―なんで“にゃんにゃんOL”を選ぶの!?

ハイスペ男子の結婚式で、こう思ったことのある高学歴女子は多いのではないだろうか。

お嬢様女子校から東大に入り、コンサルティング会社でマネージャーを目指す大西夏希(28歳)も、婚活なんかしなくても自然と結婚できるはずと思っていた。

しかし友人の留美に「愛されたかったら傷付く覚悟も必要」と力説されたり、幼馴染の千春の傷付く覚悟をして幸せになろうとする姿に感化され、徐々に変わり始める。

また社内で気になる男・武田をデートに誘い、「人の為に行動できる人は立派」だと言われたのをキッカケに、千春に同級生の弁護士を紹介。失恋直後の千春に新しい恋の予感が生まれ、夏希は嬉しい気持ちになる。

そして後日、武田から直球の告白を受けるも何故か喜べず、留美と千春に相談し、好きという感情に幻想を抱いていたと気付く。




武田と付き合うかを2人に相談した帰り道、家に帰り夕食を作ると言う留美と別れ、夏希はひとり成城石井でお惣菜を買い、古川橋付近の自宅まで歩いて帰ることにした。

肌を撫でる秋風が心地良い。

夏の夜風にあたりながらテラス席でお食事会をした日から、すっかり季節が移ろいでいた。あの頃は正直、自分の考え方に問題があるなんて思っていなかった。

夏希はこれまでの人生、”理屈”をきちんと理解することが大切だと思っていたのだ。

だからこそ応用問題も発展問題も意のままに解け、東京大学に合格することもできたし、コンサルタントという仕事もこなせている。何かを決めていく上で、理屈を理解するということを決しておざなりにしてはいけないと思っていた。

そして夏希はそれを、恋愛にも応用しようと思っていた。自分がなんで武田さんのことが好きなのか、武田さんもなんで自分のことが好きなのか。

そこまで考えて、千春の「そんなに難しく考えなくても良いんじゃないかな?」という言葉を思い出す。たしかにこの感情は理屈では説明できないし、またそれが分かったところで、交際が上手くいく保証は無いのだ。

留美の言うように「二人で一緒にやっていこうという気持ちが大事」なのだろう。

歩きながら考えていると、頭の中がどんどんクリアになってくる。そして夏希は居ても立ってもいられなくなり、武田にLINEを送った。


二人は上手くやっていけるのか?武田には夏希に言っていない秘密があった…。




あのあと夏希は武田に「YES」の返事をし、無事交際がスタートした。いざ付き合ってみると、何をあんなに思い悩んでいたのかと拍子抜けするほど順調に進んだ。

何より、武田といる時は変に気を張ることもなく自然体でいられるのが、夏希自身、不思議なほどだった。

これまで仕事中心の生活を送っていた夏希は、“どうせ女だから”とか“女のクセに”と言わせる隙を与えてはならないと無理していたのだろう。

プロジェクトが佳境に入り、“三食コンビニの生活で心が荒みそう”とLINEすると、 週末に「仕事しながらでも食べられるように」と玄米の具沢山おにぎりを作ってきてくれた。

がむしゃらに働いていた20代前半と違って、アラサーになると途端に生活の質が気になってくる。充分な収入によって上質な衣・住を確立した分、食だけが疎かになっているのが余計惨めに感じるのだ。

専業主婦の母が作る手料理で育った夏希にとって、大好きな『Richard Ginori』の食器に、成城石井で買ったお惣菜を盛り付けるのは虚しい作業だった。

お昼時で行列を作っているコンビニに並ぶ必要も無く、クタクタになって帰宅しUber Eatsを頼もうにも営業時間が終了していて呆然とすることも無く仕事に集中でき、心底ありがたく思った。

千春が料理を頑張っているとアピールしていたのに目くじらをたてていた自分を思い出す。手作りの料理の威力を甘く見ていた、そう苦笑いしながら“プロジェクトが終わったら何かご馳走するから行きたいお店考えておいてね♪”と武田に連絡する。

これまでの夏希だったら、男性に何かご馳走するなど考えたこともなかった。しかし今はどうしても、武田に何かお返しをしたかったのだ。



プロジェクトが一段落した週末、普段家では作れない物が食べたい、と言う武田の希望で