【富士山】またしても閉山中の滑落事故…なぜ危険な登山が続くのか?救助費用負担のあり方や対策は?(静岡)
閉山中の富士山でまた滑落事故です。おととい6日、富士山で外国人登山者が滑落して救助されましたが、その際に「日本人男性も滑落したのを見た」と話したことから、8日も救助活動が行われました。なぜ、閉山中の富士山で危険な登山が続くのでしょうか?そして、その救助費用は誰が負担すべきなのでしょうか?
これは3月9日、静岡県警が山岳救助に向かう映像。真っ暗な中、雪が積もった足元をライトで照らしながら一歩一歩進んでいきます。
この日は、登山をしていた外国籍の男女2人が滑落し、救助が完了しました。
今の時期、富士山は閉山しています。
しかし、救助はきょう8日も…。
2日前に富士山新七合目付近で滑落したポーランド国籍の男性が救助された際、「日本人が目の前で滑落した瞬間に自分も滑落した」などと話したことから捜索が進められていたのです。
こうした救助要請が後を絶ちません。なぜ閉鎖期間中の富士山に登るのか、
静岡市清水区で、ガス会社を経営する傍ら、これまでに世界最高峰のエベレストをはじめアメリカのマッキンリーやマウントレーニアなど数々の山をに登頂した登山家の大石さんは…。
(登山家 大石 明弘さん)
「法的にはダメっていうのは、登山道を使ってはダメってのが法律の部分です。で、それ以外のところはダメっていう法律はないんですよ」
閉鎖期間中、山頂への登山道は道路法により通行禁止となっていて、通行した場合6か月以下の拘禁刑、または30万円以下の罰金が科せられる可能性が。しかし、通行禁止となっているのは、あくまでも登山道のみ。登山道を通行しない登山は法的には制限されていません。
閉鎖期間中の富士山はどれほど危険なのでしょうか?大石さんは冬山に臨む際は相当な準備とトレーニングを重ねると話します。
(登山家 大石 明弘さん)
「夏の富士山と比べるともう全く違う世界。もう何倍も難しい世界で。例えば今の富士山でいったら春の富士山なんですけれども、一瞬にして冬の状態に変わるときもあるんですよ、気象によっては。どうしてもその突然の天気の急変、あるいは予想外の氷の状態に対応できないので、今の簡単な富士山、春の富士山ではなくて、厳冬期の富士山をイメージできる心構えが必要」
閉鎖期間中の富士登山を巡っては、2025年4月、中国人の男性が数日の間に高山病と遭難で2度救助されたことも。人命救助のプロでも富士山の天気の急変に対応する難しさを口にします。
(静岡県警 地域課 堀田利治 管理官)
「風が強いと、ヘリが、まず富士山に近づけない状況があります。やはり上空からその状況把握をするというのが1番のポイン トになろうかと思いますので。富士山周辺、雲がかかりますよね。雲がかかっている環境だと、結局ヘリを、ヘリが現場に行っ てもですね、上空から 山肌を見ることができない。そうすると効果がないんですよ ね」
また、地上の救助隊は山頂付近では氷点下20度を下回る日もあり、足元の凍結に注意しながら命がけで、救助に向かっています。
こうした遭難が相次ぐ中、議論が活発化しているのが救助費用の有料化です。2025年6月、富士宮市の須藤市長が閉鎖期間中の救助費用について、一部を自己負担とする法改正などを求める要望書を鈴木知事に提出しました。
(富士宮市 須藤市長)
「ダメだっていうものをあえて危険を冒していくこと自体が、まったく法を無視する大バカ者だと私は思っておりますから、そういうのは厳しく取り締まったほうがいい」
静岡県も、救助費用の有料化に向け、山梨県と協議を進めている状況ですが、まだ決まったことはないということです。実際に捜索にかかる費用はどの程度のものなのか。民間企業で唯一、捜索サービスを行う企業は。
(AUTHENTIC JAPAN 担当者)
「一般的にヘリコプターは1分あたり約1万円前後といわれていますので、1時間あたりでは、ざっくりと60万円程度が目安とされています。さらに、地上の捜索についても、民間の救助隊員お1人当たり1日3万円から5万円かかるといわれていますので、例えば、地上の捜索隊が20名で2日間活動し、ヘリコプターが10時間飛行した場合だと、ヘリだけでも約600万円前後で、地上捜索費用を含めると、トータルで700万円から800万円かかる規模になるかなと」
この会社では、年間6600円を支払えば有事の際に捜索してもらえる会員制サービスを提供していて、登山の愛好家たちに備えの一つとして選ばれています。
高額な救助費用を巡っては、埼玉県が先駆けて県内の6つの山の指定されたエリアで防災ヘリで救助した場合、救助された人から「手数料」として、5分あたり8000円を徴収をする条例が定められています。救助費用の有料化について、登山家の大石さんは。
(登山家 大石 明弘さん)
「もう僕の考えとしては、もう救助費用としては自己負担、自分で遭難した人が払わなくてはいけないと思ってます。もう最悪の事態を考えたらそれと払うのは当然だろうと思っていますので、そういった『払う』というのも、『救助費用払う』という覚悟も持って危険なところに行かないと、それはもう遭難して全て人に、他人任せであれば、それはもう非難されてしょうがないなと思いますね」
閉鎖期間中の富士山で相次ぐ滑落事故…。遭難を減らす対策と、もしもの時の責任のあり方が問われています。
(スタジオ)
(伊藤 薫平 キャスター)
まずはこちらです。また閉山中の富士山で事故ということに、津川さんになりましたが、どうご覧になりました?
(津川 祥吾 アンカー)
またかと思ってしまいますよね。ただ、公的救助、警察とか消防とか海上保安庁の皆さんというのは、人の命を守るというのが使命であって、その仕事をするのにお金を取らない。要するに、“ただ”でやるわけではなくて、税金でやります。金持ちだけ、お金を払った人だけ助けるということをしないわけですよね。それも、ものすごく大事な原則だと思いますが、それ…どこまでできるのかというところの限界、どこに線を引くのかなという問題なのかなというふうに思いますよね。やっぱり冬山で、富士宮の須藤市長がおっしゃっているように、ダメだと言っているときに行っちゃダメでしょうと。ただ、登山家の方も説明していただきましたが、実は法律的に違反と言っているわけではないというのが、この辺がちょっと難しいところですよね。
(伊藤 薫平 キャスター)
そうですね。人それぞれ基準があるのもポイントなのかもしれないんですが…、白井さん、なぜ危険な登山がなくならないのか…ということなんですが…。
(コメンテーター 社会起業家 白井 智子氏)
まず、険性のイメージというのが、だいぶ人によってズレがあるんだなというのは、このニュースを見ていて思いますね。私自身も、やっぱり、今、閉山中だということを、県外から来た人間などは、はっきり意識していなくて、そうなると、やっぱり海外から来た人などは、ましてや、写真見て憧れて登ってみたいなというような軽い気持ちで来てしまうというようなことは十分考えられるかなと思います。本当に、その冬の富士山というのが、命に関わるレベルで危険だというようなことをちゃんと発信していくということと、その前のルール化ですよね。日本の行政サービスって本当にきめ細やかなので、それを“ただ”で受けられるという感覚だと、やっぱりちゃんと注意喚起というのが十分じゃないのか…と思うんですけれども、そういうのを生かしていくというのも、やっぱり重要なことかなと思います。
(伊藤 薫平 キャスター)
そしてこれを機に、この金額をですね、みんなで知っておいた方が良いんじゃないかなと思うんですけれども、救助費用ですね。警察や消防など公的機関による救助というのは無料となっているわけです。先ほど津川さんからもお話がありました。つまりは税金でカバーされているということになります。津川さん、有料化の必要性や罰則強化などについてはどうお考えですか?
(津川 祥吾 アンカー)
罰則というのは、、そういう言い方をすると、つまり法律違反というのが前提になるので、そもそも、そういう法律…「入ってはいけません」みたいな法律を作るか、作ることができるか…というところからの議論になります。そこまでやらなくても、費用の負担というのはこれまでも全国的にやっている部分があって、例えば私、かつて北海道にいたとき、「山スキー」というのをやっていまして、今、「バックカントリースキー」とかって言いますよね。スキー場以外のところで事故が起こると「けしからん」とよくしかられますけど、「山スキー」というのは昔からあるんですよね。ただ、その人たちは本当にその技術とか知識が…すごくよくある人たち。私はそれについて教えてもらったんですが、そこでもし事故があった時には、例えば、民間の人に救助に来ていただく部分があるんです。だから、そこの部分は負担をしていただくという発想だったと思うんです。で…、今、警察の能力が高まって、富士山も、直接、救助に行けるようになったけれども、やっぱり、そこの部分は、かつての考え方から言うと、そこの普通の救助よりも超す部分については負担をしていただくという考え方はあり得るんじゃないかと思います。
(伊藤 薫平 キャスター)
はい。そして、これ都道府県によってもちょっと違いまして、この防災ヘリによる山岳遭難の救助は、埼玉県の場合は、こちら5分ごとに8000円かかるそうなんですね。1時間で見ますと9万6000円ということになるんですけども…、津川さん、一律でこれ有料化してしまうと、これ本当に困った人が救助要請をする時に、ためらうんじゃないかという懸念もありますね。
(津川 祥吾 アンカー)
そう、だから、「お金がかかるから救助要請しない」となってしまったら本末転倒ですけれども、でも、「万が一の時に、このぐらいかかりますよ」というのを事前に伝えるというのも大事かと思います。
(伊藤 薫平 キャスター)
そして、きょうは、なぜ閉山中に滑落が起きているのかということでお伝えしているんですけども、白井さんは教育のご専門でもありますが、教育面でのアプローチで、何かこのルール作りに向けての考え方はどうでしょう?
(コメンテーター 社会起業家 白井 智子氏)
外国の方に向けても、本当に、「冬の登山が危険だ」ということだったりとか、「装備をちゃんとしていかなきゃいけない」みたいなことを、多言語だったりとか、あとピクトグラムみたいなね、視覚的に訴えるもので伝えていくこと大事だと思いますし、あと、若い人とか子どもたちにもですよね…本当に「そんな遊び半分でいけるような場所じゃないんだよ」ということを伝えていくというのは、すごく重要だと思います。
(伊藤 薫平 キャスター)
幅広い世代、幅広い国の人に分かるようなルール作りが求められているかもしれません。
