ABS秋田放送

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15年前の東日本大震災の影響で福島を離れ、ふるさとの能代市で娘とともに生活することを選んだ女性がいます。

当時生まれて間もなかった二女は15歳。

この春中学校を卒業する節目の年を迎えました。

3日前の卒業式には福島で暮らし続けている夫も駆けつけ、家族4人全員でハレの日を祝いました。

■里帰り出産したわずか1か月後に…

能代市上柳で暮らす佐藤佳代子さん。

長女の花音さんは、今、大学のキャンパスがある神奈川に住んでいます。

二女・綺音さんの中学校の卒業式に合わせて帰省しました。

夫・明良さんは福島で暮らし続けています。

高校まで地元能代で育った佐藤さんは、福島の大学に進んだあと、明良さんと出会い結婚。

花音さんを出産し、地域の祭りなどにも積極的に参加していました。

ずっと続くと思っていた、福島での家族そろっての生活。

震災と原発事故が起きたのは、佐藤さんが二女の綺音さんを能代で里帰り出産したわずか1か月後です。

放射線を恐れながら子育てはできないと、能代で暮らし続けることを決めた佐藤さん。

夫の明良さんは仕事で福島を離れられませんでした。

■“もう1つの故郷”でつないだ聖火

コロナ禍も相まってより一層距離を遠く感じた5年前。

福島をスタートしてつながれてきた東京オリンピックの聖火を、長女の花音さんが能代でつなぎました。

花音さん
「第2の故郷というか、もう1つの故郷の能代への感謝の気持ちを込めて走ることができたので良かったと思います」

佳代子さん
「ちっちゃい時から常に福島の様子を気にしていて、パパも大好きだけど、おばあちゃんも大好きだし、いとこたちも大好きだし、福島で過ごした時のあのあったかい楽しかった思い出がずーっとあって、常に生活の中に、もうなんていうのかな、福島を思いだしながらというか、感じながら生活している感じで」

沿道から目に焼き付けた姉の姿。

綺音さん
「やさしいお姉ちゃん、だと思います」
記者
「お姉ちゃんのどんなところ好きとかある?」
綺音さん
「遊んでくれたり勉強教えてくれたりするところです」

■家族4人で迎えたハレの日

姉が聖火ランナーを務めた年齢と同じ15歳になった綺音さんの、中学校卒業の日。

愛娘のハレの日に合わせて明良さんも福島から駆けつけました。

佳代子さん
「ずっと子どもたちちっちゃいときは、バタバタしていて、あんまりお祝いどころじゃなかったみたいなところがあるので、今年はなんていうかなこう、落ち着いてお祝いできるかなぁっていう卒業式です」

綺音さんは能代南中学校で生徒会長を務めていました。

佐藤さんはPTA会長です。

震災前後に生まれた我が子とともに歩んできた保護者たちの15年を祝辞で伝えました。

PTA会長 佐藤佳代子さん
「震災後の停電や品不足のなか、夜泣きで寝不足だった日々。初めて歩いた日。ランドセルを背負った日。元気のない顔で返ってきた日。15年間。これほどまでに立派に育て上げられ、義務教育修了という大切な節目を迎えられましたこと、心よりおよろこび申し上げます」
「自分のことでは頑張れなくても、皆さんのことでは頑張れます。生まれてきてくれてありがとう。ここまで成長してくれて、ありがとう」
「想像していた人生とは違う道を歩むこともあるかもしれません。私自身、3.11を経て、思い描いていた通りとは違う人生を歩んでいます。しかし それは 決して特別なことではありません。夢や目標、夢や目標はそれを乗り越えてつかむものだからです」

「答辞。卒業生代表、佐藤綺音さん」
「はい」

綺音さんは答辞に、仲間たちと力を合わせて過ごした学校生活、たくさんの学びをもたらしてくれた教職員への感謝。

そして、保護者への率直な思いを盛り込みました。

佐藤綺音さん
「学校や部活動の大会会場へ送迎し、いつでも応援してくれたこと。素直になれず、行き場のない感情をぶつける私たちを。受け止めてくれていたこと。『自分の好きなことをしてもいい』と言いつつも、本当は誰よりも、心配してくれていること。この15年間変わらず愛情を注ぎ続けてくれて、本当にありがとう。これからも私たちの成長を見守っていてください。私たちは、今、始まる未来へと新たな一歩を踏み出します」

佳代子さん
「10年近くは、福島にいたころ、ばかりを思い出して、あのころに戻りたいとか、震災がなかったらなとか、そういうことばっかり思ってたんですけど、やっと、そういうこともいつの間にか思わなくなって、前を向けるようになったかもしれません」

生活を一変させた東日本大震災から15年。

離れて暮らしていても家族がいつも心の拠り所です。

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佐藤さんはこの先の長期的にみた暮らし方はまだ決めていません。

娘たちの成長や進路などに合わせて考えていくことにしています。

それぞれの人たちが、震災で受けた影響と向き合いながら、歩みを進めています。


※配信では映像の一部をカットしています