「娘が誕生した後も、夫は変わらず『妻ファースト』なんです」。照れくさそうに語る澤穂希さんは、2015年に現・福島ユナイテッドFC副社長・辻上裕章さんと結婚し、今年で11年目。現在は小学3年生の娘を育てる日々ですが、夫婦の絆は深まるばかりだといいます。その幸せの距離感について、じっくりとお話を伺いました。

【写真】「結婚11年目も仲のよさが伝わる」澤夫婦のプライベート公開(全11枚)

現役引退を悩んだ当時に背中を押してくれた夫

サッカー日本代表キャプテンとしてチームを牽引した澤さん

── 2015年に辻上裕章さんと結婚。今は旦那さんの仕事の関係で小学3年生の娘さんと3人、仙台で暮らしているそうですね。仙台での暮らしは初めてとのことですが、いかがですか?

澤さん:知り合いはおらず、寒いのも苦手だったので、最初は「大丈夫かな?」と少し不安でした。住んでみたら人が温かく、食べ物も美味しくて。海や山がある自然豊かな土地なので、子どもを育てるにはとてもいい環境だと思いました。

人間関係も、娘が幼稚園や小学校に通い出してからはママ友をはじめ、知人、友人の輪が広がりましたし、東京に戻りたいと思ったことはないですね。

── とてもいい環境で過ごされていますね。旦那さんとは結婚して11年目になりますが、旦那さんとの出会いから結婚に至るまでの経緯を改めて伺ってもいいでしょうか?

澤さん:友人関係だった夫と2010年に再会し、年に1回くらい、友人として食事に行くようになっていました。もともと「素敵な人だな」と思っていたのですが、2015年くらいから会う頻度が増えて、自然と交際にいたった感じです。

── 2015年には日本が準優勝したFIFA女子ワールドカップがカナダで開催されましたが、世界の大舞台でも旦那さんの存在がやはり支えになりましたか?

澤さん:とても支えになりました。夫は私のことを「ほー」と呼びますが、「身体やプレーについては、ほーが頑張ってやらなきゃいけない。でも、心の部分、精神的な部分は俺が支えるから」と言ってくれて、とても頼りになったことは覚えています。この言葉でワールドカップを乗り越えることができました。

また、結婚後は現役を続けるか、引退するか、この先の方向性について考えていました。ここでも夫が「俺のことは気にせず、ほーがどうしたいか。ほーが決めればいい」と言ってくれました。私はそのとき、心と身体がともに、トッププレーヤーとして難しいと思ったので、引退を決めました。

── そうしたことがあったのですね。また、交際から8か月で結婚されます。

澤さん:話がトントン拍子で進みましたね。自分が現役時代にINAC神戸で8番の背番号をつけていたこともあって、8という数字が好きだったので、8月8日に籍を入れました。36歳のときです。交際していくなかで物事に対して夫がしっかり意見を言ってくれるところにも魅力を感じました。白黒ハッキリしていて、いいものはいい、ダメなものはダメと言えるので。

夫への安心感で澤さん自身にも変化が

── 澤さんは物事をハッキリ言うほうですか?

澤さん:若いときはそうではなくて。人見知りだし。人に心を開くまで時間が掛かるタイプ。何か思っても、気持ちを抑えていた部分がありました。21歳のときにアメリカのサッカーチームに所属したのですが、アメリカではみんなイエス・ノーがハッキリしていて、自分の意見を伝えないとダメなんだとそこで学びました。

ただ、もともと人に気をつかいがちな性格だからか、夫と交際しているときも自分の気持ちがうまく伝えられないときがあって。「自分が我慢すればいい」と無意識に自分の感情を抑えることもあったんです。

でも結婚してから「思っていることを言っていいんだよ」と夫に言われてから変わりました。我ながらズバズバ言うようになったし、心に蓋をせずに本音で話せるようになったんです。「何があってもこの人なら大丈夫」と、たぶん安心したんだと思います。そのことがよかったのかどうかはわかりませんが、交際する以前は私のほうが夫を好きだったのに、今では立場が逆転したような気がします。

結婚11年目、子どもがいても「妻ファースト」

サッカー選手引退後はスポーツ普及の活動やタレントしても活躍

── 旦那さんの愛情をより強く感じると?

