アイリスオーヤマは、ハウジング事業戦略について説明。2030年を目途に売上高100億円を目指す。ハウジング事業は、同社の法人向け事業において、ロボティクス事業、省エネソリューション事業とともに、成長領域のひとつに位置づける。

また、ハウジング事業の新たな取り組みとして、ビルトイン食器洗い乾燥機市場に参入。第1弾として、業界最小幅となる30cmとスリム化を図りながら、6人分の食器などを洗うことができる「LiBish slim30(リビッシュ スリムサーティ)」を、2026年4月1日に発売。ビルトイン食洗機は、同社のハウジング事業の主力製品のひとつに位置づける考えだ。

アイリスオーヤマ BtoB事業グループハウジング事業部の石川修事業部長は、「幅広い事業展開で培った知見と、生活者が感じる不便や不満に寄り添うユーザーインの発想により、快適な住環境の実現に向けた製品開発を推進していく。ビルトイン食洗機と、ビルトインIHクッキングヒーターが事業成長の柱になる。100億円の規模に達することで、市場におけるハウジング事業の存在感を発揮できるようになる」と述べた。

アイリスオーヤマ BtoB事業グループハウジング事業部長の石川修氏

アイリスオーヤマは、2023年に、住宅設備によるハウジング事業に本格的に参入。これまでにビルトインIHクッキングヒーターやテレビドアホン、宅配ボックスなどを製品化してきた。これまでは住宅設備機器事業としていたが、2026年から、ハウジング事業に改称している。

アイリスオーヤマのハウジング事業の製品群

ビルトインIHクッキングヒーター

テレビドアホン

宅配ボックス

BtoB領域では、ロボティクス事業にも取り組んでいる

アイリスオーヤマは、2011年3月11日の東日本大震災で、同社の主力拠点である宮城県角田市の角田I.T.P.が被災。それをきっかけに、自らの被災経験をもとに、日本の社会課題を解決するための「ジャパン・ソリューション」をスタートしている。

具体的には、技術者の海外流出防止や、国内での雇用を維持するために、2009年から本格参入していた家電事業を強化したほか、震災後の節電需要に対応するLED照明事業、地元農家の営農再開を支援するための精米事業、コロナ禍においては迅速に国内生産を開始したマスク事業、国内の労働力不足に対応するためのロボティクス事業を、「ジャパン・ソリューション」として展開。「被災経験が、その後のアイリスオーヤマの事業展開の軸を変えた」(石川事業部長)とする。

東日本大震災の経験から、日本の社会課題を解決するための「ジャパン・ソリューション」をスタート

BtoB事業では、ロボティクス事業、省エネソリューション事業、空間ソリューション事業を現在、ジャパン・ソリューションの切り口から展開している。同社では、ハウジング事業の一部をジャパン・シリューションに位置づけるとともに、BtoB事業の新たな柱に追加していく姿勢を示している。

石川事業部長は、ハウジング事業を本格化する背景として3つのポイントをあげる。

ひとつめは「寡占化市場の活性化」である。限られたメーカーによって寡占化した状況にあるハウジング市場において、同社は、メーカーベンダーである強みを生かしながら、最後発としてのメリットを生かすことで、市場を活性できるとみている。2つめは、国内では建物が老朽化し、更新期を迎えていることに加えて、住環境が多様化していることから、修繕および建て替え需要が増加すると予測。さらに、3つめとして、アイリスオーヤマが得意とする利用者の声を反映するユーザーイン発想や、家電や生活用品を開発してきたノウハウを活用できる領域だと判断したことにある。

ハウジング事業、3つの参入背景

石川事業部長は、「人口減少などから、新築の着工数は減少しているが、住宅は生活上で欠かせないものである。アイリスオーヤマの知見とノウハウを活かすことができる」とする。

ビルトイン食洗機の利用者を対象にした調査では、約60%の回答者が時間のゆとりが取れると回答。満足度が高い。

「増え続ける家事負担に対し、時間を生むことができるビルトイン食洗機は、社会ニーズに強くマッチしている。また、食洗機は、光熱費を下げ、水の使用量を削減できる。購入時には、国や自治体からの補助金や助成金が用意され、導入のハードルも下がっている」とする。

だが、ビルトイン食洗機の国内普及率は約37%に留まっている。グローバルでは60%以上の普及率であることと比較しても低いことがわかる。

ビルトイン食洗機は、時間のゆとりが取れる点が特に満足度が高い

ビルトイン食洗機の国内普及率は約37%で、これは国際比較でもかなり低い割合にとどまっている

同社では、普及率が伸びない理由をいくつか指摘。なかでも、住宅スペースの狭小化と、住宅価格の上昇が大きく影響していると述べた。

「物件サイトなどでは、設備訴求やリビングの広さを訴求するケースが増加し、リビングの大きさを担保したまま、水回りなどを縮小する傾向がある。その結果、居住スペースとの兼ね合いでビルトイン式食洗機の設置を諦めてしまっている家庭が増加している例が目立つ」としながら、「狭小住宅でも導入しやすい新たな選択肢が必要である」とする。

