香水ブランド「ベニュー(Venue)」は、誕生してからまだ数カ月だが、すでに世界各国に支持者を獲得している。9月に立ち上げられ、米国とベトナムを拠点とする同ブランドは、パリのドーバーストリート・パルファム・マーケット(Dover Street Parfums Market)やニューヨーク市のニッチなブティック、ステル(Stéle)などの小売パートナーを確保済みだ。「いつか独自の顧客体験、つまり、独自の店舗を持つことが目標だ。それまでは、キュレーター主導の販売戦略を立て、同じ価値観や感性を持つごく少数の小売パートナーと協力したいと思っている」とベニューの共同創設者であるダフネ・ファム氏は語った。ファム氏と、タン・グエン氏およびウェイン・ウー氏らほかの共同創設者(いずれもVSCO出身)は、ベニューを立ち上げるにあたって、市場調査の動向よりもベトナムの歴史のような文化的なナラティブに注目することをめざした。彼らにとって幸いなことに、同ブランドは2026年に香水市場をリードするであろういくつかの主要なトレンドの交差点に位置している。そうしたトレンドには、国際舞台で注目度を増している多くのアジアの香水ブランドや、主流へのアピールよりもニッチなキュレーションを優先するブティックやブランドに対する需要が含まれる。「香水やラグジュアリーについては、重心がパリやニューヨーク市のような従来の都市から移りつつあるように感じられる」とファム氏は言う。
ニッチな香水を求める消費者をめぐって多くのブランドが競い合うなかで、優勢を保つには、ひときわ高い品質と価値を提供する必要がある、とパリのフレグランスメゾン、ドルセー(D’Orsay)でマネージャーを務めるクロエ・プリジャン氏は語る。ドルセーは、売れ筋のトップ10に注力すべく、ラインアップから数種類の香水を徐々に減らしているという。新たな消費者は、ドルセーの「エクストレ・ドゥ・パルファン(extrait de parfum)」シリーズにも引き付けられている。エクストレ・ドゥ・パルファンは2024年に発売され、2025年にトレンドとなったホーリーベリー(ミルキーなストロベリーの香りで、アジアでヒット)のような香りを追加して拡大された。「生き残るためには最高でなければならない。最高であるためには、自らを高める必要がある。強力な商品が10種類あると分かっているので、ベストな商品に賭けることにしている」とプリジャン氏は述べた。2026年に向け、ドルセーは地域限定商品や限定版の発売に注力するとし、「限定版やクリエイティブなコラボレーション、地域限定商品は、注目を集めて、消費者向けによりターゲットを絞った体験重視の瞬間を生み出すのにも役立つ」とプリジャン氏は語る。
熱狂する若年層と「うま味」を取り入れた次世代のグルマン
フーバー氏も、2026年に向けてベストセラー商品の一部のエキストラバージョン(高濃度タイプ)を検討しているという。一部の市場調査会社や複合企業が用心深く香水市場の成長鈍化を見込んでいる一方で、フーバー氏は、さらに多くの香りを熱望しているまったく新しい世代の消費者が存在すると見ている。同氏によると、最新のニッチな香水を試したいという消費者の増加により、ミラノで開催される「エッシェンス(Esxence)」やニューヨークで開催される「セントエクスプローラー(ScentXplor)」のような見本市は、ますます一般向けの色合いを強めているという。「香水をめぐっては、特に若い世代の熱量が大きくなってきており、興奮が冷めてきているわけではない」とフーバー氏は主張する。その傾向は、Z世代の男性の香水マニアだけでなく、もっと若い消費者にも当てはまる。「友人の10代以下の子どもはみな、(冗談抜きに)たとえ年齢が5歳でも、香水に夢中だ。私のオフィスに来ると、皆がサンプルを欲しがる」。近年、プレグランスカテゴリーではグルマン(おいしそうな香り)系が主流となっており、そうした若い消費者にとって魅力的なバニラやマシュマロのようなスイーツ系の香りが、ニッチな香水にもマス向けの香水にも採用されている。だが、アーキストとドルセーはいずれも、2026年にグルマン系商品を拡大して、セイボリー(うま味やスパイス系といった)食欲をそそる香りに拡張しようとしている。「ライスベイパー(炊き立ての米から立ち上る蒸気の香り)に取り組んでいる。ほかの人々が以前、そういったものを用いていたのを見たことがある。シイタケやそば粉にも取り組んでおり、醤油も用いている」と、フーバー氏は日本からインスピレーションを得て今後発売される予定のアーキストの香りについて語った。「すべて『うま味』だ。新たなグルマン系を探しているような感じだ」。[原文:Beauty Briefing: The trends set to shape the fragrance market in 2026]Emily Jensen(翻訳:矢倉 美登里/ガリレオ、編集:京岡栄作)