「ろうそくが吹き消せないのは歯のせい?」虫歯がなくても要注意!いま子どもの口に起きている「深刻な問題」
「うちの子、今年も虫歯ゼロだった!」。この季節、お子さんの園や学校で行われた歯科健診の結果を見て、ひと安心…という保護者も多いのではないでしょうか。実際、2025年度には虫歯のある子どもの割合が過去最小を記録しています(※1)。ところが、虫歯の有無だけではわからない「もうひとつの口の問題」が広がっていると専門家は指摘します。
【画像】もしかしてわが子も要注意?「噛む力が弱い子」のサイン
歯科医師「『噛めない』『吹けない』子が増えている」
いま、20~30年前に比べてあごの発達が未熟で「しっかり食べ物が噛めない」「バースデーケーキのろうそくが吹き消せない」といった子どもが増えていると言われています。「口腔機能発達不全症」と呼ばれる病名で、18歳未満のお子さんで生まれつきの障害や病気がないにも関わらず、食べる・話すなどの口の機能が十分に発達していない状態をいいます。
日本歯科医師会が2022年に行った調査でも、10代では53.6%が「柔らかい食べ物が好き」、40.3%が「硬い食べ物を噛みきれないことがある」と回答し、滑舌の悪さや食べこぼしなど半数近くに口腔機能発達不全症の疑いがみられました(※2)。
いったい、子どもたちの口に何が起きているのでしょうか?日々子どもたちを診察している臨床歯科医師の森昭先生に、その原因を聞きました。
「ここ十数年くらいで非常に気になるのは、子どもたちのあごが昔より小さくなってきていることです。たしかに虫歯は減りましたが、歯並びについては、来院するお子さんの半数以上になんらかの問題が見られます。なかでも『過蓋咬合(かがいこうごう)』の子どもたちが増えているんです。
過蓋咬合は不正咬合の一種で『ディープバイト』ともいい、歯を噛み合わせたとき、上の前歯が下の前歯に深くかぶさった状態です。主に下あごの発育が不十分なために起こります」(森先生)
過蓋咬合になるとどんなリスクがあるのでしょうか?森先生によると、子どもの場合「歯並びが悪くなる」「食べ物をしっかり噛めないことによる消化不良」「喉に食べ物を詰まらせる」「口呼吸になり口臭やアレルギー・歯周病を招く」といった問題が予想されるそうです。
アンケートで判明!現代っ子の口が抱えるリスクは想像以上
今回、150人の保護者に「お子さんの様子で気になるもの」を挙げてもらった結果、TOP3は以下のような結果になりました。
1位:口笛が吹けない(※5歳以上で)45% 2位:いびきをかく 40% 3位:遊んでいるとき、口がポカンと開いている 34%4位以下では「口臭が気になる」30%、「食べ物をよく噛まず丸飲みしがち」25%、「固い食材を避ける・嫌がる」25%と続きます。この結果から見ると、各年代で2~4割くらいのお子さんに口腔機能発達不全症の兆候があると言えるのでしょうか?
「あり得ます。むしろ『口がポカンと開いている』などはもっと多く、半数以上ではないかというのが現場の肌感です」(森先生)
そんなにも該当するお子さんが多いのに、「口腔機能発達不全症という病名を知っていますか?」という質問に「知っている」と答えた保護者はわずか13%でした。
「口腔機能発達不全症という病名は2018年から使われ始めたため、親御さんの子ども時代にはなかった概念です。園や学校の集団検診でも、虫歯や反対咬合(いわゆる受け口)などは検診で指摘されますが、過蓋咬合や「噛む力」「飲み込む力」といった機能は最低限の診察となるため、知らない方が多いと思います」(森先生)
赤ちゃんのころから将来の「噛めない」「吹けない」は防げる
赤ちゃんや幼児などこれから口の発達が進む段階で、今後のためにできる対策はあるのでしょうか?
「赤ちゃん時代から口腔機能を育てることはできます。膝の上やベッドにスマホを置いた状態で授乳すると、前かがみになり、赤ちゃんは舌を一生懸命動かさなくてもミルクを飲めてしまいます。身体を起こし、赤ちゃんがしっかりと乳首をくわえて『深飲み』できる姿勢が理想。また、柔らかくて軽く吸うだけでミルクの出てくるようなニプルではなく、固めで、口全体(唇・舌)で押さえないと出てこない形状がベストです」(森先生)
離乳食のあげかたにもコツがあるそうで、「スプーンを赤ちゃんの口の中まで入れるのではなく、手前で止めて待ってみて」と森先生。「赤ちゃんは自分から口と舌を使ってスプーンをくわえようとします。この『寸止め』の繰り返しがいいトレーニングになるんです」。
幼児期に気をつけるべきは、「食事中、足ブラブラ」。一見関係なさそうに思えますが、「実は、口に力を入れてしっかり噛むためには、足の指が開いた状態で足裏が完全に床についていないといけないんですね。ダイニングテーブルで食事をするご家庭では、子どもの成長に合わせてちょうどいい位置に足置き台をセットできるチェアがありますので、ぜひそちらを使ってください」。
小学校以上のお子さんの場合、つい直接注意したくなるものですが、森先生は「あまり頻繁に注意すると、ストレスを感じたり食事を楽しめなくなったりしてしまうかもしれません」と警鐘を鳴らします。
「おすすめは、遊び感覚で口腔機能を鍛えるトレーニング。大きめのボタンに糸を通して、一定時間、ボタンを落とさないように唇でくわえ続けます。ゲームで遊んでいるときに『落としたらゲーム終了ね』と約束してスタートすると、どのお子さんも頑張るそうですよ(笑)」(森先生)
毎年6月4日から10日までは「歯と口の健康週間」です。園や学校の検診で「異常なし」といわれたとしても、もしお子さんに、今回ご紹介したような「固いものを嫌がる」「口がポカンと開いている」「誕生日ケーキのロウソクを吹き消せない」といった様子があったとしたら、思わぬリスクが潜んでいる可能性も。あなたのお子さんは大丈夫ですか?
文:高谷みえこ
(※1)文部科学省『令和7年度学校保健統計調査』(※2)公益社団法人日本歯科医師会「歯科医療に関する一般生活者意識調査」

