■瀕死状態のアパレルを救う起死回生策

ここ数年、アパレル不況を憂う報道が相次いでいる。

ディマンドワークス代表 齊藤孝浩氏

「業界が生き抜くには、スマホの普及や通信速度の高速化など、技術革新の恩恵を享受するのは企業ではなく、消費者であることを自覚しなくてはいけません。そのうえで、消費者にとってのメリットを最優先して模索することが、活路となるはずです」

齊藤孝浩氏は欧州ブランドの日本法人やアパレル専門チェーンなどに勤めたあと、在庫最適化や人材育成を支援するコンサルタントとしての活動を開始。2014年には、不況のなかで売り上げを伸ばし続けている2社の強さを徹底分析した『ユニクロZARA』を上梓し、話題となった。

「日本のファッション市場では、流通革新が10年周期で起こってきました。90年代後半には、ユニクロのフリースブームに代表される低価格品の品質向上が、00年代後半にはH&Mの日本上陸をはじめとした『ファストファッション』ブームが起こりました。その結果、単価の安い服がクローゼットにあふれかえるようになったのです」

業界の過去の話を書いた『ユニクロZARA』に対して、『アパレル・サバイバル』では未来を提示したと、齊藤氏は話す。

「次の10年には何が起こるのか。そこで私が分析し始めたのが、欧米の流行でした。というのも、過去のブームは、日本固有のものではなく海外から流入したもの。特に日本は、欧米の流行に追随する傾向が強かったからです」

■日本は欧米の流行に追随する傾向が強かった

齊藤孝浩『アパレル・サバイバル』(日本経済新聞出版社)

齊藤氏が海外での流通の変化の兆候を感じ取るために注目するのがイギリスのロンドンだ。そこでは、H&Mをしのぐ低価格商品を提供するチェーンストア企業・プライマークが台頭し、オンラインからも既存のアパレルチェーンをおびやかす競合たちが拡大中という。これらの新勢力が、いずれ日本や中国などアジア市場を侵食する可能性も否定できない。

では、冒頭で指摘したテクノロジーの進化と、アパレル業界の次のブームはどのように関連するのか。

「オンラインショッピングが進化し利便性が高まる一方で、消費者を悩ませているのが手持ちの服との組み合わせ方です。店舗で店員に直接相談できない消費者に向けて、オンラインでのコーディネートの提案を充実させることが、販促につながります。売りっぱなしではなく、消費者に優しい取り組みを考えること。これが各企業の課題なのです。起死回生をはかれる要素はほかにもまだある。だからタイトルに『サバイバル』という言葉を入れたのです」

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齊藤孝浩
ディマンドワークス代表
ファッション流通コンサルタント。店頭在庫最適化をはじめ、グローバルチェーンに詳しい専門家として活躍。

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(ライター 吉田 彩乃 撮影=岡村隆広)