アニメファンの聖地巡礼は地元に迷惑か? 「いえ、むしろ地元民は歓迎ムード」と佐賀県在住のネット編集者…「ゾンサガ」ファンが地元に受け入れられた納得の理由とは
アニメを地域おこしの起爆剤にしようという運動が、いよいよ日本に定着したという感がある。古くは、「サザエさん」が思い起こされる。サザエさんの舞台が東京・世田谷区の桜新町であるということから、桜新町のあちこちにサザエさんのキャラの像が立ち、波平の1本生えた頭髪が抜かれるといった騒動が起こったりもした。
2000年代に入ると、アニメ「らき☆すた」がヒットし、埼玉県の旧鷺宮町(現在の久喜市)、春日部市、幸手市が舞台となって「聖地巡礼」をする流れもできた。こうした動きについて、アニメに興味が全くない一部の人々からは「キモいアニオタ」的扱いをされることもあるが、実際にその「聖地」に住む人たちの大半は、こうしたファンに対して、概ね好意的である。【取材・文=中川淳一郎】
【写真】「ゾンビランドサガ」のディスプレイが飾られた佐賀県唐津市内の様子
ゾンビランドサガ
というのも、現地を訪れるほど熱心なファンは、人格的にもきちんとした聖地巡礼者が多いのである。実は、筆者は「ゾンビランドサガ」というアニメの舞台である佐賀県在住。
最近も映画「ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス」が公開され、多くのファンが当地を訪れた。

『「ゾンビランドサガ」奇跡の軌跡』(ワニブックスPLUS新書)という本がある。阪南大学教授の大野茂氏による著書だが、このアニメがいかに特徴的であったか、などを記している。「はじめに」では、唐津市の洋館である「唐津市歴史民俗資料館」(旧三菱合資会社唐津支店本館)が物語の主役たるゾンビであるアイドルの住居となった瞬間が記されている。この資料館にとにかく人がやってくるのだ。同書の紹介文は以下の通り。
〈47都道府県の魅力度ランキングで常時最下位争いをしている佐賀県。そんな佐賀のご当地アニメが企画されたのは2014年。一つの県全体を舞台に、しかもその県内だけでストーリーが進むという酔狂なご当地アニメは前例がない。
その上、ゾンビでアイドルという、二律背反にも程がある設定だ。この勝負、どこから見ても、勝ち筋が見えてこない。“ご当地もの”が乱立し、死屍累々となった中から、なぜ『ゾンサガ』だけが全国レベルでの、それも一過性でなく、2025年には劇場版公開に至るという持続可能なコンテンツとなったのか? メディア論の第一人者が徹底した現場取材と関係者のインタビューを踏まえて説く〉
質の高い聖地巡礼者
「ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス」が公開されると、多くのファンに加え、コスプレイヤーが続々と唐津にやってきた。この小さな町になんだか派手な人々が今日は多いな! と仰天し、「一体今日は何の祭りがあるんですか?」とその派手な人に聞いたらこう言われた。
「お騒がせして申し訳ありません。私たちの好きな映画が公開されるので、『聖地巡礼』に来たんです」
こちらは単に「一体この人達は何者なのだ?」ということだけが疑問だったのだが、彼女は丁寧にこう答えた。別に不審者扱いしているワケではない。ただ、「普段の唐津の雰囲気とは違う人がなんでこんなにたくさんいるんだ?」という疑問から聞いたのである。
ご当地アニメをきっかけに、さまざまな町おこしが行われる。ゾンビランドサガ関連のマンホールが佐賀県各所にあるし、物語の主役たるアイドルグループ「フランシュシュ」のビジュアルも各所に展示されている。
アニメの女性キャラは昨今「環境型セクハラ」などと言われることもある。要するに、女性の性を前面に押し出してスケベな男の性欲を満たす画像や映像をそこら中に巻き散らす、ということだ。
だが、すくなくとも「ゾンビランドサガ」について、佐賀県ではそのように問題視はされていない。ファンは非常にマナーを重視しているし、我々地元民に対して配慮をしている。男性女性問わず、関連するビジュアルの前でポーズを取って撮影をする。
その様については「よくぞいらっしゃってくださいました」としか思えない。アニメの「聖地巡礼」は、今後とも各自治体が取り組んでいいのではなかろうか、とゾンビランドサガの成功を見て思うのである。
ネットニュース編集者・中川淳一郎
デイリー新潮編集部
