(※写真はイメージです/PIXTA)

写真拡大

総務省の調査で過去最多となる40万件超を記録した「移住相談」。しかし、移住後に地域特有のルールや濃密な人間関係に馴染めず、孤立してUターンするケースも決して珍しくはありません。家賃2万円という安さに惹かれて移住したケンタさん(仮名・33歳)もその一人です。最初は地方でのスローライフに期待を寄せていましたが、実際に住んで数ヵ月が経つと、徐々に違和感を覚えるように……。

過去最多を更新する「移住相談」…その裏で直面する“転居による孤独感”

総務省が発表した「移住相談窓口等において受け付けた相談件数」によると、令和5年度に全国の窓口等で受け付けた移住相談は40万8,435件に上り、過去最多を更新しました。テレワークの普及などにより、働き方や住む場所の選択肢が広がったことが相談数増加の背景にあると推測できます。

しかし、移住への関心が高まる一方、見知らぬ土地での生活に馴染めず、孤立してしまうケースも少なくありません。

内閣府の「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)」では、現在の孤独感に影響を与えたと思う出来事として「転居」を挙げた人が、8.8%に上ることが示されています。地方移住は住環境を大きく変える魅力的な選択肢ですが、その地域特有の文化やコミュニティとの相性を見誤ると、かえって精神的な負担や予期せぬ出費に見舞われかねないのです。

地方移住を決断した結果、都市部へUターンした30代男性の事例を見ていきましょう。

「まさか罰金があるなんて…」家賃2万円に惹かれて地方移住した33歳会社員が直面した“文化の違い”

「まさか、草刈りを休んだだけで“罰金”を取られるなんて……」

都内のIT企業でフルリモート勤務をしているケンタさん(仮名・33歳・独身)。年収は600万円ほどで、数年前に都市部から車で1時間ほどの町へ移住しました。きっかけは、仕事のオンライン化によって、どこに住んでも働けるようになったことでした。インターネットで見つけた月額2万円という格安の賃貸物件に惹かれ、地方移住を決断したそうです。

「浮いた家賃で貯金も捗るし、自然に囲まれてスローライフを送れるなんて最高だ!」

移住当初は、静かな環境と家賃の安さに満足していました。しかし、数ヵ月も経つと、地域特有の人間関係と独自のルールに直面することになります。

町では定期的に共有地の草刈りや清掃活動が行われており、住民の参加が事実上の義務となっていたのです。

ケンタさんが仕事の疲れで休日の草刈りに参加できなかったある日、地域の役員が自宅を訪ねてきました。そこで、不参加の場合はペナルティとして、「出不足金」と呼ばれるお金を1回につき3,000円支払わなければならないと告げられたのです。

「そんなの聞いていないのですが……。どうしても払わなきゃダメなんですか?」

「もう無理、限界…」地域との“価値観のズレ”に悩み、都市部へUターン

草刈りだけでなく、季節ごとの祭りや町内行事への参加も求められました。そして、「寄付金」や「協賛金」という名目で徴収されるお金もあり、計算してみると年間で数万円の出費に。

浮いた家賃分が、そのまま地域の付き合いや罰金に消えていく状況に、ケンタさんは理不尽さを覚え始めました。

「地方移住ではご近所付き合いが大切だと、ネットでも調べたからわかっていた。でも、プライベートの時間をこんなに差し出さないといけないなんて……」

休日のたびに地域の行事に参加し、「仕事で忙しい」と断れば「都会育ちは冷たいね」と返され、次第にケンタさんの心をすり減らしていきました。

「思っていた生活と違う……。もう無理、限界だ……」

結局、ケンタさんはその地域特有の人間関係に耐えきれず、都市部へUターンすることを決断しました。家賃の安さというメリットだけを見て、そこに住む人々の暮らし方やルールを確認しなかったことを、後悔しているそうです。

[参考資料]

総務省「移住相談窓口等において受け付けた相談件数(令和5年度)」

内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)」