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 ◇「ばけばけ」松野(雨清水)トキ役・郄石あかりインタビュー

 俳優の郄石あかり(23)がヒロインを務めたNHK連続テレビ小説「ばけばけ」(月〜土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は27日、最終回(第125回)を迎え、完結した。主人公・雨清水トキによる夫レフカダ・ヘブンの回想録「思ひ出の記」が完成。ラストシーンは初回(昨年9月29日)冒頭に戻る劇的な展開となった。郄石に撮影の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「バイプレイヤーズ」シリーズやNHK「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」など会話劇に定評のある、ふじきみつ彦氏がオリジナル脚本を手掛けた朝ドラ通算113作目。松江の没落士族の娘・小泉セツと、その夫で日本の怪談を世界に紹介した明治時代の作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルに、怪談を愛してやまない夫婦の何気ない日常を紡いだ。

 最終回は、雨清水トキ(郄石あかり)は家族に見守られながら、錦織丈(杉田雷麟)にレフカダ・ヘブン(雨清水八雲)(トミー・バストウ)との思い出を語る…という展開。

 丈が「“フロッグ”コート」の勘違いに気づき、一同は爆笑。トキの懺悔は逆転する。松野フミ(池脇千鶴)は「他愛もない、ほんに他愛もない、素晴らしな毎日だっただない」――。トキは滂沱(ぼうだ)の涙を流した。

 トキの手に蚊が止まる。ヘブンの生まれ変わりに違いない。

 「『KWAIDAN』は二人の死後、世界中で大ベストセラーとなった」

 「トキが語った言葉は『思ひ出の記』という一冊の本になった」

 長男・勘太(ウェンドランド浅田ジョージ)と次男・勲(柊エタニエル)が本を開く。「REMINISCENCES OF LEFKADA HEAVIN BY TOKI USHIMIZU(Mrs.Heavin)(思ひ出の記)」。それは、トキとヘブンの何気ない日常――。

 エンディングに持ってきたオープニングタイトルバック=「思ひ出の記」という仕掛け。写真家・川島小鳥氏によるスナップ写真に、数々のドラマ名場面を加えた最終回仕様の“スペシャルタイトルバック”となった。

 夫婦デュオ「ハンバートハンバート」による主題歌「笑ったり転んだり」がほぼフルサイズで流れた後、場面は初回冒頭に戻る。東京・大久保の家の書斎。ロウソクが灯る。

 <初回>

 トキ「(『耳なし芳一の話』を語り終え)それでは、もう一つの話、よろしですか?それは明治の初め、武士の世が終わったばかりの、それはそれは恨めしい時代のことでございます。(ロウソクに火をつけ)では、私トキの話を」

 <最終回>

 トキ「これが、私トキの話でございます」

 ヘブン「ママサン…スバラシ…」

 トキ「パパさん…お散歩行きましょうか」

 トキがロウソクを吹き消す。「ドコニ、サンポスル?」「えー、お寺?」「スキップ、シマショウカ?」「ここで?」「(2人で)タッタタッタ…」――。

 トキの人生が肯定される最終回。最初に台本を読んだ際の心境を尋ねると、郄石は「最終週は、いつもと違って自然とトキとして読んでいる自分がいて。勝手にボロボロと涙が出てきてしまう、今まであまりなかった経験をしました」と振り返る。

 初回に戻る展開については「第1週を読んだ時から“もしかしたらラストは(冒頭に)戻るかな?”という予感もあったんですが、最終週を読み進めるうちに“戻れるか?いや、戻れないか?”と気持ちが揺れ動いたりしました(笑)。でも、最終的に初回に戻ったことによって、これは色々な解釈ができると思いますので、ふじきさんは『ばけばけ』という作品を視聴者の皆さんに手渡されたんだ、と。本当に最高の脚本だなと思いました」と感嘆した。

 郄石自身の解釈もあるが「今回は皆さんがどういうふうにご覧になったのかを楽しみにしています」と視聴者へ呼び掛けた。

 郄石とトミーは、このシーンをもってクランクアップ。約10カ月にわたる長丁場の収録を完走した。最後の台詞「パパさん…お散歩行きましょうか」は「ラストシーンだとか、10カ月お芝居を積み重ねての台詞だとか、そういう状況にのみ込まれず、日常の一コマにしたいと考えていました。ただ、いざヘブンさんを目の前にすると、懺悔していたトキが自分の中に出てきて…どういうふうに散歩に誘えばいいのかな」と迷いも生じた。

 脳裏によみがったのは第65回(昨年12月26日)、松江大橋のシーン。散歩に向かうヘブンを呼び止めたトキの台詞「私も…ご一緒してもええですか?」――。

 「あの時の言葉は、いわば告白のようなものです。トキはもう一度、ヘブンさんに告白することができるんだと感じたので(最終週を担当したチーフ演出の)村橋(直樹)さんに相談して“お散歩行きましょうか”の前に“パパさん”を付けさせていただきました」。当初の台詞に郄石のアイデアも加わった。直接的な愛の言葉はあまり口にしなかった夫婦だが、最後の台詞は「パパさん、愛しています」にも聞こえてくる。

 今作の制作にあたり、重要な参考文献となったのが、八雲との13年8カ月にわたる結婚生活をセツさんが口述した回想録「思ひ出の記」。小泉夫妻がよく散歩をしていたことが分かる内容で、ドラマにおいても「散歩」がキーワードになった。

 「ラストシーンの後、2人はどこを散歩したと想像しますか?」の質問には「スキップしたり、虫の音を聴いたり。いつもと変わらない日常だと思います」。自身も以前から散歩好きで「平気で3時間ぐらい歩くことも。(大阪放送局制作の)『ばけばけ』の撮影に入ってからは、大阪の街もよく散歩しました」。トキとともに歩んだ10カ月。郄石の“次なる一歩”が待ち遠しい。