『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』公開中! フィリップ・ラショー監督インタビュー
2019年11月29日(金)から公開されている『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』。北条司原作の漫画を、フランス人のフィリップ・ラショーが監督・脚本・主演で実写化した作品。フランスでは観客動員168万人超を記録した作品が、ついに日本で公開となった。先日完成披露試写会の後に行われた合同記者会見の模様と、その後に行われた監督へのインタビューをお届けする。
合同記者会見には、原作者・北条司、フィリップ・ラショーに加え、本作の日本語吹き替え版で冴羽獠を演じる山寺宏一、アニメで冴羽獠を演じる神谷明が登壇。原作者と3人の冴羽獠が集結した。
ーーラショー監督から『シティーハンター』の映画化について最初にコンタクトがあったときのお気持ちと、実際に脚本を読んだときのお気持ちを教えて下さい。
北条 フランスで『シティーハンター』が結構人気があると聞いていたので、フランスからの映画のオファーが今まで来なかったのが不思議というか、ちょっと心待ちにしていたところがどこかありまして。今回ようやく来たかっていう感じです。そうしたらフィリップ・ラショー監督だったので。おもしろおかしい映画かと思っていたのですが、脚本を読んだら本当によくできていたんですよ。本当に『シティーハンター』としか思えなかった脚本だったので、これは一も二もなく「やってください」っていう感じでお願いしました。
ーーラショー監督は、最初に北条先生にオファーを出したときのお気持ちはいかがでしたか。
ラショー すっごくストレスを抱えていました。圧倒されていました。初来日で北条先生にお会いできるんですからね。この滞在を終えて日本を離れるときは、おそらく最高に幸せな男だったんじゃないかなって思います。滞在中に「これいいよ」って言っていただけたので。
ーー北条先生は冴羽獠を演じるラショーさんにお会いになったときに、どう思われましたか。
北条 『ヒャッハー』シリーズしか見てなかったので、どんな方か想像がつきませんせした。映画を観る限り、きっちりとどんどん整理していく感覚というか、頭のいい方なんだろうなと思っていました。実際お会いしたら、見た目はすごく格好よかったですし、思った通り、頭のいい方だなと思いました。
ーー今の北条先生のお話を受けていかがですか。
ラショー 最初は冴羽獠のイメージと僕は結構かけ離れていると思ったんですよね。髪の毛もブロンドですし。でもこのために髪を黒に染めて、筋トレも一生懸命しました。最大限の準備をしてできるだけ冴羽獠に近づこうと思って努力をしました。
山寺 元々いい体なのにさらにやったんですね。
神谷 すごく美しいと思いました。
山寺 香水つけてない?
神谷 大丈夫、つけてない(笑)。
ラショー 私の今までの作品の時期と今回で、8キロくらい筋肉の量が増えましたね。卵を大量に食べました。
ーー山寺さんは神谷さんが今までやってきた冴羽獠役をご自分がやることの感慨深さ、二十代の頃に共演されていたと思いますが、その頃にどのように神谷さんが演じる冴羽獠を見ていましたか。
山寺 もう、本当に憧れでした。神谷さんが演じられているのをずっとこう、後ろから背中を見ていて。こういう声優になりたい、神谷さんみたいになりたい、こういう役がやりたいとずっとずっと思っていて、帰っては練習をしてみて「違うな」みたいな。今回のお話をいただいて、冗談じゃないと、神谷さんがやるべきだと。「神谷さんがやるべきです!」とお会いしたときに言おうと思ったときに、「山ちゃんやってよ」っておっしゃってくださって。神谷さんにそうおっしゃっていただけなければ、今この場に立っていないので。本当に背中を押してくださり、話をしてくださってありがとうございますっていう感じです。本当に感謝をしたいです。
神谷 実は最初にオファーをいただいて、とってもおもしろい作品だったので、自分でやろうかなと思ったんですけれど、台本を読んでみると、相当無理をしなければできないと思ったんですね。アニメーションでは絵が動くものですから、そういう意味では自由度が高いんですよ。ところが実際の俳優さんが演じている場合、それを日本語としていきいきとして見せなければいけない。そういう意味では自分では無理をしなといけない。やる以上は責任がありますから、自分で無理だという風に結論を出しました。じゃあ誰がいいだろうと思ったときに、僕には山ちゃんしかいなかったんですよね。そうしたら制作会社さんから山寺さんにしようと思う、というお話を聞いて、「よかった」って思ったのがまず最初で。『シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』の打ち上げでお会いした時に、山ちゃんからの話を聞く前に「山ちゃん、頼むよ」と、僕のほうからお願いしてしまったというのが事実です。実際の仕上がった作品を見て、「当然」と思える素晴らしい仕上がりを見て、我が目に狂いがなかったと今でも思っています。
