「監督の指示があったからこそのゴール」 広島MF野津田岳人が激白、6月のJ1ベストゴール“左足スーパーミドル弾”の真相
【インタビュー】野津田が決めた左足の豪快ミドル後、監督からはまさかの小言!?
Jリーグでは各月のリーグ戦において最も優れたゴールを選定している。
6月のJ1月間ベストゴールはサンフレッチェ広島のMF野津田岳人が6月18日のセレッソ大阪戦で決めた豪快なミドルシュートに決まった。今シーズン、下部組織時代から育った広島に戻り、多くの試合に出場して存在感を示している野津田が、試合終盤からの大逆転劇にもつながった一撃にまつわる秘話を明かしてくれた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部)
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――まずは6月の月間ベストゴール受賞おめでとうございます。
「ありがとうございます。率直にうれしいですし、自分がまさか、このような賞を取れるとは思っていなかったので、すごくビックリしています。ありがとうございます」
――これまでにこういう個人賞を受賞した経験は?
「ほぼないですね。多分、初めてだと思うので、すごくうれしいですし、新鮮な感じで驚いています(笑)。もっと獲りたいという欲が出たというよりは、もうないと思うので、噛みしめたいと思います(笑)。でも、これから先も点は取りたいなと思いますし、ミドルでゴールを取って、こういう賞を取れたことは、自分もすごく嬉しく思います」
――あのミドルシュートが、決まった瞬間はどのような感情でしたか?
「負けていた状態だったので、嬉しさもあったのですが、『早くもう1点取りにいかないと』という感じが強かったです。ただ、『だいぶ良いシュートが決まったな』とは一瞬、思いました(笑)。『チームを助けられる同点ゴールを決められてよかった』というのがありましたが、次にもう1点決めないという思いが強かったですね」
――左足のミドルシュートというのは、ほかのゴールと比べても格別なものですか?
「そうですね。ああいうミドルシュートが自分の武器だと思っていましたし、自分の長所だとも思っていました。でも、なかなか最近は決められていなかったので、すごく久しぶりに決まった感じがして、嬉しかったです。こういうシーンを、もっと出していきたいなと思います」
「今はプロ1年目、2年目の時ほど、『結果、結果』というこだわりはない」
――ひとつ前の名古屋グランパス戦でも、直接フリーキックのゴールもありました。
「そうですね。7年ぶりに広島で決めたゴールでした。あれで、スッキリして力が抜けた感じはあります。久しぶりのゴールは、エディオンスタジアムで取りたかったですし、そのゴールをサポーターの皆さんの近くで決められたことは、嬉しかったです。あのゴールを決めることができたから、C大阪戦でのゴールの時も『決められるんじゃないか』という自信が出て、自然とちょっと前にポジションをとることができました。シュートも、割と力を抜いて打てましたし、あの1点で乗れたし、力みがなくなったと思います」
――今回、記録を見返して驚いたのですが、これまでの1シーズンあたりのキャリアハイが4得点でした。野津田選手の特徴を考えても、もっと取れていてもいいのかなと感じたのですが、ご自身は、どのように感じていましたか?
「やっぱり少ないなと思います。もっと取れるチャンスが今まであったので、もっと取らないといけないとすごく感じています。ただ、今はプロ1年目、2年目の時ほど、『結果、結果』というこだわりはないですね。当時は、そういう思いもプレーに出ていてシュート、シュートという感じになっていたので、そこは考え方も変わったかなと思います」
――6月の月間ベストゴールに選ばれたC大阪戦のゴールを、細かく振り返っていただけたらと思います。ボールが来る前には、どのようにピッチ上の状況を見ていましたか?
「藤井(智也)選手がサイドにボールを運んだ時に、相手のラインがすごく下がって、クロスを警戒している布陣をとってきていました。この試合では、サイドからの攻撃で何回もクロスを上げていてクロスを何度も跳ね返されていたのですが、その分、相手もクロスを警戒してラインが下がっていたんです。自分の前のスペース、相手のボランチの前のスペースが、この時はすごく空いていたので、『そこのスペースに入っていけばシュートを打てるな』という感覚がありました」
――この時は、藤井選手からクロスが入らずに、MF満田誠選手にパスがつながれています。
「マコにボールが入った時、相手のボランチが釣られて、ボールにアタックしに行きました。それによって、さらに自分の前のスペースが空いたので、そこで内側に入っていき、この時には『ミドルシュートを打とう』と思って準備をしていました。いつもはアンカーであまり前にというか、攻撃に入りすぎないことを意識しているのですが、負けていて前にスペースがめちゃくちゃあったので、この時は『ここでもらって、打とう』と考えていました」
――C大阪の守備は非常に整備されていたと思います。野津田選手の前にも相手選手が多くいたと思うのですが、シュートコースは見えていたのでしょうか?
「シュートコースは、そこまで意識していませんでした。とにかく自分の力をボールに乗せて、枠に飛ばすこと。トラップをしてから、早く蹴ることを意識していました。やっぱりあれだけスムーズにシュートを打つことができれば、割と良いコースに飛んでくれる感覚があったので、それは打つまでの過程がよかったのかなと思います」
「蹴ることはもちろん、蹴ることができる場所にしっかりボールを置くことが大事」
――アンカーというポジションだからこそ、上がってきた野津田選手を相手も捕まえきれなかったかと思うのですが、チームの攻撃のオプションになるなという感触はありますか?
「あの試合は相手も本当にクロスを警戒して、がっつりと引いていたので、そういう戦い方をしてきた相手には、チャンスだなと感じました。アンカーから上がった時は、打てるタイミングが一つ前でプレーする時よりもあると思うので、そこはこれからも狙いたいですね。逆にそれを警戒してくれたら、自分のところから空いている選手に展開することもできると思うので、うまく使い分けができたらいいなと思います。まずは自分のポジションでしっかり攻撃を回すことを意識したなかで、チャンスがあれば狙っていくような感じです」
――ボールがよく集まるアンカーは、ボールタッチのフィーリングというのも掴みやすいでしょうか?
「そうですね。最初にやった柏レイソル戦の時は、景色も全然違って、味方との距離感も違ったので、周りからは『フリーでシュートが打てる』ように見えていても、自分のなかでは違ったので、難しさは感じていたんです。でも、徐々に慣れてきて、こっちはこっちで楽しいな、やりやすいなという感覚が出てきているので、(ダブルボランチと)どちらで出ても、できるという感覚があります」
――シュートは、相手GKから逃げていくようなライナー性の強烈なものになりました。
「最近は、縦回転で上から落とすシュートをずっと狙っていて、そういう蹴り方をしていたんです。でも、この時はハーフタイムに監督から『ミドルシュートは抑えて低く打て』という指示があったので、それを意識して縦回転で落とすことよりも、低く強く当てにいくように意識して、蹴り方を変えていたんです。結局、ボールは浮いてしまって、試合後に監督からは『ミドルシュートは低くグラウンダーで打てと言ったのに、ガクトは無視して浮き球で打った』と、ちょっと怒られたのですが、監督の指示があったからこそのゴールだったことは、言わせてください(笑)」
――その場で監督に説明しなかったのですか?
「みんなの前で言われたので、笑うしかなかったですね(笑)。でも、自分のなかでは『抑えて打とうとしたんだよ』という気持ちがありました(笑)。あのアドバイスがなかったら、名古屋戦で決めたような、上から落とすボールを打っていたと思うんです。そうしたら、もしかしたら入っていなかったかもしれません。たしかに、グラウンダーを打とうという意識はなかったかもしれませんが、ふかさないように、足にしっかり乗せて、強く打つということがイメージ通りにできて、結果的に良いコースに行きました」
――今季初ゴールの名古屋戦のゴールは5月に決めたものでしたが、個人的にはどちらのゴールが、より印象に強く残っていますか?