澤さん:そうですね。2017年に娘が生まれてから、夫はもちろん娘のことも大事にしてくれますが、基本的に「妻ファースト」でいつも物事を考えてくれています。

── お子さんが生まれると、妻より子どもに意識が向く人もいるようですが、澤さんの家族では違いそうですね。

澤さん:うちは違いますね。いつも妻ファースト。ちなみに娘もお母さんファーストです。お母さん人気なんですよ(笑)。ありがたいですけど。夫と娘でよく私の取り合いになっていて、たとえば夜寝るときは、川の字で家族3人寝ていていますが、私が必ず真ん中です。食事は横に長いテーブで、3人横並びで座るんですけど、ここも私が真ん中です。外食で4人掛けのテーブルに座るときは、私の隣をどっちが座るか、夫と娘でケンカになったこともあるし、夫と2人でご飯を食べに行っても、夫は私の正面ではなく、隣に座りたがりますね。

── 前に座るとちょっと距離ができて寂しいような?

澤さん:そうみたいですよ。常に触れていたいみたいです。もちろん夫と娘で2人だけで過ごすときは仲よくやっていますが、私が入るとそんな感じになっちゃいます。

それに、夫は学生時代や仕事でも海外で暮らしていたことがあるからか、全然、恥ずかしがらずに言葉や行動で愛情表現をしてくれます。

── 澤さんは2011年FIFA女子ワールドカップドイツ大会でもキャプテンとしてチームをまとめ、日本女子サッカー史上初優勝を牽引されました。家族でもそういう立ち位置ですか?

澤さん:場面場面で違いますが、私がいないとこの家は回らないかも、とは思っています。自分がなんでもやってあげちゃうからいけないんですけど、何かあれば妻が、お母さんがやってくれると思われているので、2人はそこに甘えてる感じですね。甘えられるのも限度があるし、自分のこともやりたいし、2人には自分のことは自分でもっとできるよね…って思うんですけど。結局、なんだかんだとやってあげちゃいますね。

── 澤さんが旦那さんに甘えることはありますか?

澤さん:ほぼないですね。だから夫から「全然、甘えないよね」ってよく言われます。私はそもそも甘えん坊じゃないし、マイペースでひとりの時間が好きなんです。 

仕事で「週末婚」な現在も、家庭的な夫と描く未来は

── 澤さんファーストの家族で、夫婦の家事分担に関してはいかがですか?

澤さん:夫は結婚当時は古巣・ベガルタ仙台のスタッフをしていましたが、2022年から福島ユナイテッドFCの取締役副社長に就任しました。このため、現在は平日は仕事で福島に行っていて、週末に仙台に帰ってくる生活なので、家事は私が基本的にやっていますが、夫が家にいるときはときどきご飯を作ってくれますよ。夫は料理が上手ですし、私が家にいないときは洗濯をしておいてくれたり、気づいたことは動いてくれるほうだと思います。

── 旦那さんはたとえばどんなものを作ってくれますか?

澤さん:先日の晩ご飯はカルパッチョとミネストローネ、アボカドのサラダ、バゲットとリゾットでした。

── すごく手の込んだメニューですね!ワインが合いそうです。

澤さん:そうなんです。夫が作った料理は見た目がきれいだし、味もひと手間加えたような、繊細で上品なものが多くて、いつも美味しいですよ。私が作るのはハンバーグやしょうが焼き、カレーライスとか、子どもが好きそうなメニューがどうしても多いですね。あと、豚の角煮とか豚キムチとか、モリモリ食べられる系です。

── 旦那さんとはこの先どうやって過ごしていきたいですか?

澤さん:夫は今は仕事で多忙なのですが、お互い体に気をつけて、この先も長く一緒にいたいです。言いたいことはなんでも言い合って、楽しく元気に過ごしていけたらいいなと思っています。

取材・松永怜 写真 : 澤穂希