●主要4局GP帯で8本の新番組がスタート
4月も半分が過ぎて今春スタートの新番組がそろいつつある。

ただ報道・情報番組やゴールデン・プライム帯のレギュラー番組に春ドラマのキャストが連日出演し、ネット上の動きも活発な一方で、バラエティの動きは少ないように見えてしまう。

主要4局のゴールデン・プライム帯で放送されるバラエティの新番組は下記の8つ。

『超調査チューズデイ〜気になる答え今夜出します〜』(フジテレビ系、火曜19:00〜、3月31日スタート)

『テレビ×ミセス』(TBS系、月曜21:00〜、4月6日スタート)

『プロフェッショナルランキング』(TBS系、月曜22:00〜、6日スタート)

『かまいたちの瞬間回答! 〜60秒でお悩み解決〜』(フジ系、金曜21:00〜、10日スタート)

『STAR』(フジ系、木曜19:00〜、16日スタート)

『金曜ミステリークラブ!!!』(日本テレビ系、金曜19:00〜、17日スタート)

『タイムレスマン』(フジ系、金曜21:58〜、17日スタート)

『真剣遊戯!THEバトルSHOW』(フジ系、月曜20:00〜、20日スタート)

はたして今春スタートのバラエティは本当に話題性に欠けるものばかりなのか。期待できそうなポイントはどこなのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

(左上から時計回りに)Mrs. GREEN APPLE、フジテレビ上垣皓太朗アナ、かまいたち、ノブ&二宮和也

○番宣でドラマに劣るのは仕方ない

『オールスター感謝祭’26春』(TBS系)、『クイズフェス!2026春』(日本テレビ系)、『芸能人格付けチェックBASIC 春の3時間半スペシャル』(ABCテレビ・テレビ朝日系)などの改編期特番で目立ったのはドラマ出演者ばかりで、バラエティの出演者がフィーチャーされる機会は少なかった。

ただ新番組の番宣でバラエティがドラマに押され、盛り上がりを欠くように見えてしまうのは仕方がないことだろう。

連続性が重要なドラマは第1話を見てもらわなければ1クールを棒に振ってしまうため、主演・助演ともに全力で番宣出演。一方、バラエティは多忙なMCらが他番組に番宣出演するのは限界がある。PRの頻度、人数、出演者の希少性や鮮度などの点でバラエティはどうしてもドラマに劣るため、注目度を高めるのが難しい。

実際、「本当はドラマから1か月遅れでバラエティをスタートさせたい」というテレビマンの本音を聞いたことがある。つまり「それくらいあとでなければバラエティの新番組は目立てない」ということだろう。

ちなみに3年前の春、松本人志と中居正広がタッグを組んだ大型番組として話題を集めた『まつもtoなかい』(フジ系、日曜21:00〜)は4月30日のスタートだった。また、報道番組ではあるが、今春における日テレの目玉である『追跡取材 news LOG』(土曜22:00〜)の初回放送も4月25日に設定されている。

このような背景があるため、すでにスタートした番組も盛り上がりに欠けてお先真っ暗というわけではなく、まずは1か月あまりの放送で徐々に支持をつかみ、クチコミを得ていきたいところだ。

前述した今春スタートの新番組は、主に「冠」「ゲーム」「ロー」という3つの傾向が見られる。

1つ目の「冠」は人気タレントを前面に押し出した冠番組。『テレビ×ミセス』はアーティストのMrs. GREEN APPLE、『タイムレスマン』はアイドルのtimeleszという熱狂的な多くのファンを持つグループの冠番組が編成された。

どちらも「音楽だけでなく、ロケやゲームなどバラエティらしい週替わり企画に挑む」という王道の冠番組。前者が放送されるTBSの月曜21時台は長年視聴率で苦戦が続き、後者が放送されるフジ金曜22時台は前番組『酒のツマミになる話』が突然終了という厳しさのある放送枠だけに、「無難な企画では難しいから突出した個の力に賭けたい」という背景がうかがえる。

しかし、アーティストやアイドルの冠番組は好き嫌いがはっきり分かれやすいだけに、長期にわたって定着するかはわからない。

○あの番組たちの盛り上がりを再び

2つ目の「ゲーム」は昭和時代から定番ジャンルだったゲームバラエティ。『金曜ミステリークラブ!!!』は摩訶不思議な出来事の真相を推理するクイズが出題され、『真剣遊戯!THEバトルSHOW』は“アイドル俳優軍”と“芸人バラエティ軍”がオリジナルゲームで対戦する。

『金曜ミステリークラブ!!!』は同じ日テレが03年〜06年に金曜ゴールデンで放送していた『謎を解け!まさかのミステリー』、“主宰”を櫻井翔が務める『THEバトル SHOW』は同じフジが放送していた『VS嵐』『VS魂』と似たコンセプトの番組。時代が変わっても一定の視聴者層と盛り上がりが見込めるということだろう。

