「日本3大音楽フェス」関係者だけが知っている歴代ベストシーン:SUMMER SONIC編
2000年にスタートした日本を代表する都市型フェスティバル「SUMMER SONIC」東京・大阪で2日間に渡って開催され、日ごとに出演者を総入れ替えする形式。これまでに国内外の著名アーティストが数多く出演し、ロック、R&B、ヒップホップ、ダンスミュージックからアイドルまで、多種多様なラインナップも特徴となっている。今回は運営会社スタッフ2名の「証言」を掲載する。
※この記事は6月25日発売の「Rolling Stone JAPAN vol.03』に掲載されたものです。
INTERVIEW:Yoshinari Hirayama
2003年のレディオヘッドが今のサマソニの原点
2001年に株式会社クリエイティブマンに入社し、それ以降東京のサマソニを見続けているという平山さん。2000年に富士急で行われた第一回もお客さんとして観に行き、もともと90年代のUKロックが好きだったというだけに、まずは今も語り継がれる初期サマソニの名シーンを挙げてくれた。
「2003年はサマソニの歴史を振り返ったときに必ず出てくる年で、大きかったのがレディオヘッド。サマソニを立ち上げるにあたって、それまでクリエイティブマンが来日公演を手掛けてきたアーティストをぜひヘッドライナーとして迎えたいと思っていたんです。中でもレディオヘッドは念願だったアーティストの一つで、ただでさえ思い入れが強かったし、あと皆さんご存知の通り、最後に”Creep”をやって、伝説的な年になったなと。ビジネス的にも成功(初めてチケットが完売)して、その後のサマソニの原点とも言える年になったと思います」

今もなお伝説として語り継がれる2003年のレディオヘッド。アンコールのラストに当初セットリストには載っていなかった「Creep」をサプライズでプレイし、メモリアルなステージとなった(©SUMMER SONIC All Rights Reserved. )
続いて平山さんが挙げてくれたのは、観客総動員数が20万人を突破した2007年。カサビアン、ブロック・パーティー、ザ・フラテリスなど、00年代におけるUKロックの勢いを物語るラインナップがMARINE STAGEに並ぶ中、あのバンドがヘッドライナーを飾り、「史上最年少(21歳)、デビュー最速(2年目)」という未だ破られぬ記録を作り上げた。
「アークティック・モンキーズが最年少でヘッドライナーをやったんですよね。初来日からプロモーションを担当していて、最初は代官山ユニットで、2006年はMOUNTAIN STAGEだったんですけど、『もうヘッドライナーやっちゃうんだ』っていう、成功するスピードの速さを肌で感じました。もちろん、それに見合うだけの素晴らしいステージでした」

「史上最年少(21歳)、デビュー最速(2年目)のヘッドライナー」という未だ破られぬ記録を作り上げた2007年のアークティック・モンキーズ。まだアレックス・ターナーの表情にはあどけなさが残るが、2014年に2度目のヘッドライナーを務めた際には、すっかり精悍な顔つきの男性へと変貌を遂げていた(©SUMMER SONIC All Rights Reserved. )
また、もう一日のヘッドライナーを務めたのがブラック・アイド・ピーズだったことも、サマソニの歴史を塗り替えたと言える。それまで「ロック」のイメージが強かったなか、R&Bやヒップホップを基調とするポップアクトがMARINE STAGEを大いに沸かせたことが、のちのビヨンセやリアーナ、ファレルらの出演へと繋がり、サマソニの開かれたイメージを作り上げることとなった。
「ブラック・アイド・ピーズをヘッドライナーにしたことによって、ポップス系の出演者のゲートが広がって、サマソニのキャラクターがより強固になったと思います。最初は『ロック・アクトじゃないと締まらないんじゃない?』っていう風潮があったんですけど、ふたを開けてみればめちゃめちゃ盛り上がって、みんなの認識が変わったなと。しかも、時間が押しちゃって、最後の曲をやってる途中に花火を上げなくちゃいけなくなったんですよ。でも、それが演出みたいになって、曲が終わると同時に花火も終わったのはすげえと思いました(笑)」
レジェンドたちの出演というのもサマソニの色の一つだが、クイーン+アダム・ランバートがヘッドライナーとして伝説級のステージを繰り広げた2014年には、レッド・ツェッペリンのあのヴォーカリストもまた伝説を作り上げていた。
「ロバート・プラントがMARINE STAGEでやってたときに、虹が出たんですよ。ファンがステージとは反対の方を向き出して、新曲の”RAINBOW”をやってるときで、流石だなって(笑)」

