戦争が始まって1カ月ぐらいがたった3月後半、頻繁に立ち寄る郊外の店で「5ドルミール」を購入しようとしたところ、飲み物代が余分にかかるようになっていた。Sサイズのコーラを選択したら、50セント(79円)が請求額に上乗せされていたのだ。値上げの知らせなどはどこにもなく、50セントぐらいなら顧客も黙って払うだろう、というような値上げの仕方だった。

マクドナルドには「5ドルミール」目当てにほぼ毎日通っているが、このやり方を不快に思い、数日間、この店には行かなかった。1週間後、再び訪れてみると「5ドルミール」は6ドルに値上がりしていた。「もうこの店では買わない」と決意したが、マクドナルドでさえ、貧しい層が住む地域でも「5ドルミール」を維持できなくなったようだ。

ファストフード各社は、ケチャップも小袋での提供だ。かつてのように大きなボトルが置いてあって使い放題という店はニューヨークではほとんど見かけない。商品を受け取る際に「ケチャップも」とリクエストしないと、袋に入れてくれない店もある。それでもイラン戦争前は、ケチャップを欲しいと言えば5、6個くれたが、イラン戦争後は2個ぐらいしかもらえなくなった。

かつては取り放題だった紙ナプキンも、現在は店側が厳しく管理している。戦争が始まった後は、主張しなければ2枚ぐらいしか入れてくれなくなった。
広大なアメリカをひとくくりにして話すことはできないが、物価上昇で生活しにくくなっているのはいずれの地域も同じだ。経済に余裕がなくなれば、気前の良さは影を潜める。おおらかなアメリカは遠い存在になりつつある。

【谷中太郎】
ニューヨークを拠点に活動するフリージャーナリスト。業界紙、地方紙、全国紙、テレビ、雑誌を渡り歩いたたたき上げ。専門は経済だが、事件・事故、政治、行政、スポーツ、文化芸能など守備範囲は幅広い。