三菱商事が洋上風力撤退 今後の日本のエネルギー政策にも影響
「誠に遺憾ながら、開発を取りやめざるを得ないとの結論に至った。このような結果になったことを重く受け止めている」
三菱商事社長の中西勝也氏はこう語る。
三菱商事が秋田県と千葉県の3海域で開発を進めていた洋上風力発電事業から撤退することを決めた。資材価格の高騰や金利上昇、為替など、当初計画から建設費用が2倍以上に膨らんだため、「実現可能な事業計画を立てることは困難との結論に至った」(中西氏)。
2021年に「第1ラウンド」と呼ばれた国内初となる事業者入札で、対象となった全3海域を〝総取り〟した三菱商事。 この時、同社や中部電力などの企業連合が提示した売電価格は、1㌔㍗時当たり11・99円~16・49円。当時、「最低でも20円はないと採算が合わない」(他の応札企業)と言われた中で、〝圧倒的な売電価格の安さ〟が評価された。
このため、今回の撤退理由として、その売電価格の安さがアダになったのではないか? という声が多い。しかし、4年前の入札時点では十分な採算を確保していたとして、中西氏は「安値(が理由)というのとは論点が違う」と、こうした見方を否定。あくまでも中西氏は「想定をはるかに超えてコストが膨らんだため」と、環境変化が撤退の原因だと強調した。
海外でも、洋上風力発電で世界最大手のデンマーク・オーステッドが、2023年に約6000億円の減損損失を計上。英BPとノルウェーの石油大手エクイノールも同年、約1200億円の減損損失を計上した。三菱商事は24年度に522億円の減損損失を計上している。
あるアナリストは、三菱商事について「採算性に課題がある案件を無理に継続せず撤退を選択することは、脱炭素ビジネスを聖域化せず、経営判断にガバナンスが機能している証左。長期的には投資家からもポジティブに評価されるだろう」と指摘。 一方で、「洋上風力の象徴的案件が頓挫する点で政策的には痛手」と、今後の日本のエネルギー政策への影響を懸念する。
日本政府は2040年度に再生可能エネルギーを主力電源化するとして、23年度に22・9%だった再エネを4~5割程度に増やす計画。その切り札とされるのが洋上風力だ。
日本ではすでに三菱重工業や日立製作所、日本製鋼所が相次ぎ風車の製造から撤退。現在、日本に風車のサプライチェーン(供給網)がなく、今回は部材調達の大半を海外からの輸入に頼るということのリスクを改めて浮き彫りにした。
大きな波紋を呼んだ三菱商事の撤退。今後、同社に続く形で、第2ラウンド、第3ラウンドで応札した企業群が撤退しないのか。そして、三菱商事撤退後に同3海域で再入札をしたとしても、手を挙げる企業が出てくるのかどうか。今回の決断は、日本のエネルギー政策にも大きな影響を与えそうだ。
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