18年ぶりの来日を果たし、MARINE STAGEに虹のアーチをかけた御大ロバート・プラント。「Black Dog」や「Whole Lotta Love」など、レッド・ツェッペリンのナンバーも織り交ぜつつ、健在ぶりをアピールした(©SUMMER SONIC All Rights Reserved. )
2015年の開催も忘れ難い。ケミカル・ブラザーズとファレルという英米の顔役がヘッドライナーを務めたこの年、実は最大級の盛り上がりを作り出し、その後のラインナップにまで影響を与えていたのが、ドイツ出身の若きDJ・ゼッドであった。
「それまでMARINE STAGEでDJって考えにくかったんですけど、2015年はEDMが盛り上がってたこともあって、集客もすごくて、ヘッドライナーのファレルより盛り上がってたんじゃないかってくらいで。それもあって、2017年はカルヴィン・ハリスをヘッドライナーにしたっていう流れもあったんですよね」

ここ日本でも確かにEDM旋風が巻き起こっていることを感じさせた2015年のゼッド。翌年にはスウェーデンのアレッソが、2017年にはカルヴィン・ハリスがヘッドライナーとしてMARINE STAGEに登場したのは、彼の功績とも言える(©SUMMER SONIC All Rights Reserved. )
ロック系に始まり、ポップス系やダンス系、さらにはアイドル系と、規模の拡大に伴い、様々なジャンルに拡大して行ったサマソニのラインナップ。そんな流れも引き継ぎつつ、ノエル・ギャラガーとベックという、初期にヘッドライナー経験のある2組が再びヘッドライナーとして顔を揃える2018年は、「原点回帰」を掲げた年になるという。
「来年の20周年を見据えて、今年は原点回帰を掲げていて、どのステージを見てもすごくバランスがいいと思います。近年はエリアもジャンルも広げ続けてきましたけど、今年はもうちょっとコアな音楽ファン、サマソニのファンにきちんと届けた上で、ポップスやアイドルの要素も入れていくみたいな、そういうラインナップになってるかなと。ロック系もいるし、海外でブレイクしてるポップス系の女性アクトもいるし、チャンス・ザ・ラッパーを筆頭にヒップホップ系もいて、うまくハマったと思いますね。

平山善成
株式会社クリエイティブマンプロダクション・宣伝部部長。2001年入社。SUMMER SONICのPR、レディオヘッド、グリーン・デイ、ワン・ダイレクションなど洋楽全般の公演を担当。新人の発掘・ブッキングも行う。
INTERVIEW:Ryuhei Ando
大阪会場の楽屋エリアで目撃した数々の名シーン
安藤さんが株式会社クリエイティブマンに入社し、スタッフとしてサマソニに関わるようになったのは2006年から。メタリカが発売20周年を記念して『Master of Puppets』を完全再現し、2時間半に及ぶ伝説的なライブを繰り広げた年であり、デフトーンズ、ゼブラヘッド、マイ・ケミカル・ロマンスなど、アメリカのラウド勢がMARINE STAGEを占拠していたが、安藤さんにとって印象的だったのはイギリスを代表する3ピースであった。
「MCのサッシャさんのお付きみたいな感じで、ずっとMARINE STAGEにいたので、近い距離でライブも観れたんですけど、特にミューズのライブがすごくて。メタリカとかリンキン・パークのファンで、ミューズはそんなに入れ込んで聴いてなかったんですけど衝撃を受けました。このときのライブが話題になって、ミューズ自体が日本でも大きくなっていったので、その場を目の当たりにして、肌で感じられたっていう意味でも、すごく印象に残ってます」

富士急で行われた第一回に出演し、2006年はUSのラウド勢に囲まれながらも圧巻のステージでライブバンドとしての実力を証明。2013年には遂にヘッドライナーとして帰還と、ミューズの成功物語はサマソニとともにあると言っても過言ではない(©SUMMER SONIC All Rights Reserved. )
幕張メッセ内ではダフト・パンクやマッシヴ・アタックの出演も大きな話題を呼んだ一方、メタリカと並んでヘッドライナーを務めたのは、当時人気絶頂だったリンキン・パーク。彼らは2009年にもヘッドライナーを務め、2013年には再びメタリカとのダブル・ヘッドライナーで出演するなど、サマソニの顔というべきバンドの一つだったが、昨年チェスター・ベニントンが自殺。なお、今年はマイク・シノダがソロとして出演する。

