スバルから登場した2台のパフォーマンスモデル! 誕生の経緯とは? “最新技術”が盛りだくさんの「次世代フラッグシップ」とカスタマイズで“育てる”新提案
“スバルらしいBEV”を自らの手で! 次世代の走りのフラッグシップ「Performance-E」
スバルは世界の自動車メーカーの中ではスモールプレイヤーですが、今後の生き残りのためには数より質…つまりブランドを際立たせることが重要な課題と認識しています。
そんなスバルブランドを分かりやすく体現する2つのキーワードが「パフォーマンス」と「アドベンチャー」であり、それを具体化するのがSTIとウィルダネスです。
【画像】これがスバルの新「パフォーマンスモデル」です! 画像を見る(30枚以上)
今回の「ジャパンモビリティショー2025(JMS 2025)」(一般公開:10月31日〜11月9日)ではその提案が行なわれています。
本記事では、2台のパフォーマンスモデルが登場した経緯を、開発者の証言を元に紐解きたいと思います。

1台目は「Performance-E STI concept」です。
これまでスバルは「電動化が遅い」と言われ続けてきましたが、同社初の量産BEV「ソルテラ」を皮切りに、eアウトバックと呼びたくなる「トレイルシーカー」、そしてコンパクトな「アンチャーテッド」を発表。
どれもトヨタとの共同開発で生まれたモデルですが、開発はトヨタとスバルのエンジニアが半々ずつ集められ、対等な立場で企画段階から一緒に実務を行なっていました。
共同開発と言えば「BRZ」「GR86」が有名ですが、これらのモデルはそれ以上の真の“ワンチーム”で動いていたわけです。
スバルの藤貫哲郎CTOは「今はトヨタさんと一緒にやるメリットが大きいですが、普及期に向けて我々も『よりスバルらしい』BEVを『自らの手』で作り上げる必要があります。世の中は背の高いBEVが主流ですが、我々が挑戦するなら背の低いモデルだと。その提案が今回のモデルというわけです」と語ります。
コンセプトは「Everyday Supercar」で、BEVだからこそ実現できる運動性能と実用性の両立を目指しています。
エクステリアはBRZ並みの低全高パッケージ(空力性能はもちろんエネルギー効率向上効果も)はもちろん、フロントオーバーハングの短さもこれまでのスバルとは大違い。ちなみにこのパッケージで床下にバッテリーを搭載。それを可能にするのが三元系円筒セルだと言います。
現在主流となりつつあるLFPではなく三元系円筒セルを使う理由は、「高出力(瞬間的に大出力を取り出せる)」「長寿命(直接冷却)」「軽量(車両全体で約10%)」のメリットがあるため。要するにパフォーマンス優先での採用というわけです。
駆動方式は当然AWDですが、前後独立したモーターで制御する電動AWDです。スバルはこれまで前後をプロペラシャフトで繋がるメカ式四駆に徹底的にこだわってきましたが、この電動AWDはモーターの高応答・高精度の強みを活かし、それらの知見・ノウハウが色濃くフィードバックされています。
ちなみにスバルはスーパー耐久シリーズST-Qクラスに実験車両「SUBARU High Performance X Future Concept」で参戦していますが、このマシンのAWD制御にはBEVチームが関わっていると言います。
車体側でも新たな挑戦が行なわれています。スバルは「車体は強さだけでなく、いなしも大事」と剛性バランスにこだわっています。その答えが現在採用されているフルインナーフレーム構造SGP(スバルグローバルプラットフォーム)ですが、このモデルはその進化版となる「ダイナミック・スティフネス・コンセプト」を採用。
剛性バランスに加えて、エネルギーの流れ、エネルギーの伝達時間、周波数もコントロールすることで、より優れた体幹を実現。この車体に新設計のサスペンション(フード高低減、キングピンオフセット縮小)を組み合わせることで、より意のまま、より質感の高い走りを可能にするそうです。
また、数値に表れませんがクルマには欠かせない“官能性”に関しても抜かりなしで、車両からのフィードバック(挙動、音、振動)を、五感を刺激する情報として制御するトライも行なわれているそうです。
ちなみに単なるコンセプトだと思っている人もいるようですが、すでに走行可能な試験車が存在し、日夜テストコースを走り回っているとのこと。
開発を担当する技術本部・車両開発統括部の中路智晴担当部長(SDA第1期生、NHK「魔改造の夜」にも登場)は、「まさに『感動の走り』で、スバルが目指す究極の安心と愉しさが提供できると確信しています」と自信を見せます。
スバルが持つ最新テクノロジー全て盛り込んだ次世代の走りのフラッグシップ、個人的には「eWRX」と呼びたいところです。
手に入れた後も楽しめる! “育てるクルマ”を目指した「Performance-B」
2台目は「Performance-B STI concept」です。
現在スバルのフラッグシップは「WRX S4」ですが世代を重ねるごとにサイズ・価格共にアップ。若い人が手に入れづらくなっているのも事実です。社内でも「そんなクルマが欲しいよね」という声が出ても、できない理由ばかりで先に進まず…。
これまでそんなやり取りを何度も見てきた藤貫氏は「やりたいならやればいいじゃないか」と若い人たちの自由な発想で車づくりができる環境を構築。そんなメンバーが現在スバルの持つリソースを上手に組み合わせて開発したモデル、というわけです。

スバルで最もコンパクトな「インプレッサ」系の車体をベースに、現在スバルで最もハイパフォーマンスなFA24ターボ、WRX STI譲りの6速MT&DCCD付センターデフ式AWDをドッキング。ある意味、スバル車の技術的な繋がりをフル活用した究極の流用チューンと言ってもいいかもしれません。
エクステリアは大型インテークのボンネット、専用の前後バンパー、ブリスターフェンダー、大型ウイング、BBS鍛造アルミホイール&ポテンザタイヤ、大容量ブレーキなどの装着により、3代目WRX STIを思わせる武闘派の雰囲気がプンプンします。
一方、インテリアは細部の変更に留まりますが、ブラック&レッドステッチのコーディネイトにレカロシートの装着などによりスポーツイメージをプラス。スバルにかかれば、この辺りの変更はお手の物です。
これを見て、スバリストを中心に「WRX STIが復活!」と喜んでいる人が多いのですが、それは大きな間違い…。
藤貫CTOは「このモデルはメンバーが頑張りすぎてモリモリの仕様になってしまいましたが、基本的な考え方は『引き算のクルマ』です。クルマを売るだけでなく、ユーザーが購入後も楽しめるバリューチェーン全体で収益を出すビジネスモデルの挑戦でもあります」と教えてくれました。
要するにメカニズムなどメーカーでなければ対応できない箇所はスバルが担当、ユーザーはそのクルマをベースに各々のカスタマイズを行なうことで完成する「育てるクルマ」という新たな挑戦なのです。ちなみに今回のモデルはスバル/STIとしてのカスタマイズ/アップデートの提案の1つになります。
中には「今後WRX S4はどうなるの?」と心配する人もいると思いますが、WRX S4はスバルのスポーツAWDのフラッグシップという立ち位置は不変(MT追加はあるかもしれませんが)、Performance-BはスポーツAWDの間口を広げる存在と、役割を明確にすることで選択肢が広がります。
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新たな挑戦となる「Performance-E」と、あったらいいねを具体化した「Performance-B」。
どちらも市販化するつもりで、“本気”で開発を進めているとのことです。

