ロシアのプーチン大統領=22日、モスクワ/Maxim Shipenkov/Pool/Reuters

CNN)ウクライナへの全面侵攻開始から4年を経て、ロシアは不満に満ちた春を迎えている。

同国都市部で断続的に起きるネット遮断は一般市民の神経を逆なでし、プーチン大統領に対する反発が公に表面化しつつある。

ロシアは治安当局が抗議活動を抑え込みながら、戦時下の経済的苦難を乗り切ってきた。そして中東での紛争は原油価格の上昇を通じ、ロシアの戦争遂行に思いがけない追い風をもたらした。

それでも、ロシアの国家機関は抑圧的な動きを強化しようとしているようだ。ここ数週間、法執行当局は政治的な意味合いの強い逮捕や強制捜索を新たに着手している。これと並行して、ロシア政府はソ連時代の亡霊をよみがえらせてもいる。

直近の例では21日、ロシア連邦捜査委員会の当局者が国内最大規模の出版社エクスモに対する強制捜査に踏み切り、職員らを拘束した。当局が「LGBTQプロパガンダ」の事案だとして1年にわたり実施した刑事捜査を受けたものだった。

エクスモは、若者向け小説を刊行していた「ポップコーン・ブックス」を所有していたが、その刊行物の一つ「Summer in a Pioneer Tie」が特に当局の目を引いたようだ。2021年にベストセラーとなった同作は、ソ連時代のサマーキャンプで出会ったクィアの少年ふたりの恋愛を描いた物語。

当局は昨年、ポップコーン・ブックスに関係する複数の人物を拘束。同出版社は1月に閉鎖された。

プーチン体制のロシアは、危険な西側思想とみなすものに長く敵対してきた。プーチン氏は自らを伝統的価値観の擁護者と位置付けている。

ロシア最高裁は23年、同国当局が言うところの「国際的なLGBTQ運動」を過激派組織と宣言し、LGBTQ活動に重い刑事罰を科す可能性を示した。エクスモの件でいえば、出版行為にもその罰則が及ぶようだ。

ロシア国営タス通信は、エクスモ幹部らが取り調べ後に保釈されたと伝えたが、ロシアで表現の自由の余地が狭まっているのは出版業界にとどまらない。

警察は今月初め、独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」の事務所を家宅捜索した。同紙の共同創設者は21年にノーベル平和賞を受賞している。

ロシア国営RIAノーボスチ通信は内務省の話として、オレグ・ロルドゥギン記者が個人情報の違法な取り扱いをめぐる刑事事件に関連して事情聴取のため拘束されたと報じた。ロルドゥギン氏は審理を前に無罪を主張した。

この事案がもたらす萎縮効果は明らかだ。

ノーバヤ・ガゼータは22年に始まったウクライナ侵攻後、紙面版の休刊を余儀なくされながらもオンラインでの発信は続けているが、今回の家宅捜索は、ロシアに残る報道の自由をさらに狭めている。

ロシアで独立系の報道を共有することはすでに難しい。政府はフェイスブックやインスタグラムなど人気SNSを禁止。デジタルサービスの標準的なポータルとして、国が管理するメッセージアプリ「マックス」を国民に押し付けようとしている。そしてノーバヤ・ガゼータへの家宅捜索が行われた日は、ロシア最高裁が著名な人権団体「メモリアル」を「過激派」に指定したのと同日だった。

ボルカー・ターク国連人権高等弁務官は声明で、この指定はロシア国内の「重要な人権活動を事実上犯罪化する」ものだと断じた。

報道機関への攻撃を進める一方で、当局は政治的弾圧の古典的な象徴も復活させている。ロシア連邦保安庁(FSB)アカデミーは先ごろ、ソ連秘密警察の創設者フェリックス・ジェルジンスキーにちなむ名称へと改名された。FSBアカデミーはプーチン氏がかつてKGB(国家保安委員会)工作員になるための訓練を受けた機関。

1991年にKGB本部前のジェルジンスキー像が倒されたことは、ソ連の終焉(しゅうえん)を象徴する出来事の一つだった。しかしロシア当局は、暗い全体主義的な過去を積極的に受け入れようとしているように見える。

ロイター通信の報道によると、ポーランド、エストニア、リトアニア、ラトビアの各大使館は23日、シベリアの都市トムスクでソ連秘密警察による犠牲者にささげられた記念施設が解体されたことを受け、ロシア外務省に抗議した。

しかし、ロシア政府がソ連時代の亡霊をよみがえらせ、一般国民の生活をはるかに不便なものにしているにもかかわらず、プーチン氏自身は公の場で無関心を装っている。

プーチン氏がネット遮断について沈黙を破ったのは23日。首都モスクワでは3月上旬にネットがつながらなくなっていた。

プーチン氏は「大都市で人々が直面していることにも触れざるを得ない。まれではあるが、残念ながらそうした事態が実際に起きている」とし、「大都市圏での一定のインターネット問題や接続障害のことを言っている」と述べた。

プーチン氏は、ECや多くのアプリ・電子サービスが利用できなくなるネット障害について「テロ攻撃を防ぐための作戦活動に関連している」と説明したが、それは同時に、国民が知る必要のある情報は限られていると示唆したようにも見えた。

「事前に情報を周知させることは、作戦の進展を損ないかねない。なぜなら犯罪者たちも結局すべてを見聞きしてしまうからだ」とプーチン氏は語った。

つまり戦時下の生活とは、ある程度の不便に耐えることを意味する。そしてロシアの治安機関が市民生活に対し、広げ、深めていく締め付けに、緩む気配はほとんどみられない。

本稿はCNNのネイサン・ホッジ記者による分析記事です。