「堂々と大臣が」発言も「竹島の日」閣僚派遣を見送り、外国人政策は「ゼロベースで」…「高市首相」高支持率でも懸念は“保守層の失望”
第1回【「皇室典範」「憲法」改正に意欲も支持層の“高市離れ”じわじわと…勇ましいアピールのウラで囁かれる「高市早苗首相は本当に“保守政治家”なのか」】からの続き──。首相の高市早苗は東京・九段北の靖国神社が4月21〜23日に行った春季例大祭に合わせた参拝を見送った。政権発足後、一部の保守派、特に極右は高市の政治姿勢に不満を強めている。いったん自民党が取り返した保守票が、再び参政党にシフトしている可能性も取り沙汰されている。【村田純一/時事通信社解説委員】(全3回の第2回:一部敬称略)
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【写真を見る】「激ヤセ」が心配される高市首相 現在と比較すると「まるで別人」
最初のきっかけは、島根県の「竹島問題」を巡る高市の発言と対応だった。竹島は歴史的にも国際法上も日本の領土で、韓国が不法占拠していることを高市は問題視してきた。昨年秋の自民党総裁選では、「『竹島の日』には堂々と大臣が出ていったらいい。(韓国の)顔色をうかがう必要はない」とも訴えた。

ところが首相就任後、2月22日に行われた島根県主催の「竹島の日」記念式典への閣僚派遣を見送り、例年通りに内閣府政務官を出席させた。これが保守層の激しい怒りと失望を招いたのだ。
先に触れたが、日韓関係が改善に向かったことから、韓国に配慮した対応だった。しかし、保守派は猛反発し、会場でも激しいヤジが飛んだ。ある自民党関係者に聞くと、閣僚派遣見送りに対する批判の電話が何本もあったそうだ。

さらに外国人労働者問題で、高市が「特定技能2号の上限は設定していない」とした国会答弁も、保守層には不興を買った。
特定技能2号とは、人手不足の11分野で外国人の熟練労働者がビザを取得できる制度で、在留期間に上限はなく、配偶者・子どもの帯同も認められる。つまり、外国人の永住に道を開くことにもつながり、「移民」を増やすことになるのではないかと、一部の保守層は懸念する。
外国人政策に対する不満
高市は自民党総裁選で、「奈良のシカ」を蹴り上げるという外国人の例(筆者註:根拠薄弱との指摘もある)も挙げ、外国人政策に厳格に取り組む姿勢を示した。
「外国人との穏やかな、お互いに思いやりを持って生きられる付き合い方はどうすればできるか、いっぺんゼロベースで考えるつもりです。毎年毎年、私たちと文化や何もかもがあまりにも違う人たちをまとめて入れていく政策は考え直さなあきません。経済的な動機でやってきて難民を主張する人にはきちんとお帰りいただく。不法滞在の人にも厳格に法律を守っていただく……」
高市が総裁選で「外国人政策をゼロベースで考え直す」と発言したことが、一部保守層に大きな期待感を与えた。だが政権の外国人政策は、まだ一部保守層の期待にはほど遠く、「不十分」「裏切られた」との思いもあるという。自民党への不満が高まれば、外国人政策により厳格な参政党への支持が再び上昇する可能性がある。
自民党の保守グループ「保守団結の会」共同代表の衆院議員・高鳥修一は、高市が初めて総裁選に出馬した時に推薦人をかき集めて支援してきた「縁の下の力持ち」的な存在だ。
旧安倍派に一時所属し、裏金問題の影響もあって2024年衆院選では落選したが、先の衆院選で返り咲いた。24年衆院選前に61人いた同会の会員は一時35人に減ったが、現在、新人議員も公募して85人に急増し、4月7日に活動を再開した。
「保守票は自民党に戻ってきた」
高市も顧問を務める同会には旧派閥出身者も参加。高市を支持する保守系議員の受け皿で、事実上の「高市派」とも見られている。高鳥は高市のことや保守層の「高市離れ」の動きをどう見ているのか。
「そもそも、自民党より右の政党はなかった。極右もリベラルも含め、保守層の支持政党は自民党しかなかった。安倍政権で安倍さんを支持した人たちは、リベラルの岸田政権に相当幻滅し、石破政権への失望感もあって、参政党や日本保守党の支持が伸びた。自民党よりもっと右の政党に乗り換えたので、自民比例票は大幅に減った。だけど、高市さんが総理・総裁になって、(右の政党に乗り換えた票は)自民党に戻ってきた。私の周囲もそんな人が多いし、全国でもそうだろう。そうでなければ、こんな自民圧勝はない」
「竹島の日」記念式典への閣僚出席見送りについては、「私自身も残念な思いはある」としながらも、日韓首脳会談で日韓関係が改善に向かったことを踏まえ、「高市政権は始まったばかり。私は『安全運転』という言葉は好きじゃないけど、まずは安定した政権をつくらないといけない」と一定の理解を示した。
保守層が離反する可能性
「高市首相は保守強硬派か」と単刀直入に問うと、「いや、決して強硬派ではない」と答えた。
「保守派ではあっても、もともと極右ではない。だから、極右の人が主張する政策を全て求めても難しい面はある。保守強硬派というのは、左派の人がレッテルを張って言っている言葉だ。保守は保守だけど、少なくとも私に比べれば、高市首相はリベラルだと思う」
かつて高市には、ひょっとするとリベラル的な志向が相当にあったのかもしれない。高市の松下政経塾時代は「リベラル」の先輩・後輩が多かっただろうし、渡米して勤務したのは、民主党の大物女性下院議員の事務所だった。それが、日本の政界に入って、安倍に近づき変身した。そして今や保守強硬派の鎧も脱ぎ捨てようとしているのではないか。
高市政権の支持率は高い数値を維持している。ところが高鳥は「若い人たちも含めて保守層は確実に増えている。だけど、その人たちは離れていく可能性もある」と今の状況を全く楽観視しない。
なぜ高市政権から保守層が離れていく可能性があるのか、第3回【政権発足から半年…高市首相が支持されるのは「特定の政策ではなく“威勢のよさ”」…保守層の支持を左右する最大の関門が「8月15日」と指摘される理由】では、高鳥氏の分析のほか、元自民党事務局長で選挙・政治アドバイザーの久米晃氏が「8月15日が高市政権の関門」と注目する理由について詳細に報じる──。
村田純一(むらた・じゅんいち)
1986年、時事通信社入社。90年から政治部。海部政権で首相番。平河クラブで自民党の小渕恵三幹事長、小沢一郎竹下派会長代行らを取材。民社党、公明党を担当後、羽田政権、村山政権で首相官邸を取材。96年経済部で経団連など財界担当。97年政治部に戻り、山崎拓政調会長番。選挙班長、防衛庁担当などを経て、2001年8月からワシントン特派員。05年2月帰国。外務省キャップ、政治部次長、福岡支社長などを経て20年7月より時事総合研究所代表取締役。23年6月より現職(時事総研研究員兼務)
デイリー新潮編集部
