「坂道で暴走」「ブレーキ効かず」…万博EVバス約200台が行き場を失い「大阪・森ノ宮」に山積みの訳 現場から悲鳴も
近い将来、約200台が集結する「EVバスの墓場」になる?
2025年10月の大阪・関西万博閉幕から数ヶ月。
大阪・森ノ宮にある広大な敷地に、万博輸送を担った約200台ものEVバスが続々と集結し、異様な光景を作り出しています。
【画像】これが「バスの墓場」です。画像で見る!(30枚以上)
本来、点検を経て次の役割を担うはずだったこれらの車両は、なぜ「EVバスの墓場」となる懸念を抱かれているのでしょうか。
その背景には、相次ぐ不具合やリコール、さらには度重なるトラブルによるフェリー会社からの事実上の「乗船拒否」という衝撃的な事情がありました。
行き場を失いつつある万博バスの現状と、安全性への懸念から全国のバス事業者で勃発している「使用継続」を巡る深刻な対立とは、どのようなものなのでしょうか。
2025年12月下旬、大阪・森ノ宮にある大阪メトロ所有の広大なスペースに万博ラッピングのEVバスが続々と集まり始めました。
筆者(加藤久美子)が現地に出かけた2026年1月4日時点ではEVモーターズ・ジャパン(以下、EVMJ)が輸入販売してきたウィズダム大型(10.5m 路線バス-210kWh F8)が50台。
同じくe Moverなどに使われた小型(6.99mコミュニティバスF8)が20台という状況でした。
小型は2025年11月28日に国交省へリコールが届出されているため、リコール作業が終わったバスからこの場所に移送されています。
最終的には、森ノ宮のこの場所に大阪メトロが使用してきた合計190台のEVバスが集まると考えられます。
実は大量のEVバスがこの場所に集まる前は11月頃から大阪府泉大津にあるスペースに大型約50台が留置されていました。
なぜ泉大津なのでしょうか。実は泉大津に停められていたのには興味深い理由がありました。
大阪万博は10月13日に閉幕し、その翌日から約150台の万博輸送バスは大阪シティバスの駐車場などに置かれていました。
その後、EVMJの北九州本社に運んで再度点検を受ける予定だったのでフェリーで運ぶために泉大津港に近い場所に停められることになったのです。
EVMJの南港サービスセンターや大阪シティバスの営業所から北九州まで多くのバスを名門大洋フェリーの発着港である「大阪南港」が便利です。
しかし、集められたのは新門司行阪九フェリーの乗り場である「泉大津港」の近く。
実は、EVMJは2025年3月に名門大洋フェリーの出航を2時間以上遅らせるトラブルを複数回起こしていました。
それで非公式ではありますが、名門大洋フェリーとしては「EVMJのバスをフェリーに載せることはご遠慮いただきたい」という内々のお達しがあったのです。
なお名門大洋フェリーも阪九フェリーも現在はバスを含むEV車両の「無人航送」は受け付けていませんが、有人航送は従来通り可能となっています。出航が遅れたときには2回とも「有人航送」でした。
そして泉大津から森ノ宮に移動した理由は、「EVMJとの協議の中で北九州に送り返して点検する予定が不確定になった」こととされています。そして、12月下旬に泉大津から森ノ宮への移動が始まりました。
なお、1月27日に名門大洋フェリーから上記内容について「事実と異なる」との連絡をいただきました。
また「EVバスが原因で出港遅れの事実はない」とのことですが、筆者はフェリー遅延で出禁状態になっていることがわかるメールを複数の関係者(陸送会社、EVMJ社内、バス会社など)から受け取っています。
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この場所に置いてあるEVバス達の今後が気になりますが、このまま「EVバスの墓場」になるのでしょうか。
大阪メトロは「今後は未定」としていますが、不具合が多く発生しているこれらのバスの安全性を完璧に担保することは困難と言えそうです。
また当初予定されていた路線バスとしての使用も「自動運転実証実験車両としての使用もおそらくなくなるであろう」と、関係筋は予想しています。
全国のバス事業者では、「使う・使わない」の新たな戦いが始まっている?
