わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告

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「たくさんやりすぎて記憶にない」──診療と偽って女性患者の膣に異物や指を挿入するなどのわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつの罪に問われた横浜市泉区の精神科医、牛見豊被告(63)の初公判が4月24日、横浜地裁で開かれた。牛見被告は、2023年5月に神奈川県警に逮捕された際、冒頭のように供述。県警には、牛見被告による被害申告が相次いだというが、裁判ではその卑劣な犯行の詳細が明かされた。傍聴した男性が話す。

【写真】犯行が行われていた第二診察室。患者の弱みにつけ込んだ犯行の実態とは

「保釈されている牛見被告はネクタイをしたスーツ姿でした。出回っている写真からはあまり変わっていないですが、そこまでやつれたという印象はありませんね。罪を認めて淡々としてはいましたが……。初公判で問われた罪は4件でしたが、今後検察は追起訴を予定しています」

 現在は削除されたHPによると、静岡県出身の牛見被告は浜松医科大学を卒業後、複数の病院勤務を経て2011年に「うしみメンタルクリニック」を開設。アルコール依存症に詳しく、論文などにも携わっていた。昨年5月以降、被告のわいせつ事件が相次いで発覚し神奈川県警に逮捕されていた。

 公判では卑劣な手口の詳細が明かされた。

 2017年6月20日、被告が運営していた「うしみメンタルクリニック」を訪れた患者A子さんは腹痛を訴えていた。すると、被告は「子宮に原因があるかもしれない」「子宮の内診が必要である」と言い奥の“第二診察室”に案内した。

「犯行はすべて第二診察室で行われています。ベッドが置かれた部屋は、女性患者にとっては恐怖の部屋となっていました。牛見被告は、診察室のベッドにA子さんを仰向けに寝させて、腹部を診察しました。そして『内診をするので下着を脱いでください』などと言ってズボンと下着を脱がせ、『膣の中を見る内視鏡みたいなものです』と言って、膣内に堅い棒状のものを挿入。

 さらに、『器具を入れて問題なかったので、指を入れて中を確認します』など言って指を挿入しました。クリニックを訪れる患者さんの中には正常な判断をできなくなっているケースも多く、そういった弱みにつけ込んだ犯行ともいえます」(社会部記者)

 検察側の冒頭陳述によると、牛見被告は、A子さんにしたことと同様のわいせつ行為をクリニックに来院した女性患者に繰り返していたという。通常、精神科で膣内の診察が必要になるケースはないが、牛見被告がわいせつ行為をするために利用していたキーワードが“漢方薬の処方“だ。

 2022年2月18日、50代の患者B子さんの診察をした際、牛見被告は漢方薬の処方を勧めている。

「大量摂取の危険性が指摘される向精神薬に代わって、漢方薬を使用する精神科医は増えていて、このこと自体におかしなことはありません。しかし牛見被告は漢方薬を処方するために、『腹部や粘膜の診察が必要である』などと言い診察室へB子さんを連れて行きました。もちろんそのような診察は必要ありません。B子さんはこの日初めて被告のクリニックを訪れた患者でした」(同)

 牛見被告は、診察室のベッドで仰向けになったB子さんの腹部を診察した後、ズボンと下着を脱がせた上、その膣内に指を挿入した。同様に同年3月25日にはC子さんに、4月21日にはD子さんに対して「漢方薬を処方するため」と言いながら、膣に清浄綿のようなものや指を挿入しようとしたり、実際に挿入していた。

 不快な思いをしながら、治療のためだと我慢していた女性も多かっただろう。しかし何人かの被害者が声をあげることで犯行が明るみになっていった。

「被害女性はそれぞれ、県の窓口や、別のクリニック、漢方メーカーなどに相談しました。どこに相談しても、そのような治療は『おかしい』となります。そして次々に県警に情報が集まり牛見被告の逮捕にいたりました。事件化したのは一部の犯行で本人は『多すぎて覚えていない』と供述するほど犯行は常態化していたとみられます」(同)

 牛見被告は初公判で罪を認めた。しかし、「だいぶ前のことで記憶が定かではないが」と前置きした上で「(膣内に挿入したのは)金属棒ではない」「衛生綿ではない」などと言ってのけたという。

「細かい部分にこだわり、謝罪の言葉はありませんでした。反省しているようにはとても思えませんでした」(傍聴した男性)

 トンデモ精神科医は今後の裁判でどのような発言をするのか。