されているうちに湿気などの影響を受けやすいんです。2年や3年ならともかく、5〜10年も経っているものは早く更新した方がよい」
◆「カッコいいけど見つけづらい」より「多少ダサくてもすぐ見つかる」方がベター
ところで、XなどのSNSでは時おり、安全ボタン・非常装置と最新建築デザインのミスマッチが話題となる。モダンでスタイリッシュな空間設計を優先するあまり、安全ボタンなどの位置が壁に溶け込んでしまい、非常時にうまく探せないのでは?と指摘されるケースが少なくない。これについて、福田氏に見解を聞いてみた。
「できるだけ避けていただきたいですね。非常ボタンなど見た目は野暮ったいし、どうしても最新のデザインからは浮いてしまうんですけど、逆にその『周りから浮いている』ことこそが視認性向上にもつながっていますので。デザインよりも非常時のアクセスしやすさを優先してほしい気持ちはあります」
こうした非常装置とデザインの関わりは、その建物や設備を主に誰が使うかでも大きく変わってくるという。例えば美容室やクリニックなど、常に数人〜十数人のスタッフが限られた空間内に滞在している施設であれば、スタッフ側が研修などで安全ボタンなどの位置を把握していれば良いので、非常装置周りのデザインに若干の融通は効くだろう。反対に、大型商業施設のように広大な空間を一般客が主に利用するケースは、非常装置の周りに一般人しかいないことも想定して目立ちやすいデザインにすべきだ。
「テナントビルのオーナーなど、これから安全ボタンや非常装置を建物に設置していく立場の人は、こうした建物用途や希望デザインについて、設計事務所や施工会社などとよくコミュニケーションしてほしいですね。一般的な良識ある会社であればクライアントに対して、あえて安全面を踏み倒すような提案はしないはず。逆に、デザイン偏重でリスク無視の提案をする相手には、警戒が必要です」
火災や事故は単独の原因によるものではなく、複数の細かな偶然や瑕疵が積み重なった帰結として発生してしまうものだ。その一端は建物の利用者だけでなく建物そのもの、そして建物を作った会社やオーナーにもあるのである。
◆2024能登地震で見えた「建物+地域」の安全作りへの教訓
ステンレス株式会社は石川県金沢市に本拠地を置いているため、2024年元旦に県内の能登半島で発生した地震では、多くの大変な経験をしたという。取材の最後に、当時の話を福田氏に伺った。
「私は石川県内のライオンズクラブ(社会奉仕活動を行う民間団体)に所属しており、当時はコーディネーターを担当していました。地震後の1月2日には災害対策本部を立ち上げて活動を始めましたが、もう非常ボタンも安全装置も全く役に立たないほどの有り様で……」
