■年収400万円男性を、女性は相手にするか

石橋翔一さん(仮名)は32歳の独身で、中堅メーカーに勤める会社員だ。東京の多摩地区でアパートを借りて一人暮らしをし、都心にある本社に通勤している。会社での肩書は営業部主任。現在の年収は400万円だが、生活が安定してきたので、「そろそろ結婚したい」と真剣に考え始めた。

当然、結婚に伴う費用が必要になる。ところが、石橋さんはお金があれば景気よく使ってしまうタイプで、蓄えが少ないのがネック。社交的な性格で、同僚や取引先、友人と飲み会や遊びに行くのが大好きなせいか、交際費がやたらとかかる。トレンド情報の収集にも余念がなく、スマートフォンなどの通信費もばかにならない。

そこで、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに相談したところ、「年収400万円の平均的な30代独身の男性の家計はこのようになっていて、本来なら結婚に踏み切れるはずです」といわれ、提示されたのが表だ。それを見た石橋さんも、「この範囲なら自分も出費を改善できて、結婚式の費用を貯められる。そして結婚生活に入っても、十分にやりくりしていけそう」といいつつ、女性に相手にしてもらえそうなことに顔をほころばせた。

若い男性で、食費が3万5000円、被服費が1万円というのは、少ない気もするが、畠中さんはこういい切る。

「いまの30代は長期不況下で育ったせいか、将来を楽観視しないタイプが多くて暮らしぶりも堅実。食事は自炊がメイン、ファッションもブランド物にはあまり関心がありません。バブルの頃の30代に比べて、生活費がそれほどかからなくて済む。石橋さんも背伸びせず、それに合わせたらいいのです」

■交際費や通信費は予算内にとどめる

一方、通信費は1万円、小遣いを含めた教養娯楽費は3万円と、予算を多めに配分しているのはなぜか?

ファイナンシャルプランナー 畠中雅子氏

「いまの若い人にとって、スマホやSNSといったコミュニケーションツールは、付き合いに欠かせません。それに、若いうちは人脈や経験の幅を広げるため、趣味や娯楽にも、積極的に自己投資をしたほうがいいでしょう。とはいえ石橋さんのように、交際費や通信費に“予算感なく”使ってしまうのは問題。予算を決めて、出費はその範囲内にとどめましょう」(畠中さん)

ところで、お金を貯めるのが苦手な石橋さんは、「結婚したら妻に家計をしっかり管理してもらいたい」と考えている。そこで畠中さんに、それにふさわしい結婚相手かどうかを見極めるポイントも教えてもらった。

「デート代をある程度分担してくれたり、プレゼントのお返しをくれたりするようなら、その彼女は合格ですね。正常な金銭感覚の持ち主でしょう。それから、彼女の服も要チェック。たとえば、同じセパレートをうまく着回しして、何度も着ているようなら、家計のやりくりもうまいはずです。逆に、着回しの利かないワンピースが好きで、デートのたびに新調しているようなら、金遣いが荒いと見ていいでしょう」

結婚したいと思うのなら、「善は急げ」と畠中さんは助言する。石橋さんのように30代前半で結婚すれば、「マイホームの住宅ローンや子どもの教育費の支払いを、定年までに完了しやすいからです」(同)。結婚後の家計で大きな負担となる教育費については、「高校の授業料の実質無料化が進み、必要なのは大学進学に備えた学資。お子さんの中学卒業まで支給される児童手当に手を付けなければ、約200万円は貯まるでしょう」と畠中さんはいう。

あとは石橋さんが「子どもが大学を卒業するまで」と奥さんを説得して、パート勤めに出てもらい収入を増やすのと同時に、夫婦の小遣いを「月給の10%まで」にセーブすればいい。

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畠中雅子(はたなか・まさこ)
ファイナンシャルプランナー
FP技能士1級。「働けない子どものお金を考える会」を主宰。『貯金1000万円以下でも老後は暮らせる!』『どっちがお得? 定年後のお金』など著書多数。

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(ジャーナリスト 野澤 正毅 撮影=遠藤素子)