日本チームが量子計算で快挙、量子位相差推定による高精度計算技術を開発 ソフトバンク、三菱、慶應大、JSR
●大規模エネルギーギャップ計算に成功
分子の物性は電子の状態計算により明らかにされるが、電子数の増加に伴い、計算コストが指数的に増加するため、従来は近似手法が主流だった。特に電子相関が強い複雑な物質では、密度汎関数理論(DFT)などの近似では十分な精度が得られない課題があった。量子コンピューターは量子もつれや重ね合わせの特性を活かし、これらの計算を指数的に高速化できると期待されているが、ノイズの多さや大規模回路の実行困難さが障壁となっていた。
●量子回路圧縮を組み合わせた手法を提案
今回、大規模な分子のエネルギーギャップを高精度で求めるために、エネルギーギャップの計算手法のひとつである量子位相差推定とテンソルネットワークによる量子回路圧縮を組み合わせた手法を提案した。
この手法を日本IBMのゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」および「IBM Quantum System Two」上で、Q-CTRLエラー抑制モジュールを用いて、標準的なトランスパイルの7242制御Zゲートレベルで、ハバードモデルおよび直鎖分子に対して実行。結果として従来の5倍以上である最大32量子ビット(32スピン軌道)のシステムに対するエネルギーギャップの計算に成功した。
この結果は大規模な分子の物性を高精度に解析する道を切り拓くことが期待できる、としている。ソフトバンク、慶大、三菱ケミカルおよびJSRは、今後も量子コンピューターを用いた幅広い実応用の技術確立を進めていく考えだ。
分子の物性は電子の状態計算により明らかにされるが、電子数の増加に伴い、計算コストが指数的に増加するため、従来は近似手法が主流だった。特に電子相関が強い複雑な物質では、密度汎関数理論(DFT)などの近似では十分な精度が得られない課題があった。量子コンピューターは量子もつれや重ね合わせの特性を活かし、これらの計算を指数的に高速化できると期待されているが、ノイズの多さや大規模回路の実行困難さが障壁となっていた。
●量子回路圧縮を組み合わせた手法を提案
今回、大規模な分子のエネルギーギャップを高精度で求めるために、エネルギーギャップの計算手法のひとつである量子位相差推定とテンソルネットワークによる量子回路圧縮を組み合わせた手法を提案した。
この手法を日本IBMのゲート型商用量子コンピューター「IBM Quantum System One」および「IBM Quantum System Two」上で、Q-CTRLエラー抑制モジュールを用いて、標準的なトランスパイルの7242制御Zゲートレベルで、ハバードモデルおよび直鎖分子に対して実行。結果として従来の5倍以上である最大32量子ビット(32スピン軌道)のシステムに対するエネルギーギャップの計算に成功した。
この結果は大規模な分子の物性を高精度に解析する道を切り拓くことが期待できる、としている。ソフトバンク、慶大、三菱ケミカルおよびJSRは、今後も量子コンピューターを用いた幅広い実応用の技術確立を進めていく考えだ。
【共著者】:
・三菱ケミカルグループ:菅野 志優、小林 高雄、高 玘・慶應義塾大学:杉崎 研司(当時)、中村 肇、山本 直樹・ソフトバンク株式会社:山内 啓嗣・JSR株式会社:佐久間 怜(敬称略)
【掲載論文】:
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2425026122
プレスリリース原文:量子計算技術の社会実装を推進する「量子コンピューターを用いた大規模なエネルギーギャップ計算手法」の開発に成功(ソフトバンク先端技術研究所):
https://www.softbank.jp/corp/technology/research/story-event/082/
