【解説】災害時デマなど“真偽不明情報”拡散のリスク…SNS社会でいかに向き合う?「every.しずおか」津川アンカーが検証(静岡)
7月30日、ロシアのカムチャツカ半島沖でマグニチュード8.8の大きな地震が発生。静岡県を含む太平洋沿岸などに東日本大震災以来14年ぶりとなる「津波警報」が発表されました。最大1.3mの津波が列島を襲い、夏休みシーズンに大きな混乱をもたらしました。
その一方で、SNS上では偽動画が多く出回りました。
「最大4メートルの津波が観測された」というコメントとともに投稿されたこの動画。
さらに「津波が日本に来た」というコメントとともに投稿されていた動画。これは2017年にすでに投稿されていて、今回の地震とは全くの無関係。
SNSを使うことが増えた今、大規模災害などで拡散する“デマ”に私たちはどう向き合っていけば良いのでしょうか。
(スタジオ解説)
(津川 祥吾アンカー)
このコーナーでは、日々お伝えしているニュースの中から私、津川の目線で選んだ話題を取り上げるコーナーです。
きょうのテーマはこちら「災害時 なぜ真偽不明な情報が広がるのか」。
・津波の偽動画
今紹介した動画がありました。どちらも偽なんですけれども、日本に津波が来た、これ事実なんですけれども、一緒に出てきた動画は、
ま、全然関係ない昔の外国の動画とこういったものが出てきて、これが拡散をした
とですとか、あるいはもう1つありましたが、え、最大4mの津波が来たと。これは
ロシアのカム塚に来たと。これも事実なんですけども、え、えっと、動画がですね、全くこれは偽物で、え、ま、生愛で作られたのではないかと言われてますが、これも拡散をされたというものです。
ここで真偽不明の情報について整理します。
・情報の種類
3つほどあると思いますが、まず誤情報。これは間違った情報というものですね。それに対して、偽情報、これは、間違っているということ、事実ではないということを知りながら悪意を持って広める、まさに偽情報で、これがデマと呼ばれるものですね。さらには、予言とか予知というものがあります。予言、予知は、偽とはこの段階では言えないのですけれども、未来にこういったことが起こりますよということを言われたとしても、それは予言だと思って聞いていれば、私たちは、そういった対応ができるはずなのですが、その情報が1人歩きして、あたかも事実のように情報が流れるようになると、まさに誤情報とかデマという形になりかれないということですね。こういった整理ができますけれども、悪意がないとか間違いであるということに関わらず、どちらも広がれば同じような危険があります。
先日もですね、SNS上で、「2025年の7月5日に大災害が起こる」というような情報が流れて、特に海外でですね、非常に、その情報が拡散して日本に来る、訪日外国人客が減ったというな話がありました。真偽不明の情報でしたが、こういったものも拡散されたという事実があります。
では、なぜ、この真偽不明な情報を私たちは信じて、これを拡散してしまうのか専門家にお話を伺いました。
(国際大学 山口 真一 准教授)
「フェイク情報って非常にセンセーショナルで、人々の感情に訴えるようなものが多い。その結果、研究によると事実の6倍のスピードで拡散するということもわかっている。特に人間というのは不安に包まれてる時ほどフェイク情報にだまされやすく拡散しやすい。自分が(不安な)状態の時ほどフェイク情報の拡散者になってしまう可能性があるという認識を持って、一呼吸置いて情報検証行動をする、そういった癖を作るのも大事かなと思います」
(スタジオ解説)
(津川 祥吾アンカー)
山口准教授によりますと、偽情報・誤情報は真実の「6倍の速さ」で拡散するという話なのですが、このデマにだまされないために、SNSをよく使う若い人はどのように対策をとっていらっしゃるのか、お話を聞いてみました。
(10代)
「TikTokで調べてコメントとか見たりします」
(20代)
「興味があったらTikTokから見たらネットを見たりテレビのニュースを見たりしています」
(20代)
「複数の情報源を持つっていうことと、自分の考えをしっかり持つことが大事かなって思います」
(スタジオ解説)
(津川 祥吾アンカー)
徳増さん、この若いみなさんの声を聞いていかがですか?
(徳増 ないる キャスター)
そうですね。20代の人が、複数の情報源を持つ、自分をしっかり持つというお話がありましたけれども、とても大事だなと思います。私たち報道機関では、1つの情報が正確かどうかを確認するための取材を重ねていますので、そうした信頼できるメディアとか、公式のホームページですとか…を複数確認していただいて、まずはそこをベースに考えていただければなと思います。
(津川 祥吾アンカー)
ではですね、そもそも、この偽情報、デマに対して、私たちがどのくらい信じてしまうのか…。これが国が調べたデータなんですけれども、47.7%の人が信じてしまうと。さらには、この1/4、25%の人は、信じるだけではなくて拡散までしてしまうということですね。誤った情報を拡散をするということが、国の調査でも分かるんですが。
では、この誤った情報を拡散するとどういうことが起こるかと、実は拡散したこと自体でですね、裁判になったというケースがあります。こちらは災害の話ではないのですけどれも…、裁判になったケース、ある大学生が、講義中のスライド写真とともにですね、「阪神タイガースが優勝すれば無条件で単位がもらえるらしい」とSNSに投稿したというんですね。ご本人はみんなが冗談と分かるだろうと思って投稿
して、それが拡散されたらしいのですが、実際、その担当する先生からするとですね、精神的な苦痛を被ったということで、損害賠償を求める民事裁判を起こして、実際に30万円の損害賠償というものが求められる判決が出たということなんですが、増田さん、この間違った情報、これはご本人は冗談のつもりだったというんですが、法律的にやはり大きな問題になることがありうるということでしょうか?
