世の中には、なぜか“女に嫌われる女”というものが存在する。

女がその女の本性に気づいても、男は決して気づかない。それどころか男ウケは抜群に良かったりするのだ。

そんな、女に嫌われる女―。
あなたの周りにもいないだろうか?

明治大学卒業後、丸の内にある証券会社に勤務する高橋太郎(28)は、ただいま絶賛婚活中。

さまざまな女性と出会う中で、太郎は女友だちから「見る目がない」と散々ダメ出しを受ける。

これまでに、SNSにすっぴんを投稿する女や、好きな店を聞かれたときに敢えて安い店を言う女、またタクシー代を3人の男からもらう清楚系美女なのに腹黒い女がいた。

そして今宵、太郎が出会った女とは・・・?




-真美、今何やってる?友達と飲んでいるんだけど、良ければ来ない?


土曜の22時。

男友達と恵比寿で飲んでいた太郎は、真美に連絡をしてみる。

真美はよく遊ぶメンバーのうちの一人だが、仲間内から“パーティーガール”と呼ばれているほど。土曜のこの時間ならば、絶対どこかで飲んでいるはずだ。

そんな太郎の推測は正しく、真美からはすぐに返信がきた。

-行く! あと1時間くらいで行けるけど、今一緒にいる女友達も連れて行っていい?可愛い子だよ♡


可愛い友達を連れてきてくれるなんて、願ったり叶ったりである。

“もちろん!”と返事を打ち、太郎たちは二人で飲みながら女性陣をつ。

先に言っておくが、一緒にいた男友達・優吾には婚約者がおり、真美もその相手を知っている。今日は食事会でもないし、真美はただの女友達だ。

しかし真美が連れてきた麻里子は、思わず“女”を意識せざるをえないような子だったのだ。


男に思わず“女”を意識させる女とは?


「ごめんね〜お待たせ!」

そう言って『Pitfall』に登場した真美は、今日も相変わらず華やかだった。到着早々“私はシャンパン、グラスで!”とオーダーし、一気に場が明るくなる。

「あ、こちら麻里子ちゃん。この前女子会で会ったばかりなんだけど、美味しいお店が好きみたいで。今日、たまたま予約が取れたお店があったから、一緒に行ってきたんだ〜」

真美から紹介された麻里子は、笑顔で“どもうも、初めまして”と挨拶をする。そのちょっと控え目な感じが麗しく、太郎も優吾も思わず背筋を伸ばした。

「二人は、もう結構飲んでるの?」
「ほどほどに。ちょっとだけ、酔っ払ってます♡」

麻里子の口調はゆっくりしており、それもまた色っぽさを醸し出している。

「太郎さん…ですよね?真美さんから、噂には聞いていたんです〜!お会いできて嬉しいですし、想像より、はるかにカッコイイんですね♡」

真美がどんな話をしていたのか知らないが、カッコイイと到着早々に褒められ、太郎は嬉しくなって深めに腰掛けていたソファーから思わず身を乗り出した。




「そう言えば、太郎ちゃんは彼女できたの?」

酔っ払っている真美が、無遠慮に太郎に質問を投げかけてくる。

-できていたら、土曜のこの時間に男二人でいないだろう!

そう思いながらも真美にも彼氏がいないことは知っているので、麻里子に話を振る。

「麻里子ちゃんは、今彼氏いるの?」

「いえ、それが今いないんです・・・先日別れたばかりで」

-お、いないのか。意外だな。

綺麗な女性を見ると咄嗟に有り無し判断してしまうのは、本能的に仕方のないこと。

目の前に座る麻里子に彼氏がいないと聞いて、少しばかりテンションが上がっている自分に気がつく。

「ちょっと、太郎ちゃん。顔、ニヤけてるよ。それより優吾は?フィアンセとは仲良くやってる?」

真美の鋭い指摘に、太郎は慌てて顔を戻す。

「あぁ、お陰様でなんとか」

そう、優吾が答えた時だった。麻里子が、意外な反応を見せてきたのだ。

「えぇ〜優吾さん、婚約者がいらっしゃるんですか?それは残念・・・でもそうですよね、こんな素敵な方には、誰かいらっしゃいますよね」

-あれ?麻里子は、優吾に一目惚れでもしたのか?

麻里子の反応を見て、太郎は思わず勘ぐる。

イケメンだし、爽やかだし、背も高い。女性陣が優吾に靡くのを何度も見てきたが、彼はもう成約済みだ。

しかもさっきから、麻里子はソファーに浅く腰掛けつつ、体を思いっきり“くの字”にして優吾の方を向いている。

男だったら胸の鼓動が高鳴ること間違いないくらい、距離も無駄に近い。

「ねぇねぇ、麻里子ちゃんって、優吾に気でもあるのかな?」

そっと真美に聞くと、驚いたような顔で否定してきた。

「麻里子には彼氏がいるから、それはないと思うよ」


一生消せぬ女の願望?麻里子が嘘を言った理由とは


彼氏がいるのに、「彼氏がいない」という女の心に潜む欲望


「え?麻里子ちゃんに!?」

この嘘をつくのが、食事会ならば理解できる。

時に恋人がいても“いません”と言った方が、角が立たない場合もあるのかもしれない。しかし、今日は食事会でもなんでもない。

「なんで素直に彼氏いるって言わないの?」

「太郎ちゃんのこと好きなんじゃない?」

真美の発言にデレッとしそうになったが、今のところ、そうとは考えにくかった。

どちらかというと麻里子は優吾に気がありそうだが、彼は婚約中である。

「そうだよね。太郎ちゃんのこと好きでもなく、優吾も対象外なら、なんでそんな嘘を言うんだろう?」

ヒソヒソと話をしていると麻里子と目が合ってしまい、二人は慌てて話を元に戻す。そして麻里子は次に太郎を褒めてきたのだ。

「あら、お二人距離が近くないですか?太郎さんと真美さん、仲よさそうだから嫉妬しちゃう♡太郎さんって絶対モテますよね?」

“彼氏がいる”と聞いていたのに、その言葉に太郎は再び浮ついた心になる。

「そんなことないでしょ〜。そういう麻里子ちゃんは高嶺の花って感じがするよね」

「え?そうですか?」

「うん、美人だし気も利くし。だから普通の男はひるんで中々アプローチできないかも」

そんな太郎の言葉に気を良くしたのか、麻里子は満足気な顔をしてフレンチ・コネクションを飲み干した。






「太郎ちゃん。私はあの女の正体が分かったよ」

麻里子が先に帰り、残った太郎と優吾に対して酔っ払った真美は、一人で解説を続けている。

「たまにいるんだよね〜結婚しても彼氏がいても、永遠に“チヤホヤされたい女”って」

男だって、いつまでもモテたい願望はある。しかし、女性の場合はもっと複雑なようだ。

「そういう女性って、誰でも構わず色目使うんだよねぇ。何歳になっても、その場にいる女性の中で、自分が一番じゃないと気が済まない女。男性からチヤホヤされることで自尊心を満たしているんだろうなぁ」

酔っ払っているからなのか分からないが、真美は不服そうな顔をしている。

「でも結局、そういう女性がちゃっかり幸せを掴んでいくんだよね・・・」

相変わらず、女同士の見えないプチバトルに全く気づかぬ太郎だが 、呑気に「そういう女性と結婚したら大変そうだなぁ」とは考えていた。

しかしそれよりも何よりも、“彼氏がいない”という言葉を鵜呑みにし、麻里子の掌の上で転がされかけていた太郎は、やはりまだまだ女を見る目がないようだ。

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ボディタッチではなく、ソフトタッチをしてくる女