「表舞台から消えた33歳にすがるほど最悪な状況」「ファンは幻想を…」本田圭佑のボタフォゴ移籍をブラジル人記者はどう見たのか?【現地発】
今から数年前のこと、私はTV中継でセリエAのミラン戦を見ていた。相手の守備は堅く、ミランは攻めあぐねていた。しかし、その流れを一人の日本人選手が見事に変えてしまった。試合後に彼はマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。それが本田だった。
日本は私にとって特別な国のひとつだ。その日本の選手が、イタリアで活躍するのを見て、どこか誇らしい気持ちになったのを覚えている。
本田は確かにいい選手だ。それは疑う余地はない。しかしその目の前には多くの問題が山積みされている。
ひとつは本田が選んだボタフォゴというチームの問題だ。
この名門クラブは現在、非常に難しい状況にある。とくに財政面の問題は深刻で、クラブはゴタゴタを抱えている。
本田はこれまでに何度も、オファーは、他のチームからもいろいろあったと発言している。ヨーロッパにもアジアにも。しかし最終的に移籍先に決めたのは、言葉も習慣も知らないブラジルの、それも深刻な問題を抱える、給料も安いチームだった。彼の言葉を信じるならば、ただサポーターの愛に応えるために……。
おそらく世間では空港での熱烈な歓迎ぶりや、土曜日のプレゼンテーョンイベントといった明るい話でいっぱいだとは思う。確かにそれらは例を見ない盛り上がりだった。
ただ空港に詰めかけた2000人を超えるサポーターが、少なくとも25回は「FORAVALENTIM(ヴァレンティン出ていけ)!」と叫び、「OOO MUFARREJ O BOTAFOGO NAO PRECISA DE VOCE(オー、ムファレジ、ボタフォゴにはお前はいらない)」と歌ったことはあまり報道されていないだろう。ヴァレンティンは監督の名前、ムファレジは約半年前に就任したクラブの会長の名前である。
つまりボタフォゴはまだ開幕から1か月も経っていないのに、監督や会長の解任を求めるほど調子が悪いのだ。本田が到着する2日前にも、ボタフォゴはカシアスという全国リーグでもプレーしたことのない小さなチームに負けて、2月9日にはフルミネンセに0-3で完敗。試合後、ヴァレンティン監督は実際に解任されてしまった。
本田は、チームがこんな状況であることを分かったうえで、ここに来たのだろうか?
ボタフォゴは、深刻な不調に陥っている。客観的に見ても、ブラジルのセリエAのチームが、数か月もの間ほとんどプレーしていない33歳の選手を獲得するというのは、それだけで何かがうまくいっていない証拠である。
もしが本気で今シーズンを本田に賭けているのなら、他のチームメイトはこのベテランより劣るということになる。これは由々しき問題だ。100パーセントではないにしろ、経済的効果を狙っての獲得であることを願う。
一方、その本田自身も問題を抱えている。
17年夏にミランを退団してから、選手としては表舞台から消えてしまっている。だから、私が本田と聞いてロシアやイタリアでの活躍を思い起こしたように、ブラジルの人たちの記憶はそこで止まり、更新されていない。
メキシコのパチューカやオーストラリアのメルボルン・ヴィクトリーでどんなプレーをしていたか知らないし、ましてやオランダの中堅クラブであるフュテッセで、たった4試合だけプレーしてチームを去った理由も知らない。
2010年のワールドカップや、MVPに輝いた2011年のアジアカップの時のようなプレーを思い出し、まるで彼が魔法使いのようにチームの抱える問題をすべて解決してくれると信じ込んでいる。いや、信じ込もうとしている。だからこそ仕事のある金曜日の午後にもかかわらず、2000人以上の人がたった4分間だけ本田を見るために空港を訪れ、顔見世には1万人近くのファンが足を運んだのだ。