「うーーーん。どっちもですね。自分のなかでは、まったく違う感覚のゴールなんです。今回のミドルシュートは、なかなか最近、ああいう形で綺麗に決まることがなかったので、それを出せたということで嬉しかったです。名古屋戦のFKも、近年、自分が磨いてきたものをサポーターの目の前で出せたということで、嬉しさがありました。両方ともに見せたいゴールだったので、どっちかを選ぶのは難しいですね(笑)。両方とも、嬉しいです」
――左足のキックのコツ、ミドルシュートを決めるためのポイントとして、サッカーをやっている子供たちにアドバイスできることはありますか?
「練習からシュートを打って、キックの当て感をつかむことも大事なのですが、まずはしっかり蹴れるところにボールを置くことが大事です。蹴ることも大事なのですが、蹴ることができる場所にしっかり置くことが大事です。あとキックは、この形で踏み込んでボールを当てられたら飛ぶという感触のイメージを作ること。人は、それぞれ体格も違うので、キックの蹴り方やどこにボールを置けば蹴りやすいかも、変わってくると思うんです。練習でそのイメージをすり合わせて『ここに軸足を置いて踏み込んで、ここにボールを当てれば一番いい』という場所を探して、それを練習して試合に使えるようにすることが大事だと思います」
「自分がゴールを挙げることよりも、まずは与えられている役割を全うする」
――実際にC大阪戦でのゴールも、満田選手からパスを受けて、スムーズにシュートまで行けました。
「僕、結構、シュートを打つ前のトラップが下手なので。今まで練習では決められた場面でも、試合になるとトラップの置きどころが悪くて、ダフったりすることが多かったんです。でも、この時はうまく決まったので、自分の得意とする形でシュートを打つことができました。本当に、『蹴る前の準備が一番大事なのかな』と、改めて感じますね」
――キャリアハイがシーズン4ゴールにとどまった理由、分かっているじゃないですか(笑)。
「そうなんですよ(笑)。そうなんですけど、いざ、試合になると意識しすぎてトラップがズレてしまって、シュートの時に変なところに当たってダフッたり、浮いてしまったりするんですよね。本当にトラップは大事だなと、今、自分にも言い聞かせながら話していました(笑)」
――少し昔話になりますが、試合終盤まで負けていて、そこから逆転した試合といえば、ルーキーシーズンの2013年、野津田選手が途中出場から2得点を挙げた清水エスパルス戦(3-1)があったと思いますが、あの時のことがフラッシュバックしたりはしましたか?
「ちょっとフラッシュバックしました。蹴る前に、割と同じ形だったので、『決められる!』っていう感触が確かにありました。決めた後も、『ああ、この形だ』と、あの時のことと重なる感触を感じていて、鳥肌が立ちました。ただ、もう1点取らないといけなかったので、そこは切り替えたんですけれどね」
――このゴールでキャリアハイの4得点には、あと2点となりました。更新したいという思いはいかがですか?
「もちろんあります。点を決めることも、やっぱり求められていると思うので、そこは決められたらいいと思いますし、チームを救うゴールを決められたらいいなと思います。ただ、自分がゴールを挙げることよりも、まずは与えられている役割を全うすること。そこを第一優先で全うしたい。そのなかで、こうやって相手を押し込めれば、ミドルを打てるチャンスはあると思うので、そこはどんどん決めていきたいです。FKも良いポジションで蹴ることができれば、決めて勝利に貢献したいですね」
――昨シーズンは、ヴァンフォーレ甲府でプレーして、今シーズン広島に復帰しました。甲府では過去最多の41試合に出ていますが、どんな経験になりましたか?
「すごく自分にとって大きな1年でした。あれだけ試合に出ることが、今までプロになってからのキャリアで初めてです。1試合を除いて、全ての試合に出られたので、試合勘をすごく得ることができました。とにかく、たくさんの試合を積んで、試合勘をはじめ、いろいろなものを得られた感覚があった1年になりました。『自分もこれだけできる』という自信が付きましたし、ボランチとして1年間、戦うことができた経験も大きかったですね。これだけボランチで1年間、出続けたことがなかったので、41試合出場を続けて、ボランチでのやり方、守備の部分、いろいろなものが見えました。その経験は、今季にもつながっていますし、とにかく甲府に感謝しています。伊藤彰監督にも、とてもいろいろなことを指導してもらったので、その経験が生きていますし、ただただ感謝しかありません」
「広島の環境は、とにかくサッカーに集中できていい」
――複数のクラブへのレンタル移籍も経験しましたが、その経験によって、改めて感じている広島の良さというのはありますか?