同社では、ビルトイン食洗機の市場規模は今後も伸長を続けると予測しており、「2034年までに、年平均成長率は5〜8%程度を見込んでいる。ハウジング事業では、住宅を中心に暮らしが豊かになるソリューションの提供と、暮らしに関わる設備機器や家具といった製品を開発し、日々の暮らしが、より快適で高質になるように提案していく」との方針を示した。

ビルトイン食洗機の市場規模は今後も伸長を続けると予測

アイリスオーヤマが発売したビルトイン食洗機「LiBish slim30」は、約2年半をかけて開発したもので、業界最小幅となる30cmとスリム化を図りながら、上下2段のカゴにより6人分の食器などを洗うことができ、「コンパクト」と「大容量」を両立しているのが特徴だ。最大44点(上カゴ24点、下カゴ20点)の食器を収納でき、一般的な幅45cmのビルトイン食器洗い乾燥機に比べて、2Lペットボトル6本分のスペースが生まれ、シンク下を有効活用できるという。

ビルトイン食器洗い乾燥機「LiBish slim30」は、幅30cmのスリムタイプ

「最後発ということもあり、他社にはない幅30cmの製品を投入することで、アイリスオーヤマとしての特徴を訴求する。上下2段カゴは、食器の配置自由度が高く、様々なセットに対応した使いやすい設計となっている。大皿やラーメン鉢、細々した小皿、鍋、まな板も収納できる。一般的な幅45cmの製品に関しては、今後の需要動向やお客様の声を聞きながら検討をしていくことになる」とした。

さらに、4本のクアッドノズルが、的確に汚れを除去する「2×2パワフルジェット除菌洗浄」を採用。前後2つずつのノズルによって隅々まで洗浄し、食器のしつこい汚れや油汚れも強力きれいに洗い流す。予洗いが不要であり、作業負担を軽減するほか、65℃の温水洗浄によって、食器に付着した菌を99.9%除菌。手洗いと比較して使用水量は、約9分の1となり、年間で約2万3000円の節約ができる。節水は年間で約5万1000Lになるという。

クアッドノズルの採用が、幅30cmの省スペース化と、大容量化を実現できた理由となっており、同時に洗浄力を高めることにもつながっている。

さらに、庫内にヒーターがない設計によって、熱による食器類の変色や変形、ヒーターによる残菜の臭い残りを軽減する「ヒートセパレート構造」を採用しているほか、センサーが庫内の食器量を自動判別し、少量時は自動でエコ運転洗浄を行い、水、電気、時間の3つの節約ができる「エコ節洗モード」を搭載。使用水量を25%削減したり、電力量を18%削減できたりするため、一人暮らしでも安心して、節約した利用ができる。

6人分、44点の食器を収納できる

上下2つのカゴに44点の食器を収納した様子

下カゴのようす。様々な形状の食器が収納できるように工夫している

上カゴの様子。24点修理うできる

独自の「2×2パワフルジェット除菌洗浄」を採用

操作パネルの様子。アイリスオーヤマのロゴが入る



<動画>洗浄している様子

オープン価格だが、28万円前後を想定。システムキッチンメーカーへの採用を提案し、新築案件を対象に展開していく。初年度は、キッチンメーカーへの提案活動や、ブランド力および商品価値を浸透させる活動に注力する。

新製品では、「洗うをもっと自由に」をキャッチフレーズにしており、製品名の「LiBish」は、「WashにLibertyを」という意味を持つ。石川事業部長は、「キッチンのレイアウトが、いままでよりも自由に選べ、食洗機を使うことにより、自由な時間を提供するという意味を込めた」と明かす。

狭い住環境でも快適を諦めない「空間をより自由に」、こだわりの選択肢を広げることで、立ちたくなるキッチンを実現する「キッチンの選択肢を広げる」、食器洗いからの解放で、大切な時間にもっと自由を提供することで「時間を生み出す」という3点が、この商品が生み出す価値とし、「キッチンスペースの制約で導入を諦めていた人にも、新たな選択肢として最後の一歩を後押ししたい」と語る。

なお、生産は、中国・大連の同社工場で行い、日本基準の品質管理のもとで実施しているほか、ユーザーの声を迅速に製品改善へ反映できる仕組みを整備しているという。