山寺 神谷さんからそのお話をいただいた時、『新宿プライベート・アイズ』の打ち上げだったにも関わらず、全然酔えませんでした。北条先生もどう思われるんだろうと思いましたし。そしてなんとその『プライベート・アイズ』のフランス語吹き替えには、ラショーさんが三國役を演じてらしたということで、ご縁を感じていました。
ーー北条先生は山寺さんだという話を聞いていかがでしたか。
北条 頑張ってほしいと心から思いました。でも山寺さんなら大丈夫だろうって、やっぱり思いますよね。
神谷 実際に最初の試写を北条先生と見せていただいて、ふたりでうなずき合いましたからね。「よしよし」「しめしめ」みたいな。全ての吹き替えを担当してくださった声優さんたちが素晴らしくて。そういう意味でもいい作品に仕上がってよかったなって思いました。
ーー北条先生は出来上がった作品を一番最初に見たときにどう思われましたか。
北条 僕が最初に見たのはフランスで。スタジオの中で編集途中を初めて見たので、そのときは吹き替えではなかったですが、シナリオは何となく頭にあったので、これはいい出来だなと。その後さらに日本の吹き替え版も見て、結構吹き替えって違和感が出ることがあるのですが、特に外国映画や中国映画って吹き替えが結構難しくて。その人がしゃべってるように聴こえないことがあるんですが、今回はそれがなかったですね。すごく自然に聴こえました。
ーーラショーさんと北条先生はかなり綿密なやり取りをされていたんですか。
北条 シナリオ会議というか、来日されたときとフランスでのアニメイベントに一緒に登壇するときの2回なんですが、僕は安心してましたね。この人なら大丈夫だろうと。
ーーラショーさんもご自分のアイデアは先生に伝えていたんですか。
ラショー 脚本を北条先生に読んでいただいて、それでコメントしてくださったんですが、アドバイスまでくださいました。そのアドバイスがとても貴重だったんです。実は最初のシナリオではああいう風なラストシーンの終わり方になっていなかったんですが、北条先生がそこで「こうしたらいいのでは」というアドバイスをいただいて。そっちにしてみたらうまくいって、先生はやっぱり確かだなと感じました。
ーー神谷さんがすごくうなずいていらっしゃいますが、先程の舞台挨拶でも「シティーハンター愛がビンビンに伝わってくる」とおっしゃっていましたよね。
神谷 僕実際にこの作品を拝見したときに、「あ、獠ちゃんがいる」って思ったんですよ。全く香にもそういう印象を受けまして。見ていくにつれ、どんどん引き込まれていきました。本当にラショー監督は『シティーハンター』が好きなんだなということが伝わってきて、それは同じ作品と言っていいのかわかりませんが、アニメーションの声を担当していた者にとっても、これだけ愛してくださっている人がいるということはうれしいことでした。
ラショー ありがとうございます。僕自身、間違っていたら申し訳ないんですが、フランスは日本の漫画の読者が一番多い国じゃないかなと思ってるんです。私自身も『シティーハンター』と共に大きくなったので、それまでに何度か何かが実写化されると、それがアメリカ映画だったり中国映画だったりすると、あまり忠実じゃない印象を受けました。ですから今回私が頑張ろうと思ったのは、「元々の『シティーハンター』のファンの人を裏切らない」。僕が他の漫画やゲームが実写化されてがっかりしたという思いを絶対させないぞ、という思いで今回作りました。
ーー北条先生からしてもこの作品をご覧になって「ここまでやってくれたのか」と思ったシーンなどはありましたか。
北条 『シティーハンター』では獠の真面目なモノローグがないんですよね。だから漫画を読んでる限りでは、彼の心情はわからないんです。彼が香のことをどう思ってるのかは、さっぱりわからないんですよね。それを代弁する人間が獠を見ていて「きっとこうだよ」って言うパターンがすごく多いんですが、それができてる。ラストも踏襲しているというか、あれはいいラストでしたね。
ーー監督におうかがいしたいんですが、ラブシーンや銃撃シーンがフランスで放送されたアニメでは規制がかかっていたということですが、「もっこり」はどう表現されていたのでしょうか?
