Image: © Keith Haring Foundation

2024年1月22日の記事を編集して再掲載しています。

1980年代に活躍し、ストリートアートやポップアートの文脈を代表する芸術家のキース・ヘリング。1990年に亡くなった後も、アートやファッションの領域で今もなお高い人気を誇っています。

そんなキース・ヘリングが1989年に制作した「Unfinished Painting」と呼ばれるアート作品。画像で見てもわかる通り、キャンバスの左上にのみペイントが施された作品です。

この作品は、自身もHIV感染者だったキース・ヘリングが意図的に完成させず、AIDSの蔓延やそれにより刈り取られていく命を視覚的に表現したものとして知られています。四角いキャンバスの左上の1/4にしか塗られていないペイント、そしてそこから流れ落ちていく絵の具が命の儚さを感じさせます。

生成AIが完成させてしまった

2023年の夏にアーティストのBrooke Peachley氏が、X上でフォロワーにビジュアルアート作品でリアクションするように求めるポストをしました。そのスタートとして、同氏はこの作品の画像を載せたのです。

Hyperallegicによれば、その投稿から約半年後に、別のユーザーがこのポストに画像付きで反応したそうです。それがこちら。

「AIを使って、キース・ヘリングが完成させられなかったこの作品を完成させました!」との文章と共に、生成AIによってキャンバス全体にペイントが施された画像をポストしました。

すると、X上では思わぬ議論に発展していきます。

Open Cultureは、このユーザーの行為に対して「冒涜だ」「不快である」といった批判的なコメントが多く寄せられたと伝えています。

確かに、この作品の背景を知っているならば、「あえて完成させない」ことこそがメッセージであった作品に対し、生成AIで補完して「完成させてしまった」のは、個人的にもなんともいえない気持ちになります。

一方で、AIによってこの作品が完成したことで「AIDSのない世界を示している」と称賛を送るユーザーもいたとArtnet Newsは伝えています。

さらに、そもそもこのユーザーは、X上における炎上が狙いであったとの推測も飛び交いました。

生成AIとアートに関する指摘も

ポストしたユーザーの友人と思われるユーザーは、チャット型生成AIのChatGPTで「キース・ヘリング自身はどう感じているか」を聞いてみると、「創造性や芸術表現の無限の可能性を感じさせる協力的精神を示すものだ」との肯定的な回答であったと報告。このいかにもな回答は、さらに火に油を注ぐ形となってしまいます。

Artnet Newsはさらに、生成AIの画像生成におけるトレーニングについての著作権侵害についても指摘。また、Hypeallegicでは、そもそもこの生成AIが生み出したのは、人間をかたどったモチーフを使用するキース・ヘリングのスタイルではなく、単なる抽象画だとする意見も取り上げています。

キース・ヘリングの作品例
Image: imagoDens / Shutterstock.com

生成AIが「完成させてしまった」ことで多くの批判が寄せられ、思わぬ議論に発展したこの作品。その是非はともかく、生成AIとアート作品というものを考える上で、興味深い出来事の1つになったことも確かでしょう。

Image: ©Keith Haring Foundation

source: Hyperallegic, Open Culture, Artnet News, X