―1兆ドル市場が待つ! AIDC向け電子部品や周辺装置で変貌する銘柄群を追う―

 生成AIが加速度的な進歩を遂げるなか、膨大化する情報への対応と計算資源の確保が重要課題となっており、そのインフラとして世界的にAIデータセンター への投資が熱を帯びている。生成AIの学習や推論において使われる計算資源は、これまでのクラウドを経由したサービスと比較して数百倍のボリュームが必要ともいわれる。それに見合うだけのGPU(画像処理半導体)やHBM(高帯域メモリー)をはじめとしたAI半導体を高密度に搭載したサーバーを用意する必要があり、これらの集積地がいわゆるAIデータセンターということになる。AIデータセンターの市場規模は2030年にグローバルベースで1兆ドル(約153兆円)に近い水準まで急成長するという試算もあり、株式市場でも関連銘柄は中長期的にスポットライトを浴びることが必至だ。

●ソフトウェア関連株を襲った地殻変動

 足もと米国株市場ではソフトウェア関連株への売り圧力が顕在化している。新興AIのアンソロピックが法人向けに開発した高度なAIエージェント機能を付加した自動化ツールが、法務や財務分析といった専門的な分野にも対応することが明らかとなり、業務効率化ソフトを凌駕し、こうしたサービスをクラウド経由で提供する企業の仕事を奪うというコンセプトがマーケットを揺るがした。

 米セールスフォース やアドビ 、ファクトセット といったクラウド関連企業の株価が大きく売り込まれ、これはハイテクセクター全般へのリスク回避ムードにつながった。ここ最近のナスダック総合株価指数の下落は、このアンソロピック・ショックの影響も如実に反映されたことは言うまでもない。AIデータセンターに関しては、クラウドサービスを提供する多くの企業が淘汰された場合、過剰投資懸念がまたぞろ浮上してくるという見方も出てきた。

●「リメンバー・ディープシーク」

 しかし、これはおそらく行き過ぎた不安心理がもたらしたパニック売りの要素も多分にあると思われる。これと似た騒動は昨年1月に起こった「ディープシーク・ショック」があるが、当時はエヌビディア が記録的な急落をみせるなど波乱を呈し、周辺銘柄にも売りが波及したものの、その後は結局、売り方が全面的に担がれる踏み上げ相場の嵐となった。状況的には似ているが、ディープシークの時はAIインフラ(=ハード)に対する警鐘で、今回のアンソロピックがもたらした衝撃波はクラウドサービス企業(=ソフト)がターゲットとなっている。もちろん、このハードとソフトは表裏一体の部分があり、どちらが変調をきたしてもネガティブに干渉し合う可能性は高い。しかし、それを考慮したうえで「アンソロピック・ショック」で個別に退場を余儀なくされる企業が相次いでも、AIデータセンターという領域を水浸しにするようなことはないと断言できる。

 AIエージェントが高機能化するに従い、それを提供するAIモデルには膨大な計算資源が必要になるため、仮にクラウド関連企業の数が減少したとしても、AIデータセンターへのニーズが低減するという方程式は成り立たない。ともすればSaaS関連企業が全滅するというような間違った観念が広範囲に狼狽売りを誘っているとすれば、むしろ今は売られ過ぎた銘柄を選別して拾うチャンスが訪れているといってもよい。