ラショー 本当にコアなファンだけだと思いますよ。「もっこり」というのはコアなファンにしかわからないと思うので、あえてわかるようにするために、そこの表現はMr.モッコリの裸のシーンを出したりしていましたけど、今回の作品はいろいろな目配せがあるんです。コアなファンにしか微笑んでもらえない部分とかあると思うのですが、例えばフランスで放送されたテレビアニメ版で主題歌を歌ってる方が出演していたり。そういうフランス的なところは日本の方には届いていないかもしれません。
神谷 実際のところ、日本語で「モッコリー氏」という名前がついちゃうと、これはもしかしたら日本で独自に付けたかなって思われるかもしれませんが、あれは原作でも「Mr.モッコリ」なんですよね。フランスで「もっこり」をどう表現していたのかなってすごく興味があったんですが、カットされていたっていうのは初めて知って、ちょっと残念ですね。
北条 「もっこり」ですが、絵的にもっこりを表現してるのは漫画原作だけなんですよね。アニメではしてないんです。だからそれを省いても吹き替えには全然滞りがないわけです。美女のことを「もっこりちゃん」って神谷さんが言い始めたわけですから。
ーー神谷さんが「もっこりちゃん」って言い始めたんですか。
神谷 書いてあったから言ったと思うんだけどなぁ。そういうことにしていただけると……。アメリカのコンベンションに行ったときに、僕が「もっこり」を連呼したんですね。冴羽遼のセリフで。そうしたら通訳の女性が真っ赤になって通訳できなくなっちゃって。
合同会見では、「もっこり」の話題が盛り上がってしまいましたが、次の日に行われた監督のインタビューでは、監督のパーソナルな部分もお聞きした。これだけ『シティーハンター』愛に溢れ、北条先生に「この手があったか!」と言わせてしまったラショー監督は、どんな方なのだろうか。
ーー『シティーハンター』以外に、に子供の頃に観ていたアニメーションはありますか。
ラショー 『キャプテン翼』『聖闘士星矢』『ドラゴンボール』『北斗の拳』あとは『ハイスクール!奇面組』『らんま1/2』。『クラブ・ドロテ』という番組があって、そこでガンガン日本のアニメを放送していたんです。『セーラームーン』もそうだね。国のテレビ局なんですが、その中でもキー局が流していました。
ーーランジェリーショーの場面で、ジェシカのSNSを見ている人の中に某仙人がいましたよね。
ラショー 目配せいっぱいです。権利の問題で名前は出せませんが、他にも色々います。だからご自由に解釈してください(笑)。
ーー日本のアニメーションを見てきた中で、監督に影響を与えたことはどういうところですか。
ラショー 漫画家になりたいと思わせてくれました。まだ今でも絵はうまいですよ。『北斗の拳』風の漫画でしたね。でも実は映画を作りたいという思いもあって。なぜかというと、フランスではコメディというのが大きなジャンルで占めていて、コメディをいつか作りたいと思っていたんです。でも漫画家にもなりたい、ふたつの夢の間で揺れていました。漫画も実は僕の長編処女作があります。『真夜中のパリでヒャッハー!』では主人公は漫画家なんです。
ーー体を鍛えて8キロつけたということですが、冴羽獠を演じる上で難しかったところはありますか。例えば銃の構え方だったりとか。
ラショー 見かけを似せることももちろん大変で。実は今までの作品は俳優としても自分が監督としてやったにせよ、全部コメディだったんですよね。なので今回はアクションも入っているということで、格闘の練習もしましたし、銃器の使い方も練習しましたし、それは僕にとってはチャレンジでしたね。コメディばっかりでしたから。自分をトム・クルーズだと思いながら楽しみながらやっていました。
ーー銃の扱いが格好よかったです。
ラショー ありがとうございます。
ーー約1時間半の作品の中で、槇村のシーンやガラス越しのシーン、原作『シティーハンター』の最初から最後までの要素を詰め込んだシナリオになっていると思います。世界観を作り上げていく中で、気をつけたところはありますか。
ラショー できるだけ忠実にしたかった。全て漫画と同じカット割りを作って撮影しました。槇村が死ぬシーンのカット割りもそうです。そういうのを取り込むこと自体は難しくなくて、そういうシーンは今回語りたかったストーリーにとても合致していたし、楽しんでやっていましたね。
ーー子供のころ、おもちゃは持っていましたか。
ラショー 『聖闘士星矢』のおもちゃでしたね。全部。両親にお願いしましたね。一緒に遊びました。まだ持ってるよ。
ーーこの作品からもフィギュアとか出るといいですね。
ラショー 頼んでみます。アリガトウゴザイマス。
ーーラショー監督から『シティーハンター』の映画化について最初にコンタクトがあったときのお気持ちと、実際に脚本を読んだときのお気持ちを教えて下さい。
北条 フランスで『シティーハンター』が結構人気があると聞いていたので、フランスからの映画のオファーが今まで来なかったのが不思議というか、ちょっと心待ちにしていたところがどこかありまして。今回ようやく来たかっていう感じです。そうしたらフィリップ・ラショー監督だったので。おもしろおかしい映画かと思っていたのですが、脚本を読んだら本当によくできていたんですよ。本当に『シティーハンター』としか思えなかった脚本だったので、これは一も二もなく「やってください」っていう感じでお願いしました。
ーーラショー監督は、最初に北条先生にオファーを出したときのお気持ちはいかがでしたか。
ラショー すっごくストレスを抱えていました。圧倒されていました。初来日で北条先生にお会いできるんですからね。この滞在を終えて日本を離れるときは、おそらく最高に幸せな男だったんじゃないかなって思います。滞在中に「これいいよ」って言っていただけたので。
ーー北条先生は冴羽獠を演じるラショーさんにお会いになったときに、どう思われましたか。
北条 『ヒャッハー』シリーズしか見てなかったので、どんな方か想像がつきませんせした。映画を観る限り、きっちりとどんどん整理していく感覚というか、頭のいい方なんだろうなと思っていました。実際お会いしたら、見た目はすごく格好よかったですし、思った通り、頭のいい方だなと思いました。
ーー今の北条先生のお話を受けていかがですか。
ラショー 最初は冴羽獠のイメージと僕は結構かけ離れていると思ったんですよね。髪の毛もブロンドですし。でもこのために髪を黒に染めて、筋トレも一生懸命しました。最大限の準備をしてできるだけ冴羽獠に近づこうと思って努力をしました。
山寺 元々いい体なのにさらにやったんですね。
神谷 すごく美しいと思いました。
山寺 香水つけてない?
神谷 大丈夫、つけてない(笑)。
ラショー 私の今までの作品の時期と今回で、8キロくらい筋肉の量が増えましたね。卵を大量に食べました。
ーー山寺さんは神谷さんが今までやってきた冴羽獠役をご自分がやることの感慨深さ、二十代の頃に共演されていたと思いますが、その頃にどのように神谷さんが演じる冴羽獠を見ていましたか。
山寺 もう、本当に憧れでした。神谷さんが演じられているのをずっとこう、後ろから背中を見ていて。こういう声優になりたい、神谷さんみたいになりたい、こういう役がやりたいとずっとずっと思っていて、帰っては練習をしてみて「違うな」みたいな。今回のお話をいただいて、冗談じゃないと、神谷さんがやるべきだと。「神谷さんがやるべきです!」とお会いしたときに言おうと思ったときに、「山ちゃんやってよ」っておっしゃってくださって。神谷さんにそうおっしゃっていただけなければ、今この場に立っていないので。本当に背中を押してくださり、話をしてくださってありがとうございますっていう感じです。本当に感謝をしたいです。
神谷 実は最初にオファーをいただいて、とってもおもしろい作品だったので、自分でやろうかなと思ったんですけれど、台本を読んでみると、相当無理をしなければできないと思ったんですね。アニメーションでは絵が動くものですから、そういう意味では自由度が高いんですよ。ところが実際の俳優さんが演じている場合、それを日本語としていきいきとして見せなければいけない。そういう意味では自分では無理をしなといけない。やる以上は責任がありますから、自分で無理だという風に結論を出しました。じゃあ誰がいいだろうと思ったときに、僕には山ちゃんしかいなかったんですよね。そうしたら制作会社さんから山寺さんにしようと思う、というお話を聞いて、「よかった」って思ったのがまず最初で。『シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』の打ち上げでお会いした時に、山ちゃんからの話を聞く前に「山ちゃん、頼むよ」と、僕のほうからお願いしてしまったというのが事実です。実際の仕上がった作品を見て、「当然」と思える素晴らしい仕上がりを見て、我が目に狂いがなかったと今でも思っています。
