なぜ「個人運営の民泊」が大手ホテルを出し抜けるのか?強者の資本力に立ち向かう“弱者の戦略”

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空き家問題やインバウンドの増加から、昨今民泊経営や旅館投資への注目度が高くなりました。しかし「民泊・旅館投資」という選択肢は知りつつも、実際には多くの人が「観光業・ホテル業のプロには勝てないのでは?」とチャンスを逃がしている現状があります。本記事では、生稲崇氏の著書『民泊旅館投資サバイバル大全』(扶桑社)より一部を抜粋・再編集して、わずか3年で年間CF1000を達成し、見事FIREを実現した民泊旅館投資のプロである著者が、民泊旅館投資で個人が大手に勝てる秘訣について解説します。

弱者(個人)が、強者(大手ホテル)と対等に戦える理由

なぜ、私たちのような「個人」が民泊・旅館投資で成功できるのか?

一見すると「観光業・ホテル業のプロにしかできないでしょ?」と思われがちですが、そんなことはありません。シティホテルやビジネスホテルのような大手は、利益を追求し、大量の宿泊客を効率よくさばくために、シングルやツインベッドの部屋を数多く用意し、高い回転率を維持する必要があります。

しかし、私たちはそうしたモデルとはまったく違うアプローチが取れるのです。大手ホテルと違って、個人であれば収益の最大化ではなく、滞在そのものの価値を追求できます。つまり、大切なのは「どうすればお客様に特別な時間を過ごしてもらえるか」という視点です。

「強者」とは、シティホテルやビジネスホテル、大手のチェーンホテルなど、規模が大きく、資本力や組織体制の整った事業者たちを指します。彼らは大量の従業員を抱え、宿泊客を効率的に受け入れ、収益を最大化し、株主に適切な利益を配当するビジネスモデルを展開しています。

それに対して「弱者」とは、私たちのような個人の小規模な民泊・旅館オーナーです。本業が会社員・主婦で、副業として始めている人もいれば、家族経営で手作り感あふれる運営をしている方もいます。資本や人員では大手に到底かないません。

「弱者」である私たちには、大手には真似できない「柔軟さ」や「個性」、「温かみのあるサービス」といった強みがあります。決して同じ土俵で戦う必要はなく、むしろ真逆の価値を提供することで、お客様に選ばれる存在になれるのです。

なぜなら、利益追求の度合がそこまで大きくなくてもいいからです。大量の従業員を雇う必要も、大量に宿泊者をさばく必要もなく、一組一組のお客様との関係を大切にし、自分のこだわりや個性を活かした空間づくりができます。むしろ、それこそが大手にはできない強みであり、だからこそ個人でも成功できる余地があるのです。

「機動力」と「独自性」が弱者の勝ち筋

強者の戦略は、立派で大きな建物(ハード)をつくり、同じようなサービスを高い水準で安定的に提供し(再現性)、多数の部屋、人員を確保して回す(スケール)というスタイルです。シティホテルや大手ビジネスホテルなどがこれにあたります。

だからこそ、1部屋ごとに丁寧な手間や時間をかけるのは難しくなります。チェックインから清掃、アメニティの補充まで、すべてがマニュアル化され、コスト効率と再現性の確保が最優先です。

このモデルは確かに大規模で効率的ですが、その分、初期投資や固定費(建物・人件費)が非常に大きくなり、「資本力」が大きくなければ成り立たない、まさに強者向けです。つまり、強者が「スケールの大きさ」で勝負するなら、弱者は「小ささを活かした機動力と独自性」で勝負すればよいのです。これこそが、私たちが民泊・旅館ビジネスで成功できる理由なのです。

たとえば、手書きのウェルカムカードを用意したり、地域のちょっとしたお菓子を詰め合わせておいたり、季節の花を一輪飾っておいたり。そういった「心づかい」や「あたたかさ」は、少人数だからこそできること。つまり、大手にはできない“非効率の中にある価値”を、私たちは提供できるのです。

弱者―私たちのような個人や小規模な宿の運営者にとっては、1軒、あるいは少数の物件しか扱っていないからこそ、それぞれのお部屋やお客様にしっかりと手をかけられます。「数をこなす」よりも、「一組一組を大切にする」ことができます。その結果として、ハード(施設)よりもソフト面=おもてなしを重視したサービスが可能になります。

これを追求すると、畳の古くさい家が日本文化を楽しめる「趣のある部屋」になります。こうした細やかな気遣いこそが、大手には真似できない「個人ならではの価値」であり、お客様から「また来たい」と思ってもらえる、大きな理由になります。

ホテルではなく民泊だからこそできる「個別的な体験、つながり」が大きな差別化に

このように規模や資本では勝てなくても、「人の心に残るおもてなし」というソフトの力で、私たちには十分に勝機があるということなのです。

たとえば、じゃらんやBooking.comで予約する一般的な宿では、「近くに美味しい飲食店はある?」「どこで過ごすのがおすすめ?」といったことを、わざわざ宿に相談することはあまりありません。システマチックに予約して泊まり、チェックアウトするのが主流です。

でも、小規模な民泊旅館では、そうではありません。宿のオーナーへ気軽に話しかけたり、現地のおすすめを聞いたり、ちょっとした雑談の中で地域の魅力を教えてもらえたりします。それはまるで、「旅先に友だちがいて、その人の家に泊まりに来た」ような感覚。

この人と人とのつながりこそが、いわゆる「ソフトの力」であり、旅の価値をぐっと高めてくれるのです。

[図表]経済合理性の計算

大手との差別化要素を持ちながら、さらにリーズナブルに宿泊できる、その経済合理的な説明が、上の数式です。大手のビジネスホテルでは寝るだけの空間になりがちですが、民泊や旅館には、家族や仲間と団らんできるリビングスペースがあることも多く、滞在中に旅の思い出を気兼ねなく団らんできることが、特別な体験になります。

特に前項で解説した「トキ消費(=誰と時間を過ごすかを重視する消費)」の観点からすれば、「みんなでこの旅行、ほんと楽しかったね」「明日はどこへ行こうか?」と語り合う時間や空間の存在は、旅の満足度を大きく左右する要素です。

こうした、物理的な設備の良さだけでなく、心のゆとりや人とのつながりを生む空間設計が、民泊・旅館ならではの強みとなっているのです。

生稲 崇

不動産投資家・事業家