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 縦型ショートや長尺、1時間を超える超長尺と、動画作りにおいて選択肢がある昨今。作り手である動画クリエイターたちは、企画の内容や目的によって使い分けているわけだが、東海オンエアのメンバー・虫眼鏡が自身の動画でコンテンツの尺に対する葛藤を明かしている。そこで今回は虫眼鏡の発言と視聴者のコメントから、最適な動画の長さについて考えてみたい。

参考:【写真】「丁度良すぎる」「本当に凄い」視聴者から好評だった東海オンエアの短尺動画

 チャンネル登録者数717万人を誇り、幅広い視聴者から支持を集めている東海オンエア(2025年5月23日時点)。流行にとらわれず、独自路線の企画を短尺、長尺問わず次々と打ち出すその企画力は、動画クリエイターのなかでも一目置かれる存在だ。

 そのメンバーのひとりである虫眼鏡が5月19日、個人チャンネルで投稿した動画で、コンテンツの尺について自身の思いを明かしている。きっかけは、視聴者からの「11分の動画が見やすい」というお便りをもらったこと。その送り主は「東海のことが大好き」と公言するファンで、長尺動画も楽しく視聴しているというが、正直なところ「長尺動画はやっぱり途中で集中力が切れちゃっていて、後日2回目を見た時にあれこんなシーンあったっけとなることもある」と打ち明けている。

 そんなファンの声に対し、虫眼鏡は「短い動画には短い動画なりの長所と短所があって、長い動画には長い動画なりの長所と短所がある」と発言。東海オンエアとしては、「長い動画を作る時は最後まで飽きずに見てもらえる工夫を、短い動画を見てもらう時は短い動画でもがっつり印象に残るようなインパクトのある動画を」という理想があると明かしたのだ。

 しかしそういった理想があっても、いろいろ思うところはある模様。「どっちかっていうと、やっぱ短い動画の方が難しいですね」と切り出すと、「相当動画の企画内容とか中身が強くないと許されないなっていう感覚になっちゃってる」「再生回数はなんかあんまりだよね、短い動画って」と、グループのメインチャンネルに4月19日に投稿された「【人生初】ヤブサメ体験会が開催されているのでやってみたぞ!!!」を例に作り手ならではの苦しみを吐露している。

 このカブサメ動画は、疾走する馬に乗って矢を的に射る流鏑馬を、馬の代わりにバイクのスーパーカブを利用して挑戦したもので、動画の長さは11分19秒。YouTubeテレビでみる視聴者が増え、1時間を超える長尺動画が増加しているなか、11分強という長さは短い印象を受けるが、実はこの長さは視聴者には好評。「正直、このぐらいの長さの動画が丁度良すぎる」「こういう10分ぐらいの一発ネタの動画が本当にすき」といったコメントが多数みられるほか、「この時代にこの短さでここまで満足度の高い動画出せるの本当に凄い」という、称賛の声もあがっている。

 実は東海オンエアは、公開した動画の再生数が100万回突破するという記録を更新しつづけているのだが、カブサメ動画は公開から1か月で105万回ほどだったため、グループ内で若干の焦りがあったそう。無事に100万回は突破したものの、こういった結果から「1個強いテーマがないと短い動画怖いな」と、短尺動画の難しさを痛感しているというのだ。

 作り手も視聴者も動画の長さにはそれぞれ意見があることはわかったが、実際のところ、動画の最適な長さはどのくらいなのか。ここでの話はあくまでも東海オンエアのケースではあるが、先の虫眼鏡の動画に書き込まれたコメントから、視聴者側の気持ちをもう少し深堀りしてみたい。

 まず短尺動画については、「10~15分くらいのやつはどれもワハハって笑ってるうちに終わる感じする」「ぎゅっと詰まってる感じがして満足感がある!」といった声があり、短尺動画では満足度が重視されていることが読み取れる。一方の長尺動画については、「30分超えるとゆっくり時間ある時しか見られへんな~」「20分以上の動画は暇な時に見よって思って後回しにしちゃいます」と、優先順位が下がるといった声がちらほらみられるほか、「一気に見るなら15~20分」「20分~1時間くらいになると数日に分けて見てます」と、1本の動画を数日間に分けて視聴するという実態が浮かび上がっている。

 そのほかにも、「ながら見をしてるので、35~40分あるとかなり嬉しい」「20分前後だと朝の時間に見れてラッキー感あります」といった、視聴者の生活習慣が垣間見れるコメントもあるが、とくに印象的だったのは、「20分くらいだと長尺ってなるんだろうけど東海はそのくらいの方が一番強みを出せると思う」というコメントだ。1本の動画にはテーマや再生数、視聴者の満足度、視聴習慣などさまざまな要素が絡み合っているわけだが、視聴者のコメントをみると、適切な動画の長さというのは結局、クリエイターの強みがしっかりと出せているかによって決まるのかもしれない。

(文=せきぐちゆみ)