自分の「ランボルギーニ」作ろう モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(1) 思春期憧れの1台へ
17歳で小さなスポーツカーを自作
自分が思春期に憧れていた1台、モンテヴェルディ・ハイスピード 375Lで夢見心地のドライブを想像していた。しかし、グレートブリテン島の田舎道は幅が狭い。V8エンジンの排気量は7.2Lもある。興奮と不安が同時にのしかかり、現実へ引き戻される。
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夢ははかない。自分が勝手に心へ描いた、肯定的なイメージに過ぎない。ボディは素晴らしくエレガント。ケタ違いの希少性が、特有の威厳を滲ませる。

モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(1969〜1976年/オーストラリア仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
ペーター・モンテヴェルディ氏は人並み外れた行動力の持ち主だったが、晩年は激昂する姿が強い印象を残した。社交的で温厚な人物だったと、往年を振り返る人もいる。少なくとも、スイスの自動車産業を支えた1人であることは間違いない。
1934年にスイス北部のバーゼルで生まれた彼は、トラックを中心に扱う小さなガレージを営む父から、大きな影響を受けた。学校に通いつつ、放課後はトラック工場でアルバイト。17歳で、フィアット1100がベースの小さなスポーツカーを自作している。
ポルシェ・エンジンのF1マシンを製作
23歳で父から経営を継ぐが、トラックの修理からスポーツカーのチューニングへ、事業は徐々にシフト。順調に規模は拡大し、バーゼルのオーバーヴィラー通りにMBM(モンテヴェルディ・バーゼル・モーターズ)社を創業し、独自モデルの生産を始める。
恐らく、MBMで最も有名な1台はトゥーリズモだろう。ボックスセクション・シャシーにフォード由来の997ccエンジンを積み、英国のヘロン・プラスティック社製ボディを搭載した、初代ロータス・エリート似の2シーターだ。

モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(1969〜1976年/オーストラリア仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
MBMは、スイス初といっていい、ポルシェ・エンジンを積んだF1マシンも製作している。グランプリへの参戦は1961年のみで、ポイントは得ていないが。ちなみに1990年にも1度、モンテヴェルディ・オニクスの名でF1へ復帰している。
ドライバーとしての技術も低くはなかったが、1961年にドイツ・ホッケンハイムでクラッシュ。大きな怪我をしたことで、ランチアとBMWを扱うディーラー業へ専念することを、一度は決意したようだ。
自分の「ランボルギーニ」を作ろう
そこから、高級グランドツアラーを作ろうと考えた経緯は、ペーター自身や関係者が口にした物語へ依存している。1954年にフェラーリを購入した彼は、部品を入手するため何度もイタリアへ向かった。その流れで、正規ディーラーとして承認されたらしい。
しかし、関係はすぐに悪化した。取引を続けるには100台を前払いで購入する必要があると、通告を受けたという。これを聞いたペーターは憤慨し、自分の「ランボルギーニ」を作ろうと決めたのだとか。かくして、フェラーリのライバルになった。

モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(1969〜1976年/オーストラリア仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
真実は定かではない。時系列も整合性が怪しい。とはいえ、モンテヴェルディ・ハイスピード 375Sは1967年のドイツ・フランクフルト・モーターショーで発表される。
スタイリングは、自身によるものだとペーターは主張したが、これを知ったピエトロ・フルア氏は納得しなかっただろう。彼のカロッツェリア、フルア社が実際には関わっていたのだから。後に両社は揉め、フィッソーレ社のボディへ置き換えられている。
7.2L V型8気筒で375ps 0-400m 14.6秒
1969年には、2+2シーターのハイスピード 375Lを発表。コンバーチブルのハイスピード 375Cと、4ドアサルーンの375/4が続いた。エンジンは7.2LのV型8気筒で、最高出力は375psがうたわれた。ただし、実際は300ps程度だった。
ボディはスチール製で、シャシーは角パイプを組んだ堅牢なもの。サスペンションは前がダブルウィッシュボーン式で、後ろはド・ディオン式。コイルスプリングとダンパー、アンチロールバーという一般的な構成といえた。

モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(1969〜1976年/オーストラリア仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
AUTOCARは375Lへ試乗し、「燃料タンクに不備があり、荷室へガソリンが漏れ、強烈な匂いが漂っていました。燃料計は不調で、サイドブレーキは効かず、リアのブレーキパッドは、5000km程度で摩耗しました」。と、望ましくない状態を伝えている。
加速テストでは、スロットルが全開状態で固着。ステアリングを回し切ると、補機ベルトがプーリーから外れたという。モンテヴェルディ側は、初期不良だと主張したが。
その試乗記では、素晴らしい動力性能と運転体験へ触れられてもいる。最高速度は244km/hを計測。0-400mダッシュは、14.6秒でこなしたという。
この続きは、モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(2)にて。
