このシーンから約25分後、松原が主体的に起こした“アクション”がゴールに繋がることとなる。最終ライン裏のスペースへ走り込む動きは「僕の独断です」と語ったが、「ボールホルダーにプレッシャーがかかっていない」というチーム内での“決まり事”に則り、“工夫”を加えた動きだった。

 前述の通り、今回の得点は最終ライン裏のスペースへ飛び出しているという点で、松原が今季のJリーグで挙げた2ゴールとは異なっている。ただし、松原はチームや試合の文脈を踏まえた上で「どこにスペースが生まれるのか」を把握し、自身の動きを得点に繋げた。この事実に類似性を感じ、“偶然の産物”であるようには見えなかった。

 このような“工夫”の末に生まれたゴールを、松原は次のような言葉で振り返る。「左サイドにボールが入った時、みんなの目線はそっち(左サイド)に向きます。大外から走っていけば何か起こるかなとは感じていました。カツ(永戸勝也)がボールを持った時に『絶対来るな』という確信がありましたし、パスも『シュートを打ってください』というような丁寧なパスでした。ダイレクトで怖がらず、強気に打ちに行ったという感じです」。このような気持ちで放ったシュートはGKシュテファン・オルテガが届かないコースへ向かい、横浜FMは2点をリードすることとなった。「あんなに綺麗にインサイドでゴールを決められるイメージはあまりありませんでした。抑えて、ふかさないようにイメージして、良い形で点を取れて良かったです」と自らのゴールに言及しただけでなく、“欧州王者”相手に決めた一撃であることにも喜びを露わにした。

「本当に嬉しいです。相手がプレシーズンで最初の試合だからということもありますが、そこを差し引きしても、世界王者から点を取れるということは、この一生であるないかといった感じです。そこはしっかりと結果を残せて良かったです」

 しかし、この後横浜FMはマンチェスター・Cの“底力”を見せられることとなり、3−5で逆転負けを喫した。松原も自身が前半に対峙したジャック・グリーリッシュについて「彼のコンディションは全然100%とは程遠いとは思いますが、パス出すタイミング、仕掛けるところだったりで、要所にクオリティの高さや違いを感じました」と話しており、個人としてもチームとしても“差”を痛感する場面はあっただろう。実際に後半頭からの数十分はなかなか自陣から脱出できず、マンチェスター・Cの攻撃を受け続ける時間が続いた。

 ただし、チームの“やり方”を理解した上で空いているスペースを把握し、そこに入って得点に繋げた松原のプレーは、絶対に今後に繋がるはず。松原が「そこはウチらしい形かなと思います」と語った「サイドバックからサイドバック」という得点パターンからも、横浜FMの“らしさ”が感じられた。松原は今後の明治安田生命J1リーグでの優勝争い、そしてJリーグYBCルヴァンカップとAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に向け「このような形を増やしていければいいなと思います」と意気込んでいる。チームの”決まりごと”に則りながら個人の“工夫”を加えることで、今季の松原はさらにゴール数を伸ばしていくかもしれない。

取材・文=榊原拓海

【ハイライト動画】横浜FM対マンCは点の取り合いに