『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

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 中村悠一と『週刊少年ジャンプ』(集英社)の作品は、もはや切っても切れない関係にある。第十九回 声優アワードにて、1年間で最も活躍した声優に与えられるMVS〈Most Valuable Seiyu〉を2年連続で受賞するなど、高い人気と評価を獲得している中村。そんな中村の出演作を振り返ってみると、『週刊少年ジャンプ』作品が数多く存在する。

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 たとえば、『Dr.STONE』の獅子王司、『僕のヒーローアカデミア』のホークス、『逃げ上手の若君』の諏訪頼重、『ワールドトリガー』の迅悠一といったように、中村が演じる『週刊少年ジャンプ』作品のキャラクターを挙げ始めるとキリがない。

 そして、中村が演じるキャラクターの大半は、高い能力を持つ実力者だったり、仲間をひっぱるリーダーの役割を担っていたりする。『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の比古清十郎も、緋村剣心の師匠であり、作中の“最強キャラ”だ。「最強キャラといえば中村悠一」というイメージを多くの人が持っているのは、これまで中村が演じてきたキャラクターの性質からくるものだといえる。

 『ハイキュー!!』では、黒尾鉄朗役を演じている中村。黒尾は、烏野高校と因縁のライバル関係を持つ音駒高校の主将であり、高い守備力を有するチームを率いる。一方、掴みどころがなく、ふざけたり悪ノリしたりする一面も。中村の飄々とした演技は、ニヤリと笑う黒尾の表情によく合っている。

 お調子者のように見える黒尾だが、合同合宿では月島蛍にブロックのコツを伝授する場面がある。ライバル校同士でも関係なく月島を気にかけ、成長を手助けする黒尾は、理想の先輩といえるだろう。

 また、「俺たちは血液だ。滞り無く流れろ。酸素を回せ。“脳”が正常に働くために」という試合前の黒尾のかけ声は、場の空気を一気に引き締める。中村の声が放つ頼もしさには、仲間の士気を高める力があると言っても過言ではない。黒尾の男子高校生らしい姿と、真剣なシーンのカッコよさから生まれるギャップも魅力的だ。

 中村の代表作となった『呪術廻戦』の五条悟も、頼もしさと飄々とした一面を兼ね備えたキャラクターだ。東京都立呪術高等専門学校にて虎杖悠仁の担任の先生を務める五条は、普段はおちゃらけた振る舞いをよく見せる一方で、自他ともに認める最強の人物として知られる。

 絶体絶命のピンチでも、五条がいればなんとかなる。私たちにそう思わせる圧倒的な信頼と実力が、彼にはある。そして、五条から感じる頼もしさは、中村の余裕たっぷりの演技によって表現されているのだ。中村の演技の悠々とした落ち着きが、“最強”である五条をさらに心強いキャラクターにさせている。

 公開から25日間で興行収入が220億円を突破し、大ヒットを飛ばしている『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』にて、中村は慶蔵役を演じている。慶蔵は、猗窩座の回想シーンに登場するキャラクターであり、猗窩座が鬼になる前、人間である狛治だった頃に世話になった素流道場の道場主だ。

 ずっと看病していた父が死んでしまい、自暴自棄になった狛治を救ったのが、慶蔵だった。慶蔵は、殴りかかってきた狛治をあっという間に素手で返り討ちにする。そして、気絶から起きた狛治に「罪人のお前は先刻ボコボコにしてやっつけたから大丈夫だ!」と笑顔で言い、娘の看病を任せた。

 父の死に絶望し、孤独の身となった狛治を救ってくれたうえに、屈託のない笑顔が印象的な慶蔵は、狛治が慕うのもわかるようないい師匠だ。中村のからっとしたあたたかみを感じる演技も、慶蔵というキャラクターによく合っている。

 『ハイキュー!!』の黒尾のような先輩も、『呪術廻戦』の五条のような先生も、月島や虎杖にとっての“師匠”といえる。狛治の師匠である慶蔵は、これまで中村が数多くの師匠キャラを通して磨き上げた“いい師匠っぷり”が、いかんなく発揮されていた。

 中村の演技は、時に飄々としていて、時に頼もしい。固すぎず、柔らかすぎずの絶妙なバランスが、親しみやすさを生んでいる。また、『週刊少年ジャンプ』作品は、キャラクターが修行やバトルを積み、強くなっていく姿が大きな見どころだ。そのなかで、主人公たちを導く師匠の存在は欠かせない。よき師匠役を数多く演じる中村が『週刊少年ジャンプ』作品に愛されるのは、必然だったのではないだろうか。(文=まわる まがり)