ビジネス書からの学びも多く、読書の新しいカルチャーを発見することになりました。

 そこから派生して、スタートアップ界隈にあるnoteで一般の方が発信する文章も読むようになりました。noteはブログ系の記事も多いのですが、ビジネス界隈ではティップス(業務改善や生産性向上に役立つ実践的なノウハウや知見のこと)が共有されていて、さまざまな経験を学ぶいいきっかけとなり、私自身も書くようになっていきました。

◆「これでいいの?」AIの普及と読書体験の変化

 4年ほど前から、ビジネス書やnoteも読むようになり、そこから2、3年ほどはとてもいい時間だったと思います。新しい考え方に出会ったり、誰かの仕事の工夫を知ったり。文章を通して、人の思考を覗かせてもらっているような感覚がありました。

 しかし、ここ半年くらいAIがものすごいスピードで普及して、読書体験が変わってきました。ビジネスtipsの文章を読んでいても、本当に著者の中から生まれてきている文章かな? と思うことが増え、正直なところ、AI出力っぽい文章が多くなっている気がしています。

 もちろん、書いている方が持っている知見やティップスは知りたい。だから私自身も、AIに要約してもらって、必要な要素だけを受け取るようになりました。

 著者はAIを使って書き、読者はAIを使って読む。

 人と人のあいだで言葉を交わしているというより、AIを介して情報を受け渡している。なんだかふと、無味乾燥なことをしているような感じがして……(笑)。

 例えるなら、美味しいフルコースの食事を楽しむ代わりに、必要な栄養素をビタミン剤で摂取しているような感覚です。

 本来、読書というのは、その文章の空気やリズムも含めて味わうものだったはず。それなのに今は、そこから“必要な情報”という栄養素だけを取り出して、効率よく摂取している。

 そんな読み方に、いつの間にか変わってきてしまってきている。最近、そんなことを感じています。みなさんはどうでしょうか?

◆AIでは味わえない読書の本当の価値

 一方で、小説に関しては少し事情が違います。もともと私が小説好きだからかもしれませんが、小説を読むときにAIの要約を使うことはありません。

 映画にも「あらすじ動画」がありますが、私はあまり見ない派。ストーリーの間も含めて、その時間ごと楽しみたいと思っているからです。

 小説も、まったく同じ感覚で、作者が選んだ「てにをは」、行間の余白や空行。そうしたものを含めた空気感を読んで、物語に入っていきたい。だから、小説に関してはAIを通すことはしていません。

 私にとって小説とは、もうひとつの世界に没入して、連れて行ってくれる体験。それこそが、小説の価値だと思っているからです。

 ビジネス書において、私はまだ初心者です。

 私の尊敬するマーケターの南房泰司さんはビジネス書の愛読家。その南房さんがビジネス書に関して、こんなことをおっしゃっていました。

 「本当に優れたビジネス書には、そこに至るまでの著者の世界観とストーリーがある」

 ビジネス書というと、つい“ノウハウのまとめ”のように思いがちですが、名著と呼ばれるものには、そこに至るまでの思考や物語がきちんと流れているのだそう。

 だからこそ、南房さんは、本当にいいビジネス書は電子ではなくて、紙で読んでいるとも話していました。

「紙をめくる手触りや、本のつまり具合とかを含めて、著者の脳内世界を体験できる」

 その言葉を聞いて、納得しました。

 小説であってもビジネス書であっても、ただ情報を受け取るだけではなく、著者の思考の旅を一緒にたどる。

 これもまた読書の価値のひとつなのだと感じました。