山寺 神谷さんからそのお話をいただいた時、『新宿プライベート・アイズ』の打ち上げだったにも関わらず、全然酔えませんでした。北条先生もどう思われるんだろうと思いましたし。そしてなんとその『プライベート・アイズ』のフランス語吹き替えには、ラショーさんが三國役を演じてらしたということで、ご縁を感じていました。
ーー北条先生は山寺さんだという話を聞いていかがでしたか。
北条 頑張ってほしいと心から思いました。でも山寺さんなら大丈夫だろうって、やっぱり思いますよね。
神谷 実際に最初の試写を北条先生と見せていただいて、ふたりでうなずき合いましたからね。「よしよし」「しめしめ」みたいな。全ての吹き替えを担当してくださった声優さんたちが素晴らしくて。そういう意味でもいい作品に仕上がってよかったなって思いました。
ーー北条先生は出来上がった作品を一番最初に見たときにどう思われましたか。
北条 僕が最初に見たのはフランスで。スタジオの中で編集途中を初めて見たので、そのときは吹き替えではなかったですが、シナリオは何となく頭にあったので、これはいい出来だなと。その後さらに日本の吹き替え版も見て、結構吹き替えって違和感が出ることがあるのですが、特に外国映画や中国映画って吹き替えが結構難しくて。その人がしゃべってるように聴こえないことがあるんですが、今回はそれがなかったですね。すごく自然に聴こえました。
ーーラショーさんと北条先生はかなり綿密なやり取りをされていたんですか。
北条 シナリオ会議というか、来日されたときとフランスでのアニメイベントに一緒に登壇するときの2回なんですが、僕は安心してましたね。この人なら大丈夫だろうと。
ーーラショーさんもご自分のアイデアは先生に伝えていたんですか。
ラショー 脚本を北条先生に読んでいただいて、それでコメントしてくださったんですが、アドバイスまでくださいました。そのアドバイスがとても貴重だったんです。実は最初のシナリオではああいう風なラストシーンの終わり方になっていなかったんですが、北条先生がそこで「こうしたらいいのでは」というアドバイスをいただいて。そっちにしてみたらうまくいって、先生はやっぱり確かだなと感じました。
ーー神谷さんがすごくうなずいていらっしゃいますが、先程の舞台挨拶でも「シティーハンター愛がビンビンに伝わってくる」とおっしゃっていましたよね。
神谷 僕実際にこの作品を拝見したときに、「あ、獠ちゃんがいる」って思ったんですよ。全く香にもそういう印象を受けまして。見ていくにつれ、どんどん引き込まれていきました。本当にラショー監督は『シティーハンター』が好きなんだなということが伝わってきて、それは同じ作品と言っていいのかわかりませんが、アニメーションの声を担当していた者にとっても、これだけ愛してくださっている人がいるということはうれしいことでした。
ラショー ありがとうございます。僕自身、間違っていたら申し訳ないんですが、フランスは日本の漫画の読者が一番多い国じゃないかなと思ってるんです。私自身も『シティーハンター』と共に大きくなったので、それまでに何度か何かが実写化されると、それがアメリカ映画だったり中国映画だったりすると、あまり忠実じゃない印象を受けました。ですから今回私が頑張ろうと思ったのは、「元々の『シティーハンター』のファンの人を裏切らない」。僕が他の漫画やゲームが実写化されてがっかりしたという思いを絶対させないぞ、という思いで今回作りました。
ーー北条先生からしてもこの作品をご覧になって「ここまでやってくれたのか」と思ったシーンなどはありましたか。
北条 『シティーハンター』では獠の真面目なモノローグがないんですよね。だから漫画を読んでる限りでは、彼の心情はわからないんです。彼が香のことをどう思ってるのかは、さっぱりわからないんですよね。それを代弁する人間が獠を見ていて「きっとこうだよ」って言うパターンがすごく多いんですが、それができてる。ラストも踏襲しているというか、あれはいいラストでしたね。
ーー監督におうかがいしたいんですが、ラブシーンや銃撃シーンがフランスで放送されたアニメでは規制がかかっていたということですが、「もっこり」はどう表現されていたのでしょうか?