(コメンテーター 増田 英行 弁護士)
そうですね。その通りだと思います。私は、こういう案件が今後ますます増えていくのではないかという風に危惧しています。やはり、われわれ、まあ、この人もそうですけど、「ほんの冗談だと分かると思った」であるとか、それから、「これは真実だと私は信じているから他の人にも教えなくちゃいけない」という風にして発信をする人がたくさんいると思いますし、それが、ひとつSNSの特徴でもあるわけですけども、それによって中には被害を被ってしまうような人も、当然、出てくるわけなんですよね。例えば、先日、「7月5日に大震災が起こる」…という風な情報が流れてですね、それこそ、台湾から日本へ
のお客さん、渡航客がみんなキャンセルしたみたいな話があったと思うんですけど、こういった風にですね、なにかの情報、偽情、偽情報というか、誤った情報が流れると、それによって、商売上の被害を被ったりとか、それから精神的な靴を受けたりとか…という結果が発生してしまうということは、今も起こっていますし、今後も増えていくと思うんですですね。そうなった時に、法律というのは、故意で…わざとそれをやったのではなかったとしても、過失ですね。不注意でそういう結果を招いたとしても損害賠償責任は追うことになりますのでね。
(津川 祥吾アンカー)
これは、最初に言い始めた人以外でも、罪を問われることってあるんですか?
(コメンテーター 増田 英行 弁護士)
あります。1番最初に言い出した人、その人の話を聞いて、「あ、これはその通りじゃないかと思った」とか、それから、「あ、面白い話だな。じゃあ、自分も誰かに伝えてみよう。面白いから」ということで、それこそ、「ネズミ講」のようにですね、その情報を流す人が増えていく。そうすると、それが法律上は「共同不法行為」といったりしますけど、そういう人たちが集まって、被害者を生んでしまった…そうすると被害者の人たちから損害賠償請求だということで、最初にそれを言い出した人だけではなくて、それに関わった人たちも賠償の対象になるということは十分考えられると思いますね。
(津川 祥吾アンカー)
先ほど、4人に1人の人が間違った情報も拡散してしまうという調査結果がありました。では、なぜですね…例えば、この災害の時に、真偽不明な情報を拡散をしてしまうのか、そこに注目したいと思います。きょうのまとめです。3つほど上げさせていただきました。
・ネガティビティ・バイアス
「ネガティビティ・バイアス」というものがあります。これは心理学の用語ですけれども、不安な時ほど悪い情報を信じやすくなる心理。私も大学でちょっと勉強しましたが、たくさんの調査結果があります。「確かにこれそうだよな…」と実感のある人も多いかと思います。
・情報遮断による敏感化
2番目ですが、情報遮断による敏感化。例えば震災が起こった直後ですね。新しい情報を知りたい…でも分からない。なかなか新しい情報が入ってこない時に、ちょっとした情報だけでも敏感に反応してしまうというところが、まず、情報を受ける場合の話ですね。
・善意による拡散
そして3番目、善意による拡散。「こんな危ないことがありましたよ。皆さんに伝えなきゃ…」という思いになって拡散をしてしまうという。
この3つの心理的な働きが起こる。ですから、私たちはみんな、こういったことが起こり得うるんだというところを自覚することで、こういった情報に触れた時にですね、まず、ちょっと冷静に、その情報を受け止めようというところを、まず心がける必要があるのではないかということです。
それに加えまして、もう1つ申し上げたいと思います。今、1つあげましたが、この「ネガティビティ・バイアス」ですが…、これは不安な時などに情報を信じやすくなるというんですが、「本能」です。「生存本能」に根差す自然な反応です。ですから、これをやめようと思っても、実はなかなか難しいんじゃないかと思います。では、どうするかいことですが…、私はですね、だからこそ、本当の情報を、いち早く、誤情報を打ち消すほどに、正確に、また、強く発信する必要があると思います。それは、SNSを利用されているみなさん…というよりも、むしろ私たちニュースを伝える側こそが、真剣に胸に刻むべきものだと思います。
私も、伝え方が不十分だなと…自分自身でも反省するところがありますが、それでは、なかなか誤情報を打ち消すことができません。私自身も、報道に関わる一員として、これからも、しっかりと努力を続けてまいりたいと思います。
