元格闘家社長が挑む空き家活用法 外国人材×農・海産物で利回り15%をたたき出す

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プロキックボクサーが農業を経て不動産業へ

「組織の中で働くよりも、自分で事業を立ち上げるほうが自分に合っていると思いました」

こう笑いながら話すのは神戸翔太クールコネクト社長(32)(写真)だ。神戸氏は平成5年生まれ。高校時代に格闘技留学でオランダに渡り、プロキックボクサーとしてK1などに出場した経歴を持つ。23歳まで現役を続け、次のステップに進もうとキックボクシングのパーソナルジムを開業し法人化、最大5店舗まで拡大したものの、コロナ禍で全店舗を売却し、会社を閉鎖。並行して手がけていた農業事業にシフトした。

同社は、2019~2020年にかけて、農業法人として長ネギの生産からスタート。JAなどの支援を受けながら、5000~6000㎡の農地から事業を始め、徐々に規模を拡大してきている。
とはいえ、神戸氏は農家の出身でも農業の専門的なバックグラウンドなど一切ない。
「ホリエモン(堀江貴文氏)が"農業だろう"って言っていたことをきっかけに自分でやってみようと思ったのです」
と農業への参入の動機を話す。しかし、続けていくうちに農業の面白さにひかれていった。

空き家×外国人材という「気づき」

かつての空き家もシェアハウスとして活用されている

そんな農業で野菜の生産・卸売を手がける中で、外国人スタッフの住居確保が課題となった。
「自社で外国人を採用したときに彼らの家を探そうとしたのですが、外国人という理由で断られる。それだったら自分たちで空き家を買ってそこを寮にすればいいんじゃないかと思ったのです」
 それがこの事業の出発点になった。そして、「これを始めたところ、これは投資家にとっても価値のあるモデルになるのではないかと感じ」と神戸氏は振り返る。

事業化にあたって着目したのは製造業や農業現場で働く特定技能外国人の住居難だ。外国人は審査が厳しく、一般の賃貸住宅を借りられないケースが多い。一方、全国の空き家は2023年時点で約900万戸(総務省調査)を突破し、社会問題化している。
空き家を外国人材向けシェアハウスとしてリノベーションし、企業の社員寮として提供するビジネスモデルは、需要と供給を一気につなぐ仕組みだった。

現在は150室・50~60棟を管理。顧客の8~9割が製造業系の企業で、コンビ二関連の食品工場や自動車関連企業からも依頼が来るという。展開エリアは群馬、埼玉、神奈川、茨城、兵庫、沖縄と全国に広がり、東京も2026年4月から運営が始まった。

利回り15%を実現する収益モデル

地方には空き家が多いので物件探しには、それほど苦労がないという。
実際の購入はキャッシュで、購入後リノベーションし、投資家へ売却する。
「うちが売る物件の利回りは15%前後になります。その理由は物件自体が安いですし、部屋の広さにもよりますが、寝室として1部屋に2~3人、これに共有スペースを作ることで、賃貸アパートと比べれば1.5倍家賃収入になります」
つまり、シェアハウスにすることで一般的な賃貸アパートよりも収益性が高くなるというわけだ。
もちろん、単に物件を売却するわけではなく入居者も確保する。
具体的には外国人支援会社からの依頼が中心で、職種や人数などに合わせて空き家物件を探す「需要先行型」が基本だ。こうしたことで空室リスクを最小化している。

農業と合わせた前年度の売上は約9億円。今では売上の大半を不動産事業が占めており、今後は農業法人とクールコネクトを完全に分社化し、農業は加工・卸売に、不動産は外国人向け賃貸・社宅代行に、それぞれ特化させていく方針だ。

空き家でキノコ、そして「世界初」のウニ・クエ養殖へ

キノコは少ないエネルギーコストで栽培できる

こうした空き家活用はシェアハウスだけにとどまらない。露地野菜の不安定さをカバーしようと着目したのがシイタケ、キクラゲを中心としたキノコ栽培だ。
「農業だけですと、投資に対してのリターンを読むのは難しいところがあります。そこである程度見通しが立てられるというのがシイタケやキクラゲでした」
キノコ栽培にした理由もわかりやすい。
「水やりは自動化できるため人手も少なくて済みますし、キノコは葉物野菜の植物工場のように光(日当たり)が必要なく大規模な電力コストがかかりません。ビニールハウスよりも空き家買った方が安上がりです」
空き家をキノコ施設に改装する技術で特許も取得している。

キノコの次は空き家で海産物

クエの養殖は試験段階

2026年3月からさらに新たな挑戦として始めたのが空き家を活用したウニとクエの養殖だ。
「空き家でウニやってるところははいないですね。クエもいないと思います。世界初です」と胸を張る神戸氏。
群馬などの海なし県ではニジマス、ヤマメなどの淡水魚の養殖はあるが、海水魚の養殖は岐阜県のトラフグぐらいしかない。

それにしても、なぜウニとクエなのか。
「業者に小さな面積で養殖ができて、単価が高いものは何かと相談すると、ウニとクエという答えだったので、それをやってみようと」
と笑う神戸氏。これはキノコのシイタケとキクラゲの栽培も同じ理由だ。ただ、ウニとクエは現時点では実証段階で、空き家活用の一例として可能性を探る姿勢で臨んでいる。

農業からスタートし、「空き家×外国人材」という社会課題の交点にビジネスを見出したクールコネクト。キノコ栽培から海産物の養殖まで、「使われていない空間」の価値を問い直す実験が続いている。

神戸翔太・クールコネクト社長インタビュー
「売り先を決めてから、物件を仕入れる」という発想

「思いついたらすぐ行動」神戸翔太・クールコネクト社長

空き家を活用した外国人向けシェアハウス、キノコ栽培、海産物の養殖とその用途を広げる同社。「とにかく動いてみる」という経営スタイルで、どのように事業を組み立ててきたのか聞いた。

■農業の限界が、次の扉を開けた
――外国人シェアハウス事業の入口は、自社スタッフの住居問題だったということでした。
「農業をやっていると外国人スタッフは欠かせませんが、彼らのために賃貸住宅を借りるのはなかなか難しい。だったら自分たちで物件を用意すればいい、という発想ですよね。買ってみたら意外とビジネスになった、という流れです」

■「先に客ありき」が空室ゼロに近づける
――物件はどうやって仕入れているのですか。
「最初は自分たちの判断で買っていたんですが、なかなか入居が決まらないケースもあった。そこで方針を変えて、今は企業や外国人支援機関から『この地域で住居を探している』という依頼を受けてから物件を探すようにしました。これまでの順番を逆にして、売り先を決めてから仕入れるやり方にしました」
――それが収益性を上げる要因になっているわけですね。
「仕入れは基本キャッシュです。地域によって違いはありますが200~300万円台の物件が中心です。1棟に複数人が入るシェア型で運用するので、通常の賃貸と比べて収益性が上がります。今後は買って売るだけでなく、稼働率の落ちたアパートを一棟借り上げて転貸するモデルも増やしていきたいと思っています。というのも、入居の依頼は多いので、自社で全部買うのは追いつかないのです」

――取引先はどんな企業が多いですか。
「製造業系が中心で8~9割。大手の工場からも案件が来ています。エリアは横須賀・横浜が多く、群馬県内や沖縄でも動いています。東京では板橋区から始める予定です」

■空き家で山の幸、海の幸を育てる理由
――空き家でのキノコ栽培や、海産物の養殖にまで取り組んでいますが、そこまで広げようと思った理由はなんですか。
「農業の露地栽培は天候に左右されて収益が変動します。そこで屋内で安定してできるものを探したところ出てきたのがキノコでした。葉物野菜の植物工場のように電気代がかかりません、しかも、空き家という低コストの場所でできる。その延長が高単価な海産物を空き家で作れないかということでした。業者に相談したところ出てきたのがウニとクエでした」

――群馬で海産物の養殖というのは、冒険的です。
「面積が小さくても単価が高いものがウニとクエでした。3月に始めたばかりなので、年末に試食できればというくらいの感じです。あくまで空き家活用の一事例としての意味合いが大きい。うまくいけば飲食店などへの販売も考えたい」

――今後の展開を教えてください。
「農業事業はコメ中心の卸売に絞り込み、不動産とは完全に分けて動かしていきます。クールコネクトは外国人向け賃貸と社宅代行に集中。上場も検討しましたが、コストの割に実益が薄いので、ブランド化をしていきたいと思っています」