ラショー 本当にコアなファンだけだと思いますよ。「もっこり」というのはコアなファンにしかわからないと思うので、あえてわかるようにするために、そこの表現はMr.モッコリの裸のシーンを出したりしていましたけど、今回の作品はいろいろな目配せがあるんです。コアなファンにしか微笑んでもらえない部分とかあると思うのですが、例えばフランスで放送されたテレビアニメ版で主題歌を歌ってる方が出演していたり。そういうフランス的なところは日本の方には届いていないかもしれません。
神谷 実際のところ、日本語で「モッコリー氏」という名前がついちゃうと、これはもしかしたら日本で独自に付けたかなって思われるかもしれませんが、あれは原作でも「Mr.モッコリ」なんですよね。フランスで「もっこり」をどう表現していたのかなってすごく興味があったんですが、カットされていたっていうのは初めて知って、ちょっと残念ですね。
北条 「もっこり」ですが、絵的にもっこりを表現してるのは漫画原作だけなんですよね。アニメではしてないんです。だからそれを省いても吹き替えには全然滞りがないわけです。美女のことを「もっこりちゃん」って神谷さんが言い始めたわけですから。
ーー神谷さんが「もっこりちゃん」って言い始めたんですか。
神谷 書いてあったから言ったと思うんだけどなぁ。そういうことにしていただけると……。アメリカのコンベンションに行ったときに、僕が「もっこり」を連呼したんですね。冴羽遼のセリフで。そうしたら通訳の女性が真っ赤になって通訳できなくなっちゃって。
合同会見では、「もっこり」の話題が盛り上がってしまいましたが、次の日に行われた監督のインタビューでは、監督のパーソナルな部分もお聞きした。これだけ『シティーハンター』愛に溢れ、北条先生に「この手があったか!」と言わせてしまったラショー監督は、どんな方なのだろうか。
ーー『シティーハンター』以外に、に子供の頃に観ていたアニメーションはありますか。
ラショー 『キャプテン翼』『聖闘士星矢』『ドラゴンボール』『北斗の拳』あとは『ハイスクール!奇面組』『らんま1/2』。『クラブ・ドロテ』という番組があって、そこでガンガン日本のアニメを放送していたんです。『セーラームーン』もそうだね。国のテレビ局なんですが、その中でもキー局が流していました。
ーーランジェリーショーの場面で、ジェシカのSNSを見ている人の中に某仙人がいましたよね。
ラショー 目配せいっぱいです。権利の問題で名前は出せませんが、他にも色々います。だからご自由に解釈してください(笑)。
ーー日本のアニメーションを見てきた中で、監督に影響を与えたことはどういうところですか。
ラショー 漫画家になりたいと思わせてくれました。まだ今でも絵はうまいですよ。『北斗の拳』風の漫画でしたね。でも実は映画を作りたいという思いもあって。なぜかというと、フランスではコメディというのが大きなジャンルで占めていて、コメディをいつか作りたいと思っていたんです。でも漫画家にもなりたい、ふたつの夢の間で揺れていました。漫画も実は僕の長編処女作があります。『真夜中のパリでヒャッハー!』では主人公は漫画家なんです。
ーー体を鍛えて8キロつけたということですが、冴羽獠を演じる上で難しかったところはありますか。例えば銃の構え方だったりとか。
ラショー 見かけを似せることももちろん大変で。実は今までの作品は俳優としても自分が監督としてやったにせよ、全部コメディだったんですよね。なので今回はアクションも入っているということで、格闘の練習もしましたし、銃器の使い方も練習しましたし、それは僕にとってはチャレンジでしたね。コメディばっかりでしたから。自分をトム・クルーズだと思いながら楽しみながらやっていました。
ーー銃の扱いが格好よかったです。
ラショー ありがとうございます。
ーー約1時間半の作品の中で、槇村のシーンやガラス越しのシーン、原作『シティーハンター』の最初から最後までの要素を詰め込んだシナリオになっていると思います。世界観を作り上げていく中で、気をつけたところはありますか。
ラショー できるだけ忠実にしたかった。全て漫画と同じカット割りを作って撮影しました。槇村が死ぬシーンのカット割りもそうです。そういうのを取り込むこと自体は難しくなくて、そういうシーンは今回語りたかったストーリーにとても合致していたし、楽しんでやっていましたね。
ーー子供のころ、おもちゃは持っていましたか。
ラショー 『聖闘士星矢』のおもちゃでしたね。全部。両親にお願いしましたね。一緒に遊びました。まだ持ってるよ。
ーーこの作品からもフィギュアとか出るといいですね。
ラショー 頼んでみます。アリガトウゴザイマス。