アメリカ・ロサンゼルスを襲う史上最悪の大規模火災。いまだ終息の兆しは見えない中、これまでに少なくとも25人が死亡。住宅など1万棟以上が被害を受けている(1月15日時点)。

【映像】「空が真っ赤に…」ジョニーさんが「当日」見た光景

 さらなる被害の拡大が懸念される中、多くの住民が厳しい状況に置かれている。

「本当に全部なくなった。妻とペット3匹(犬1匹と猫2匹)以外はもう何も残っていない」(火災で自宅が焼失した加門ジョニー健太郎さん、以下同)

 この火災で、代々受け継いできた大切な家を失ってしまったジョニーさん。内陸にあり住宅が密集するイートン地区アルタデナの住民である。

「1月7日の午後6時半頃、帰り道で火が見えた。すぐに消防車・救急車などを呼んだ。風が本当にすごくて、見ている間に小さかった火が大きくなってきて空が真っ赤になっていた。家は全然心配ないと思っていたが、急に風で(火が)うちの家に来て、灰がいっぱい飛んで温かくなってきた」

 火災を確認してからおよそ1時間後、携帯電話に緊急アラートが届き、危険を感じたジョニーさんは避難することに。仕事先から帰ってきた奥さんと家を離れる頃には火の手はさらに迫り、車のドアの開閉も困難なほどの強風だったという。

「消防署は家から車で10秒。本当に近かったので心配しておらず『ちょっと火が出ても大丈夫だ』と思った」

 避難していたジョニーさんが戻ったのは4日後の1月11日。目の前には変わり果てた光景が広がっていた。

「映画より信じられなかった」

「家は本当に1戸も残っていなかった。映画より信じられなかった。この山火事で全部なくなった。思い出、写真、必要な物は全部なくなった」

 そんな時、ジョニーさんの元に届いた一枚の画像。そこには「家を失った人たちに今後3年間、家賃の90%を支払うクーポン配布します」と書かれていたが、これは国の機関を装ったニセ情報。個人情報を悪用するためにSNSやメールで拡散されたもので、ジョニーさんも騙されて友人らに有益情報として拡散。クーポンを受け取りにいった場所で詐欺だと気づき、被害は事前に免れた。

「お金だけでなく愛を出してくれた」

「やっぱりそういう騙す人はすごく巧妙だ。若い人でもパニック状態の中“グッドニュース”を見たら何とか信じたいと思ってしまう」

 ジョニーさんは当面の生活資金などを工面するため、Go Fund Meでクラウドファンディングを始めた。世界中の人たちから支援の手が差し伸べられているという。

「本当にありがたい。お金だけでなく、気持ち、メッセージ、愛を出してくれて。こんなサポートを感じるのも人生で初めて。知らない人から『頑張って』『大丈夫だよ』『スマイル』というメッセージがいっぱい来ていて…ありがとうございます」


災害時に騙されないために

 科学技術が発達した昨今、大規模火災を事前に予測して対策することはできないのだろうか?

 JX通信社 代表取締役 米重克洋氏は「様々な予測技術が開発をされているが、どうしても予測できないことは起こる。そのため、予測できないことも含めた全てのリスクに備えることが重要になってきている」と説明した。

 ジョニーさんも騙されそうになったニセの支援情報について米重氏は「ニセ情報は人々に余裕がない時に出回りやすい。騙されないためには『災害時はソーシャルメディアで情報を収集しようとしない』というルールを設けるくらいの腹の決め方が必要で、公的機関・報道機関など、オフィシャルな情報源に当たるべきだ」と指摘した。

 情報の真偽に関連して、トランプ新政権で要職に就くイーロン・マスク氏はXで、「(被災地での)略奪を非犯罪化」という虚偽情報を拡散したり、「(火災は)アメリカの崩壊を引き起こすための陰謀だ」という投稿に対して「真実だ」と反応している。 

 この点について米重氏は「最近のイーロン・マスク氏の言動を見ていると、経営者よりも政治家としての側面が強くなってることが分かる」と指摘した。

「最近では、トランプ氏と一緒に外国の首脳との会談に同席するなど、動きが完全に政治家だ。そういった前提で考えると、その行動にも納得がいくところがある。つまり、“裏付けがある正しい情報”よりも自分の考えや政治的意見に近い情報をなるべく正しいもののように発信することで自分の意見を補強しようとしているようだ」

 さらに、「そんなマスク氏がXというプラットフォームを司っている立場の人間であることは厄介な問題だ」と警鐘を鳴らした。

「大勢の人が発信するSNSでは情報が溢れるため、“絞る”役割をアルゴリズムが担っている。そんなアルゴリズムの加減を調整することによって、言ってしまえば、『プラットホーム側が見せたいものをユーザーに見せる』あるいは『考え方を変えること』もやろうと思えばできるのだ」
(『ABEMAヒルズ』より)