しかし、近年ゲームバラエティの主流は『千鳥の鬼レンチャン』(フジ系)、『バナナサンド』(TBS系)、『ハマダ歌謡祭 オオカミ少年』(TBS系)などの音楽系。これが飽和状態とみなしたのか、「再びミステリークイズやチーム対抗戦で勝負しよう」という意図がうかがえるが、まだニーズが残っているのかはあやしい。

3つ目の「ロー」は低予算&低カロリー。『超調査チューズデイ』は2時間生放送のため編集、出演者、スタッフなどで制作費や労力を抑えられる。『STAR』はMCが上垣皓太朗アナで音楽中心のシンプルなエンタメ番組。『かまいたちの瞬間回答!』は「ネット上の悩みを専門家が解決」という構成のため人的コストを抑えられる。『プロフェッショナルランキング』は構成・演出が明確なランキング番組で、多くのアーカイブを活用したエンタメ企画の量産が可能。

視聴率低下による放送収入減の流れは避けがたく、さらに動画配信の競合や人材流出もあって、「いかに制作費や労力を抑えつつヒットを狙うか」という姿勢がうかがえる。ただ視聴者の中にはそんな苦しさに気付いている人も多いだけに、新番組らしい期待感につながりづらい。

●バラエティ新番組が期待できる理由
ここまでそれぞれの背景と課題をあげてきたが、では「すべての新番組が期待できないか」と言えば答えはノー。各番組の強みを生かし、それがクチコミになればヒットにつなげることも可能だろう。

「冠」はポテンシャルの高いスターグループの冠番組であるため、これまで見せなかった魅力が引き出され、それが広く伝わっていくという可能性が考えられる。理想型を言えば、かつて放送された『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)のような爆発的なヒットにつなげていきたいところだろう。

「ゲーム」は学校や職場で流行るブームにつなげられたら面白い。はたしてTikTokなどのSNSで一気に広がるようなブームを生み出せるか。定番だからこそゲームの企画力が問われる。

「ロー」は低予算や低労力ならではのシンプルさが、エッジの効いたコーナーにつながっていく可能性がある。たとえば『超調査チューズデイ』は生放送のハラハラドキドキ、『STAR』は上垣アナの個性、『かまいたちの瞬間回答!』はお笑い系ライフハック、『プロフェッショナルランキング』は毒気のあるランキングなどのコーナーでネット上の話題性を高められたら期待できるのではないか。

また、「バラエティのスタッフが民放各局を辞め、ネットコンテンツに注力していく」というケースが増えているが、だからと言って「配信で国民的なヒット作が生まれるか」と言えば、「まだまだ難しい」とみるほうが自然だろう。

無料配信のYouTubeですら一部の人々に向けたものに留まり、有料配信のコンテンツならなおのこと。実際、配信コンテンツはジャンルを問わず、民放各局で無料放送されるバラエティのような国民的ヒット作はここまで生まれていない。国民の多くが見るYouTubeチャンネルはなく、Netflixで言えばヒットドラマの『愛の不時着』『イカゲーム』『地面師たち』ですら一部の熱狂に留まった。

視聴率は下がり、人材流出が続く今なお、国民的ヒットコンテンツとなる可能性に関しては、まだ民放各局のバラエティが優位にある。

○テレビ放送の未来はバラエティ次第

むしろ見方を変えれば、テレビのバラエティは今こそチャンスなのかもしれない。

何をやっても視聴率が取れないからこそ思い切ったコーナーに挑戦するしかない。人材流出が続くからこそ若手が活躍する余地が生まれる。現場のテレビマンたちが「そつなくこなす」のではなく「作り手の熱を感じさせる」ことができれば、それなりのヒットにつなげることも可能だろう。

スタッフにとっては、苦しい今こそ業界内だけでなく世間に自らの名前を印象付けるチャンスであり、それができれば、局に残って出世するもよし、独立するもよし。自分のキャリアが自由に描きやすくなるだけに、作り手の熱が視聴者に伝わるような仕事ぶりに期待したい。

前述したように、今春は視聴者の多い休日プライム帯で『追跡取材 news LOG』がスタートするなど、報道・情報番組の占める割合がジリジリと増えている。

すでに土曜ゴールデン・プライム帯は『情報7daysニュースキャスター』(TBS系)、『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレ朝系)、『サタデーステーション』(テレ朝系)を併せた4番組。日曜ゴールデン・プライム帯は『Mr.サンデー』(フジ系)、『有働Times』(テレ朝系)の2番組が放送され、「テレビは休日も報道・情報番組」という印象が濃くなった。

一方、ドラマやアニメはIP(知的財産)として存在感を見せているが、「放送で視聴率を取ることに関してはあまり期待できない」というポジションに留まっている。

これらの状況から、テレビが昭和時代から最大の武器であった多様性を保ち、明るさや笑いを伝えていくためにはバラエティの出来が重要なのは間違いないだろう。だからこそ、今春スタートのバラエティには右肩上がりの盛り上がりを期待している。

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら