ダウンタウン「浜田雅功」に走る“異変” 「松本人志」の配信に顔を出さぬまま、テレ朝で26年ぶり冠番組の意味
5月17日スタート
ダウンタウン・浜田雅功の新たな冠番組「浜田雅功とアスリート幸福論」がテレビ朝日で5月17日に始まることになった。浜田にとってテレビ朝日での冠番組は26年ぶりということになる。【ラリー遠田/お笑い評論家】
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この番組では、浜田が「芸能人格付けチェック」で共演してきたヒロド歩美と共にMCを務める。トップアスリートの人生を振り返りながら、彼らの栄光と挫折、その背景にある人間ドラマに迫っていく。番組はスポーツ総合誌『Sports Graphic Number』とコラボすることになっており、同誌の過去記事からも情報が紹介されるという。

今このタイミングで浜田がテレビ朝日の冠番組を持つという事実は、ダウンタウンというコンビにとって特別な意味を帯びている。相方の松本人志が有料配信プラットフォーム「DOWNTOWN+」を拠点に活動している現在、その対照性がどうしても際立つことになるからだ。
ダウンタウンは言わずと知れた人気お笑いコンビであり、コンビでも個々人でも長年にわたって数多くのレギュラー番組を持っていた。だが、2024年以降、週刊誌報道を発端とする松本をめぐる騒動と活動休止を経て、テレビ業界でのポジションは大きく変わった。出演していたレギュラー番組は、終了するものもあれば、松本を外した形で継続するものもあった。
松本は地上波復帰を果たせないまま、2025年11月に「DOWNTOWN+」という配信プラットフォームを立ち上げて、活動を再開した。地上波の外側に自分たちの名前を冠した有料空間を作るという選択は、テレビへの復帰を目指すというより、テレビとは距離を置いて自分たちの城を築くという動きに見える。そこではスポンサーや放送倫理に縛られず、直接課金する熱心なファンに向けた活動を行うことができる。
ただ、コンビの名を冠したプラットフォームではあるが、現時点では浜田はそこに積極的にかかわろうとはしていない。新たに作られているコンテンツはすべて松本主導のものであり、浜田はいまだに顔を見せていない。松本が復帰してから、コンビが揃った形では一度も仕事をしていない。
少なくとも今の段階では、浜田は「DOWNTOWN+」よりもテレビに力を入れているように見受けられる。2025年春には体調不良で一時休養したが、その後はテレビのレギュラー番組にも順次戻っていった。そんな彼がテレビ朝日で26年ぶりの冠番組を持つというのは、まだテレビを軸足に置いており、そこに自分の居場所と役割があると考えている証である。
両者の資質の違い
もちろん、この新番組スタートの事実だけで「浜田は松本と決別した」とまで言い切ることはできない。ただ、少なくとも、両者の目指す方向が全く同じというわけではなさそうだということはうかがえる。松本が自前の配信プラットフォームでコアな支持層に向き合っているのに対し、浜田はテレビという開かれた場に戻り、幅広い層に届く仕事を引き受けているからだ。
この差は、戦略の違いであると同時に、両者の資質の違いでもある。松本が「閉じた文脈の深度」を武器にする芸人だとしたら、浜田は「開いた場での交通整理」を武器にする芸人だ。そんな浜田にはテレビという場所が合っている。
浜田は昔から、思想を語る人間であることよりも、番組という枠の中で役割を果たす人間であることを選び続けてきた。司会、ツッコミ、仕切り、リアクションなどの「テレビ芸」を磨いてきた人物である。だからこそ、配信で好き勝手にやることよりも、制約の中で成立させる技術の方に強みがある。テレビのルールが厳しくなった今の時代こそ、その窮屈さを感じさせない技術とキャラクターを持った浜田のようなタレントが魅力的に見える。
今回の冠番組開始は浜田がテレビに骨を埋める覚悟を示したものである、とまで言うのは言い過ぎかもしれない。しかし、少なくとも「自分の主戦場はテレビである」というメッセージとして読むことにはそれなりの根拠がある。今後ダウンタウンというコンビがどのような方向に進むとしても、浜田は最後までテレビスターとして輝きを放ち続けるだろう。
ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。
デイリー新潮編集部