2006年にメタリカと並んでヘッドライナーとして登場し、素晴らしいステージを披露したリンキン・パーク。2009年、2013年にも出演し、名実ともにサマソニの顔だったが……チェスター・ベニントン、R.I.P.(©SUMMER SONIC All Rights Reserved. )
「最後終わってから花火が上がりますけど、大体どのアーティストもライブが終わったらすぐにステージを降りて、車で楽屋に戻っちゃうんですよ。でも、このときはチェスターがステージ脇からずっと花火を見上げていて、それから出て行ったんですよね。当時から印象的でしたけど、今となってはより印象的なシーンとして覚えています」
グリーン・デイとリアーナがヘッドライナーを務めた2012年からは大阪会場の担当となり、主に楽屋エリアにいることが多いという安藤さん。東京よりもサイズ感がコンパクトで、楽屋の距離も近い大阪会場ではアーティスト同士の交流が生まれやすく、貴重なシーンを何度となく目撃しているという。
「2013年にはメタリカのラーズ・ウルリッヒが『BABYMETALのライブを観に行きたい』って言ってて、その後に向こうのツアーに呼ばれたりしてましたよね。去年はヘッドライナーのフー・ファイターズの前でしたし、BABYMETALはホントすごいなって。あと2016年はファーギーとウィーザーのメンバーが楽屋の入口で談笑しながら写真を撮ってたり、去年は東京でのフー・ファイターズとリック・アストリーのコラボが世界的なニュースになりましたけど、前日に大阪の楽屋で何やら話してたんですよ。今思えば、『東京で何かやろう』って話してたのかも。大阪はそういうきっかけが生まれやすいんです」

アーティスト同士の交流が生まれやすい大阪会場の楽屋エリア。こちらは2016年のファーギーと、ウィーザーからリヴァース・クオモ&ブライアン・ベル。ブライアンの後には安藤さんの姿も。※写真はファーギーのインスタグラムより
2007年から大阪会場として定着している舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)はオリンピック誘致に向けて建設された会場であり、海沿いの開けたロケーションが特徴。ステージ設計も毎年工夫を凝らし、よりよい環境づくりを目指している。
「大阪は場所が開けているので、ステージの位置によっては夕日と海が一望できるんです。2016年はOCEAN STAGEからヤシの木が見えて、ちょっと南国っぽいというか、コーチェラみたいな雰囲気で。ヘッドライナーのレディオヘッドの頃には夕日も見えて、すごくいい光景でした」

大阪会場の舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)は夕日と海が一望できる素敵なロケーション。レディオヘッドがヘッドライナーを務めた2016年はヤシの木が並び、まるでコーチェラのような雰囲気だった(©SUMMER SONIC All Rights Reserved. )
フェスといえば、会場内の様々な装飾も魅力のひとつ。安藤さんにはサマソニ会場内における「インスタ映え」ポイントも聞いてみた。
「毎年モニュメントが変わるので、皆さん写真を撮ってると思うんですけど、最近は幕張メッセのPAの後に照明のタワーがあって、そこにもステージごとのモニュメントを作ってるんです。そこで写真を撮る人も増えてきていて、狙い目だと思います」
今年のサマソニに対しては、MOUNTAIN STAGEの他、ロックからR&Bまでインディ系の多彩なアーティストが顔を揃え、テーム・インパラやセイント・ヴィンセントらが出演するSONIC STAGEからも目が離せないという。
「今年はステージごとの色がはっきりしているのが特徴の一つで、『邦楽はRAINBOW STAGE』みたいな感じになってますが、MOUNTAIN STAGEにはHR/HM系が多くいるので、ファンにとっては見どころかなと。ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインは久しぶりだし、アルバムも出るし、盛り上がると思います。SONIC STAGEに出るパラモアも、新作が出て単独公演をして、その流れでサマソニに来るのはいいなと。フォール・アウト・ボーイのように、日本でもそのレベルのバンドになれる実力はあると思うので、今回がまた何かのきっかけになればいいですね」

安藤竜平
株式会社クリエイティブマンプロダクション・宣伝部。洋楽レーベルのアシスタントを経てクリエイティブマン入社。PUNKSPRING、LOUD PARK、WARPED TOUR JAPANや洋邦メタルとパンク系の公演を担当。
SUMMER SONIC 2018
期間 : 2018年8月18日(土)、19日(日)
会場 :TOKYO=ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
OSAKA=舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
http://www.summersonic.com/2018/
