ランダム商法に大金を注ぎ込む人は絶えない

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 とどまるところを知らない推し活ブームの勢い。池袋のアニメショップには多数の推し活グッズが並び、グッズ専門店も軒を連ねている。そんな推し活を楽しむ人たちの間で、常に議論になるのが、「グッズのランダム商法」である。ランダム商法とは、いわゆる“ガチャ”のようなもので、購入者は数種類あるグッズを自分で選ぶことができず、ランダムに購入させられるというもの。馴染みのない読者には“福袋”をイメージしてもらうといいかもしれない。当然ながら、袋の中からほしいグッズが出るかどうかは運任せであり、もしすべての種類を揃えようとすれば、その袋を買い続けなければいけないという販売方法である。

【写真】アニメグッズ専門店が軒を連ねる推し活の聖地・池袋の今

 アニメショップや、アイドルなどのライブ会場では必ずといっていいほど見かけるランダム商法だが、Hamaru Strategyが行ったアンケート「ランダムグッズに関する消費者意識調査2026」によると、ランダム商法でグッズを販売することについて「非常に嫌い・嫌い」と回答した人の合計がなんと89.9%に達したことがわかった。実に約9割の人が、ランダム商法を嫌っていることがわかる。

ランダム商法に大金を注ぎ込む人は絶えない

 しかも、その販売額の高額化も顕著である。一昔前はせいぜい500円か、高くても800円程度だと思っていたら、みるみるうちに1000円超え。ついには2000円を超えるランダム商法も登場し、いつもは大人しいファンの間からも「高すぎる」「ぼったくりだ」などの批判が起こっている。批判を受けつつもメーカー側がランダム商法をやめられないのは、結局、「儲かる」のひと言に尽きるようだ。【取材・文=山内貴範】

射幸心を刺激する

 ランダム商法で販売されるものは、アクリルスタンド、トレーディングカード、フィギュア、缶バッジなどといった推し活の定番商品である。5種類を1種類ずつランダムに販売するくらいであれば、まだ良心的なほうだ。8〜10種類がランダムという事例は普通にあるし、なんと、92種のカードのうち、4種をランダムに販売するというとんでもないグッズもあった。全種類そろえるには、どれだけ買い続けなければいけないのだろうか。

 ランダム商法は、グッズを複数点購入する人が必然的に多くなるため、売り上げが増える。そして、売れ残りを防ぐことができるメリットも大きい。例えば、アニメのキャラクターや声優アイドルが5人いたとしよう。どうしても人気に差が生じるため、通常の販売方法では売れ行きに差がついてしまう。ランダム商法なら均等に販売できるので、売れ行きが偏るリスクが少ないのである。

 何より、ランダム商法にはギャンブル的な要素があるため、射幸心を刺激する部分も大きい。ライブ会場のように気分が高揚していると、つい財布の紐が緩みがちになり、大量に購入してしまうのだ。このように、ランダム商法はファンのためというよりは、完全に売る側にメリットが大きい販売システムである。推し活の商業主義化を象徴しているといえるのではないだろうか。

コミュニケーションになると言うが

 もちろん、ランダム商法を肯定する人も存在する。その理由の一つが、ファン同士のコミュニケーションのツールになるという点である。例えば、池袋にある中池袋公園には連日のように推し活をしている人たち(ほとんどが女性である)が集まり、グッズ交換に興じている。

 こうしたトレーディング行為を通じてファン同士で繋がったり、友人になったりするのは推し活の醍醐味であるのは確かだろう。それゆえファンの間で熱心に行われているが、一方で、それによって発生する迷惑行為を非難する人も少なくない。

 例えば、前出の公園でのトレーディング行為はたびたび問題視されているうえ、ライブの前後には、会場や商業施設の周りにグッズ交換のためにたむろする人が多く、近隣住民からクレームが入ることもままある。メーカーや販売店側も注意の呼びかけはしているものの、形式的なものになっている印象は否めず、積極的に問題解決に当たろうという姿勢は感じられない。

転売屋がいなくならない要因

 ランダム商法が、転売屋(転売ヤー)を蔓延らせる原因になっているという指摘もある。いつまで経っても欲しいものが出ないなら、いっそのこと、最初から転売屋から買った方が無駄な買い物をせずに済むので安い、と考えるファンは少なくないためだ。

 一定の金額を使わないとぬいぐるみを掴むアームの力が強くならない“確率機”という機械がある、クレーンゲームにもいえることだ。3000円入れてもぬいぐるみがゲットできないなら、最初から転売屋から買った方が確実に手に入るし、考えようによっては安く入手できるともいえる。

 このように、転売屋が減らない要因はメーカーの売り方に根本的な問題があるケースが多い。特にランダム商法は、欲しくもないものを買わされるという、ネガティブな要因がある。何より、前出の調査によれば約9割の人がランダム商法を嫌っているのだから、転売屋は「不要なものを買いたくない」「欲しいものだけ買いたい」という需要を巧妙に突いて稼いでいるわけだ。

地球に優しくないランダム商法

 推し活疲れに陥っているファンは多いというが、グッズなどを買い取り、販売する中古市場側も疲弊しているのは間違いない。ランダム商法で販売されたグッズのうち、人気のないキャラはすぐに中古ショップに持ち込まれるが、不人気キャラばかりが集まりやすいため、在庫過多に陥るケースが少なくないという。

 さらに、最近のアニメは飽きられるのが早い。SNSでバズりまくっていた“覇権アニメ”が、半年後には見向きもされなくなる事例が普通にある。そのため、中古ショップは仕入れた商品を早々と売り切ってしまわなければならず、店側にもデイトレーダー並みのスキルが求められる。また、一見するとウハウハなメーカー側も、次から次へとグッズを供給しなければならないため、負担は大きいのではないだろうか。

 公式が出すグッズはすべて買う、なんなら同じグッズを大量に買う行為は、かつて新興宗教で相次いでいた教祖の本を大量購入する人と何ら変わらない。何より、ランダム商法はグッズを大量に製造するため、地球に優しいとはいえず、SDGs(この言葉も流行しなくなったが)の時代に逆行している。

 今後、こうした販売商法は見直される時期が来そうだ。ファンの懐に依存しすぎ、低品質なグッズを出し過ぎると、どこかでしっぺ返しを食らうことになるのではないだろうか。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部