「街であったり、チームの環境であったりも良いですし、グラウンドやクラブハウスの雰囲気がいいなと思います。練習グラウンドまでは(広島市内から)距離があるのですが、それを含めて、広島の環境は、とにかくサッカーに集中できていいなと思います。山に囲まれていて、周りに何もないぶん、集中してサッカーに打ち込めます。選手たちが練習になった時にスイッチが入り、厳しい雰囲気で強度の高い練習ができることは、他のクラブに行ったときも『広島はすごいな』と感じたことでもありました。練習からのレベルの高さは、非常に高いのではないかと思います。チームの色っていうのが、各チームにあると思うのですが、長い間、離れていて、戻ってきた時に、改めて『広島は練習から強度の高いチームだな』と感じました。在籍したほかのチームに、そういう雰囲気がなかったわけではなくて、広島がまた特別な感じなんです」
――その広島を巣立っていった森保一監督や野津田選手と同い年の浅野拓磨選手は、日本代表として戦っています。彼らから受ける刺激もありますでしょうか?
「もちろん、あります。やっぱりずっと一緒にやってきた選手ですし、拓磨は同期で今も代表や海外でプレーしていますし、一つ下の(川辺)駿も活躍して、海外で試合に出て活躍していますし、森保監督も代表監督になっていて、本当に刺激しかありません。そこに近づけるように、ずっと彼らのことを意識しながらコツコツ頑張ってきています。そこは常に、意識していますし、させてくれる人たちなので、感謝もしています」
――海外に飛び出していき、活躍している選手もいる一方、青山敏弘選手のように広島にとどまっている選手も見ていると思います。今、28歳で、今後のキャリアはどうしていきたいというふうに感じていますか?
「やっぱり、若い時は『将来的に海外でやりたいな』という気持ちはあったのですが、なかなか広島で安定して活躍できませんでした。レンタル先に出て戻ってきても、活躍できずに、また外に出るということを繰り返してきたので、やっぱり広島で活躍すること、広島で絶対的な存在になることが、今は一番の目標です。今シーズンは、こうして戻ってきて、多くの試合に出場できていることに、すごく喜びも感じていますし、まずはここでチームを引っ張れるような存在にもっともっとなっていき、広島のためにプレーできる存在になりたいですね。今は本当に、広島のために、広島で活躍することで頭がいっぱいです」
――冒頭に「こういうゴールはもうないと思うので、噛みしめたい」という話もありましたが、ぜひ、5月、6月のゴールを上回る「これぞ野津田のベストゴール!」という得点も期待しています。
「そうですね。今回のミドルシュートも、自分らしいシュートだと思うのですが、上から落とすミドルシュートを決めたいと思っているので、それも決められるようになりたいです。チームが苦しんでいる時にミドルシュート一発というのがあれば、チームとしても楽になると思いますし、自分としてもそれが持ち味だと思うので、そこは決められるような選手になりたいと思いますし、狙っていきたいです。今度は練習からしっかりその形でシュートを決めて、監督に『あのシュートを打て』と言われるように準備します(笑)」
――ちなみに賞金20万円の使い道は、決めていますか?
「出るんですか!? それ、初めて知りました! 2年ぶりに広島に戻って来たのですが、子供ができて行くところが限られているので、あまり出かけることが少ないんですよ。それでも宮島には、もう4回くらい泊まりに行っているので、また宮島で良い旅館に泊まろうかな。でも、子供の服も買いたいと思っていたので、子供の服を買おうかな。考えるだけで、楽しいですね(笑)。ちょっと今から、楽しみながら考えたいと思います(笑)」(FOOTBALL ZONE編集部)
