柔道をやる小学生に筋トレは必要なのか?

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連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』40限目」

「THE ANSWER」の連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』」。現役ボディビルダーであり、「バズーカ岡田」の異名でメディアでも活躍する岡田隆氏(日体大准教授)が日本の男女の“ボディメイクの悩み”に熱くお答えする。40限目のお題は「柔道の小学生年代の筋トレ」について。柔道全日本男子チーム体力強化部門長も務める岡田氏がアドバイスする。

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 Q.息子は「将来はオリンピックで金メダルを獲りたい」と柔道を頑張っています。今年、小学5年生になりますが、そろそろ力をつけるために筋トレを始めさせた方がいいですか?

 強い柔道家になるために、最も大切なのは稽古です。

 近年、筋トレなどの補強トレーニングや食事の重要性も語られるようになり、トップの選手たちがそれらに取り組む姿もメディアで取り上げられるようになりました。筋トレを愛する者としては、トレーニングの重要性が注目されることはうれしい。しかし、筋トレや食事は、あくまでもプラスαの要素です。当たり前すぎて記事になりませんが、どんなにスゴイ選手たちも、毎日、柔道の稽古をしっかりしています。質も量も。これが、強さのベースです。

 特に小学生年代は、柔道の練習に集中することが最も大切です。

 まずは基本的な体の仕組みを整理しましょう。小学生年代の体は筋トレをしても、筋肉はそれほど大きくなりません。つまり、「筋肉を大きくして強くなろう」という目的で、トレーニングに時間を割くこと自体がもったいない。そもそも、人間の動作は非常に繊細な協調性(いわばコントロール)によって成り立っていますから、特定の筋肉を鍛えたからといって、急に強くはなりません。

 また、筋トレをすることで解決しよう、という思考は「力をつければ何とかなる」という発想からきています。技術を積み上げていくには時間がかかるので、パワーをガコンと上げようというのは、あまりにも短絡的ですよね。筋トレをさせて大人みたいな体をした子どもの選手を育てれば、確かに目の前の勝負には勝てるでしょう。でも、力に頼って何とかしようとすれば、いつかその選手の成長は頭打ちになります。

 一方、この年代の子どもは、「狙った動きを完璧にやる」という、動きの習得に長けています。つまり競技に必要な動作を丁寧に何度も繰り返すことで、自分の思い通りに動ける力が磨かれます。

 また、小さい時に身に着けた動きは、大人になっても体が忘れません。例えば、柔道の重量級でも、体がとても大きいのに機敏に動ける選手がいます。そのような選手は強いのですが、それができるのは、体重が軽い幼少期に体を機敏に動かし、機敏な動きを学びとったからです。

100点満点の稽古の先に成長がある、大野将平も阿部一二三もそう

 “うまくなりたい”という純粋な気持ちをもって自然に動きを習得していく力は、意識的に覚える大人では到底敵わない可能性を秘めています。そう考えると小学生時代こそ、将来、世界で戦うための動きのベースを習得する最高の時期。「筋トレに時間をかけて、体をデカくしよう」などと、考えなくていいのです。

 ただ、こういった質問をされるということは、恐らくお子さんや親御さんが「今のままでは何か足りない」と感じているからでしょう。そうであれば、やるべきことは筋トレではありません。その時間があるならば、もっともっと柔道に向き合い、まずはしっかり稽古はできているだろうかを考える。毎日の稽古を“100点満点化”することが大事です。

 100点満点の稽古に必要なのは、100%の気持ち、体調、集中力をもって一日一日の稽古に向かう姿勢です。例えば、打ち込みの練習の際、ルーティンでこなすのではなく、10回中、何回、自分が思い描いていた通りの動きができたかにこだわってみます。「タイミングが合わなかった」「スピードが遅れた」「体勢が崩れた」など、ちょっとでも自分のイメージに合わなかったら、ノーカンです。完璧に自分のイメージ通りに10回成功しないと、100点満点にはならない。こういったことを、稽古のあらゆる場面で意識し、毎日続けてみましょう。

 それでもまだ本人が「筋トレをしたい」と言うのであれば、腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワット、懸垂など基本的な自重トレーニング種目をやらせてあげればいいでしょう。ただし、翌日、疲れが残ってしまうようなら、そこでストップ。疲れてしまい肝心の稽古に身が入らない、100点の練習ができなければ、本末転倒です。

 時間、体力、精神力は有限です。稽古を追求すれば筋トレをする時間も体力もきっと残らないでしょう。筋トレして、走って、柔道して……となると大人でも、なかなかうまくいきませんからね。筋トレは稽古を極限まで追求できるマインドが養われた時に初めて、時間を割り当てればいい。そうすればきっと、絶大な効果を発揮するでしょう。

 100点満点の稽古を目指しても、一日一日に得られるのは、いわば0.0001ミリのような目に見えない程の小さな成長です。しかし、薄紙1枚程度の一歩でも、それを重ねてきた人間しか、高みにはいけません。技術を身に着けた上で、力をつけるから無敵になる。今、日本を代表する大野将平選手も阿部一二三選手もそうです。毎日の稽古で、コンマ1秒のタイミング、0.001ミリの動きの精密さを追求した先に、今があるのです。

 学校に行って、柔道の稽古をしっかりする。是非、毎日ここで、100点満点を目指しましょう。見守る親御さんも、よい稽古を追求する大切さを、どうぞ伝えてあげてください。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。

岡田 隆
1980年、愛知県生まれ。日体大准教授、柔道全日本男子チーム体力強化部門長、理学療法士。16年リオデジャネイロ五輪では、柔道7階級のメダル制覇に貢献。大学で教鞭を執りつつ、骨格筋評論家として「バズーカ岡田」の異名でテレビ、雑誌などメディアでも活躍。トレーニング科学からボディメーク、健康、ダイエットなど幅広いテーマで情報を発信する。また、現役ボディビルダーでもあり、2016年に日本社会人ボディビル選手権大会で優勝。「つけたいところに最速で筋肉をつける技術」「HIIT 体脂肪が落ちる最強トレーニング」(ともにサンマーク出版)他、著書多数。「バズーカ岡田」公式サイトでメディア情報他、日々の活動を掲載している。