次に、壬生を慕う久我裕也役の吉村界人に触れたい。菅原を失脚させるため、壬生の指示を受けた久我は、菅原が運営する介護施設に潜入し、従業員のフリをする。そして、施設に入所している高齢者に虐待をしている様子を収めた動画を壬生に渡し、そのデータをマスコミにリークすることで菅原を追い込むことに成功した。

 菅原から犯人として疑われ、“人間ボーリング”など凄惨な拷問を受けるも、「壬生さんのためなら」と忠誠心の高さを見せて耐え抜いた。作中、かなりの頻度で“半殺し”の目にあった人物で、可哀想な役回りの久我。それでも、ひょうひょうとした立ち振る舞いゆえに、そこまで可哀想とは思わせない。

◆いつの日かボスキャラを演じてほしい

 吉村といえばNetflix作品でたびたび存在感を発揮しており、『地面師たち』ではゲスなホスト・楓を、『This is I』ではアイ(望月春希)の恋人・タクヤを演じていた。どちらも軽さを持った役どころで、強さや弱さのどちらかに極端にパラメーターが振れているわけではない。ある意味で人間らしい役を演じており、そのバランス感覚の良さは久我を演じる上でも十二分に発揮されていた。

『地面師たち』では豊川悦司の演じるハリソン山中が、そして『九条の大罪』ではムロツヨシ演じる京極がボスキャラ的な立ち位置だが、いつか吉村がこうしたポジションを演じることにも期待したくなる。

◆不遇な青年の生きづらさを、リアルに体現する黒崎煌代

 最後は、軽度知的障害を抱える運び屋・曽我部聡太を演じた黒崎煌代だ。おそらく黒崎は、本作で最も注目された役者と言っていい。会話のキャッチボールの噛み合わなさや話し方の間合いなど、その言動から、曽我部が現在に至るまでの経緯が想像しやすい。決して誇張しすぎることはなく、それでいて控えめすぎるわけでもなく、曽我部の生きづらさを示す絶妙な塩梅で演じられていた。

 現在23歳と若い黒崎。2025年に公開された映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』では、主人公・小西(萩原利久)の唯一の友人で、独特なノリを持ちながらも気の良い男子大学生・山根を演じ、インパクトを残していた。それでも出演作自体はまだ多くはない。

 4月13日から放送中の月9ドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』(フジテレビ系)では、“宇宙食開発”を立ち上げる1期生のひとりとして、重要なポジションを担うようだ。彼の表現力の高さが、民放ドラマでどのように発揮されるのか楽しみだ。

 役者陣の説得力ある演技が堪能できる『九条の大罪』は、『地面師たち』をはじめとするNetflixのヒット作のように、長く支持を集めるかもしれない。

<文/望月悠木>

【望月悠木】
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki