連載「lit!」第150回:Mrs. GREEN APPLE、RADWIMPS、back number……バンドの“覚悟”が刻まれた最新5曲
映画『#真相をお話しします』を観終えた直後にこれを書いている。Mrs. GREEN APPLE・大森元貴の演技が素晴らしかった。主題歌であるMrs. GREEN APPLEの「天国」は、大森が映画に携わったからこそ生まれた楽曲だと思うし、バンドの歩みのうえでも重要な一曲になるのではないかと感じている。
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ほかにもこの春、バンドの“覚悟”を感じる作品が複数届けられた。そこで今回の「lit!」では、最新リリース作品のなかから「渾身の一作」とも言うべき5曲をピックアップする。
■Mrs. GREEN APPLE「天国」
ひとりの人間のなかにある善と悪が描かれているように思う。一生を通して真っ白でいられる人間はいなくて、他者と関わりながら生きていく以上、傷つけ、傷つけられて黒く染まっていくことを人は避けられない。〈心に蛆が湧いても〉〈醜悪な汚染の一部〉といった生々しい言葉と、〈お日様を浴びた布団〉〈お花を摘んで〉といった無垢な言葉の対比が、この曲の主人公の心の揺れを表しているよう。終盤にかけて、まるで天の迎えがきたかのようにストリングスが美しく鳴り響き、そこに一歩ずつ近づくかのごとく転調が繰り返されたのち、鳥のさえずりとともにピアノの音がプツリと途切れるエンディング。突然の沈黙が曲の余韻を引きずるなかで、主人公がどうか幸せであったようにと祈ってしまう。
■RADWIMPS「賜物」
1年9カ月ぶりの新曲である。それが連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)の主題歌ともなるとどんな曲になるのか期待が高まっていたが、届けられたのは明るくて、軽やかで、悲しいことも辛いこともある人生を謳歌しようと伝えているような、生きる輝きに満ちた楽曲だった。華やかなストリングスやコーラスを加えながら、ブロックごとにまったく景色が変わる、めまぐるしい展開。〈いつか来たる命の終わり〉を悟りながらも、〈せっかくだから 唯一で無二の詰め合わせにして返すとしよう〉と意気込み、〈君と生きよう〉と高らかに歌う。この曲が今の日本の朝を彩っている事実が嬉しいし、底知れぬエネルギーが秘められたような一曲だ。
■back number「ブルーアンバー」
ひとりの少女が亡くなった食品事故を発端に、復讐や親子愛を描くドラマ『あなたを奪ったその日から』(カンテレ/フジテレビ系)の主題歌。「ブルーアンバー」=青い琥珀は紫外線にさらされると青く輝いて見える性質を持つ宝石で、「人は見る角度によってまったく違って見える」というテーマを持つドラマの制作意図を汲み取って完成した曲なのだと窺える。本当は哀しみや怒りに崩れそうでも、気丈に振る舞ってしまうことは誰しもあるだろう。〈人様に見せるものじゃない〉内側に眠る感情を、哀愁的かつ美しいメロディに乗せて、清水依与吏は〈綺麗よ〉と歌う。誰にも言えずに抱かざるを得なかった気持ちがいつか報われるようにと、そんな願いが込められているようである。
■King Gnu「TWILIGHT!!!」
「ねっこ」以来およそ半年ぶりのシングルは、これまでに数々の名曲を生み出してきたシリーズの新作、劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像』の主題歌。曲自体も、過去のリリース作品とはひと味違う浮遊感のあるエレクトロなサウンドに仕上がっており、バンドにとって転換点とも言える作品になりそうだ。タイトルの“TWILIGHT”は、日没後の薄明りや黄昏を意味する言葉。昼と夜が交わる時間であり、古くから他界と現実を繋ぐ時間の境目とも言われていることから、失った人ともう一度巡り会う夢を歌っているのでは、というのがこの楽曲の個人的な解釈である。タイアップに絡めて、『コナン』で使用される扉の開閉音を取り入れて場面の変化を表す演出もユニーク。
■SUPER BEAVER「まなざし」
SUPER BEAVERの新曲は、刑務所や拘置所への差し入れを代行する家族に焦点をあてた映画『金子差入店』の主題歌として書き下ろされたもの。映画のあらすじだけを聞くと攻撃的なロックナンバーも想像してしまいそうだが、楽曲は全体を通して人間味にあふれたあたたかさが感じ取れ、「まなざし」という平仮名のタイトルからも優しさが見えるようだ。歌われているのは、〈騙し絵みたいな今日に/足りていないのは愛だよ〉〈強く優しくなりたい〉というストレートな願いだ。SUPER BEAVERの楽曲は、人と人との繋がりについて歌われていることが多い。バンドは4月1日に結成20周年を迎えたが、それはきっと何年経っても変わらないだろうと、この曲を聴きながら思う。
(文=かなざわまゆ)
