早くも抜群のポテンシャルを見せつけている名願。写真:垣内一之

写真拡大 (全2枚)

 来るべき2023年シーズン、リーグを盛り上げるのはいったい誰か。新たなスターは生まれるのか、未来を切り拓くニューヒーローは出現するのか。番記者推奨のブレイク候補、今回は川崎フロンターレのMF名願斗哉だ。

――◆――◆――

「クライフみたいだよ」

 長年、強化の最高責任者を務め、現在はエグゼクティブアドバイザーとしてチームを支える庄子春男氏は、履正社高から加入1年目のMF名願斗哉について、往年の名プレーヤーを引き合いに出し、そう評した。

 背筋をピンと張り、頭を上げながら自由にボールを扱うそのエレガントな姿は、相手のタックルを柔軟なボールタッチとフェイントで飛び越えたプレースタイルで「空飛ぶオランダ人」と言われたヨハン・クライフをも彷彿とさせる。

 沖縄で合宿を行なっていたチームは1月31日、今季初公開となる対外試合で名古屋と対戦(45分×3本)。プロ選手としてベールを脱いだ名願は、そこでさっそく実力の片鱗を見せつけた。
 
 2本目の17分から約73分間、4−3−3の左FWでプレー。「自分の中でもっとできるという自信があった。積極的に仕掛けていこうと思いながらやっていました」と振り返った通り、得意のドリブルで何度も好機を演出した。

 圧巻は2本目の31分のプレー。名願は激しいチャージで名古屋の森下龍矢からボールを奪うと、そのまま左サイドで起点を作った。細い身体からは想像さえつかない強さ。高校時代から体幹トレーニングをチームほか、自分自身でも意識的に行なっていたという。

「高校生とは強度がぜんぜん違う」と、まだプロのスピードにアジャストしている段階とはいえ、わずか3週間で今後の可能性も十分に感じさせるプレーの数々。“ポスト三笘薫”と言われているだけあって、その実力は伊達ではなかった。

 そんな名願のプレーには、先輩たちも驚きを隠せないようだ。1本目でプレーを終え、残りのゲームをスタンドから観戦した脇坂泰斗や山根視来ら主軸は、一堂に「ボールを取られないよな」と声をそろえた。

【布陣図】2023年シーズン J1全18クラブのポジション別最新序列
 
 守田英正、田中碧、三笘ら今や日本代表の主軸を担う選手たちを指導した鬼木達監督も、名願に大きな期待を寄せる一人だ。「ドリブルだけではなくて、その状況に応じた判断を的確にしようとしている」と、その高い技術はもちろん、「あとは貪欲ですね、サッカーに対してとか、ゴールに対して」と、サッカーに向き合う姿勢を高く評価している。

 とはいえ、名願の魅力はなんと言っても、ドリブルだろう。自身も「相手によってドリブルを変えたりできるんで、自分が抜けきるなと思ったら綺麗にかわすし、多少タックルを受けながらでも抜ける感じの相手だなと思ったら、強引にでも行ったりするというのは、自分の中で変えたりはしています」と、絶対の自信を持つ。
 
 名古屋との練習試合を終えた名願は「抜けるのは抜けるし、ゴールのチャンスまでは行けるんですけど、やっぱりフィニッシュのところがまだまだ精度が低いなと感じているので、そこはまた練習から修正していきたいなと思っています」と冷静に自己分析した。

 ガンバユース昇格がかなわず、中学生ながら早くも挫折を味わった名願だが、日本サッカー界の将来を背負って立つ逸材であることは間違いない。末恐ろしい18歳。もしかしたら今季のJリーグで、名願(みょうがん)の名前が国内中にとどろくかもしれない。それぐらいのポテンシャルを持っている。

取材・文●垣内一之(スポーツニッポン新聞社)