2019年春に設立されたEVMJは2022年に納車した3台に始まり、実質約2年で300台以上というありえないスピードで中国製EVバスを全国のバス会社や自治体に納入してきました。
大阪・関西万博関連では190台もの電気バスを一社独占で受注し業界を驚かせました。
というのも、万博向けの大量受注が決定した時、同社はまだ1台も納入実績がなく完全に無名の会社だったからです。
万博への大量受注が内定した2021〜2022年頃、「2023年中には新設する北九州の工場でEVバスを生産する」とアピールしており、「国産EVバス」を強力に推したことで多額の政府助成金や中小機構の債務保証、環境省や官公庁の各種補助金の入手に成功してきました。
しかし、2025年春に本社と工場は完成したものの、2026年になってもまだ1台もこの工場での生産は行われていません。
テストコースなどを含む総額100億円の「ゼロエミッションパーク」の建設も2025年秋から中断しています。
ちなみに、「国内で組み立てをしたから国産EVバスメーカーになれる」というものではありません。
EVMJが自動車メーカーとして認可を得るにはISOの取得をはじめ数々の非常に高いハードルがあります。
結局、同社がこれまで販売してきた300台以上のEVバスはすべて、中国の3つのバスメーカー(ウィズダム・恒天・愛中和)に激安で作らせた粗悪なバスをほぼそのまま輸入しています。
ちなみに、日本での新規検査や登録に必須のUN認証も一部は取得しないままナンバーがついていますが、だからと言って価格がとても安いということはありません。
BYDやアジアスター、アルファバスなど高品質と手厚いアフターで知られる他の中国製EVバスと比べると価格は1.5〜2倍近い高価格。
ほぼ強制的に購入させられる充電器も他社製に比べて価格は2倍以上、不具合も多数でています。
万博での事故報道や筑後市スクールバスが開始2週間で4台すべて使用中止になった事案がきっかけになり国交省にはEVMJバスの不具合情報が多く寄せられました。
そこで国交省は2025年9月上旬に全国317台のEVMJバスに対して総点検を行う指示を出し、その結果、317台中113台にそれぞれ複数の不具合が明らかになっています。
特に危険度が高いブレーキホース(ウィズダム小型85台対象)については2025年11月28日に国交省へリコールの届出がされEVMJが費用を負担する無償改修の作業も進んでいます。
しかしリコールを出したからそれで終わりということでは全くありません。
ブレーキホース以外も多数の不具合があり、中には大事故につながる危険な不具合も多数あります。
このような状況で発生しているのがEVMJバスの「使用・不使用」をめぐる紛争です。

筆者のところにはEVMJバスに日々乗務している乗務員や運行管理者から10件以上の悲痛な要望が以下のように届いています。
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「常務するのがとても苦痛。何かあったときにお客様の安全を守れない不安でいっぱいです。しかし、事業所にこの状況を伝えてもバス使用を止める気配が全くありません」
「フル乗車では8%程度の坂を上れず、止まって動かなくなったことが数回。お客様はその場でおろしてディーゼルのバスに乗り換えてもらいました。EVMJは対応すると言って結局何も対応してくれません。バス会社の方針なので使うしかないですが正直乗りたくありません。ブレーキが効かなくなることも何度かありました」
「坂道で暴走したりブレーキが効かなかったりそのほか恐ろしい不具合が多数あり、2年近く前から使用を止めるよう市交通局に何度も要望してきましたが、まったく聞き入れられません。『EVMJが全数検査をして問題ないと判断しているから、当市としてはこれからもEVMJバスを使い続ける』としか言わない。乗務員や乗客の安全を何だと思っているのでしょう?」
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バスに限ったことではありませんが、公共交通の利用者は一般的にバスのメーカーやブランドを選んで乗ることはほぼ不可能です。
多くの人命を預かるバスという乗り物の安全性についてEVMJバスを導入しているバス事業者は、EVMJの言葉だけをやみくもに信じるのではなく、「乗客や乗務員の安全を確保するには何が一番大切なことなのか?」を考えていただきたいと思います。

