左から:プチ・レトル 代表取締役の谷口恵子氏、国際ビジネスコミュニケーション協会 常務理事の永井聡一郎氏

TOEIC Programを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(以下、IIBC)は、今までに英語コミュニケーション(翻訳・文章作成・文章理解・会話補助)において生成AIを活用したことがある20〜50代の男女1032人を対象に「生成AI活用における英語コミュニケーションの実態と意識」に関する調査を実施した。5月12日に行われたメディアラウンドテーブルでは、同調査の結果やグローバル調査をもとに、AI活用および英語学習の第一人者であるプチ・レトル 代表取締役の谷口恵子氏を特別ゲストに迎え、有識者の見解からAI時代に必要な英語力や変革期にある英語学習の現状を深掘りした。また、AI時代におけるTOEIC Programの役割や今後の展開について説明した。


国際ビジネスコミュニケーション協会 常務理事の永井聡一郎氏

「当社が実施した『生成AI活用における英語コミュニケーションの実態と意識』に関する調査結果によると、生成AIの活用で英語への心理的ハードルが『下がった』と約半数が回答した。一方で、7割以上が『生成AIの英語が正しく伝わっているか不安』に感じており、その理由の大半は『英語表現やニュアンスが適切・自然かどうか自分で判断できない』『失礼な表現になっていないか不安』が占めていた」と、IIBC 常務理事の永井聡一郎氏が、最新の調査結果について解説。「『生成AIが進化しても人間が英語を学ぶ必要があるか』という設問に対しては、8割以上の人が『英語学習は必要』と回答。また、『英語力が向上した場合、役立てたい場面』については、『仕事・ビジネス用途』(45.3%)が最も多かったが、『日常生活』(36.4%)、『学習・自己研鑽』(27.8%)、『海外旅行・海外コミュニケーション』(27.1%)、『趣味・娯楽』(20.6%)も高い水準で並び、学習目的が多岐にわたっていることが浮き彫りになった」と、生成AI時代でも英語学習は必須であり、今後は“AI英語”を見極める判断力と直接コミュニケーションできる英語力が重要になるとの見解を述べた。

「次に、TOEIC Programを制作するETSが人事意思決定者を対象に行ったグローバル調査『TOEIC Global English Skills Report』を見ると、AIツールの導入によって職場における英語力の必要性が高まると8割以上が回答していた。英語力に関するAIサポートについては、リーディング、ライティング、スピーキング、リスニングすべての項目で、『完全に補うことができる』との回答は2〜3割にとどまり、AIでは英語力不足は埋められないことが示唆された。また、英語力が低い従業員の多い組織は、競争上不利な立場にあると8割以上が回答。さらに、標準化された英語力テストの利用は、競争力および組織の成長と強い相関関係があることもわかった」と、英語力に関するグローバル調査にも言及。「これらの調査から、生成AI時代には、企業・団体の英語学習意欲はさらに高まると見ている。実際に、昨年度の『TOEIC Speaking&Writing Tests』の採用団体数は460件、受検者数も5万人を突破し、年々増加を続けている」と、TOEIC Programのニーズも右肩上がりで高まっていると強調した。


プチ・レトル 代表取締役の谷口恵子氏

ここで、プチ・レトル 代表取締役の谷口氏を特別ゲストに迎え、最新調査とグローバル調査をさらに深掘りするトークセッションを実施した。まず、「AIが英語のハードルを下げている」という調査結果を受けて、谷口氏は、「私は企業研修でAI活用コーチや英語学習コーチを務めているが、その中で、明らかにAIによって英語学習のハードルが下がっていることを実感している。特に、今までは英語が苦手で学ぶのを避けていた人が、AIを活用すればできるようになるかもしれないと希望を持てるようになった。また、英語中級レベルの人も、AIを使ってライティングやスピーキングの能力を高めることが可能になった」と、企業研修の現場でもAIが英語の学習意欲を後押ししていると語る。「AIは、英語の先生やコーチ、さらには英会話の相手にもなってくれるので、独学でも英語を学習することができる。また、AIと対話することで、自分の目的、レベル、興味関心に合わせて、個別最適化した英語学習ができるようになった」と、AIの登場によって英語学習の方法が大きく変わりつつあるという。

一方で、AIに頼りすぎることで起きる問題点について、谷口氏は、「AIに頼りきりでは、英語力は全く伸びないので気をつけてほしい。さらに、AIに頼る英語は、対面のコミュニケーションにおいても課題がある」と指摘。「AIに英文のメールを作ってもらったら、そのまま送るのではなく、文脈は正しいのか、相手やシチュエーションにふさわしい表現なのかなどをチェックして、AIを使いながらブラッシュアップしていくことが大切。また、相手との関係性に応じて変わる生きた英会話は、AIとの対話だけでは身につかない。ぜひ、人間同士の実践的なコミュニケーションからも学んでほしい」と、アドバイスしてくれた。IIBCの永井氏は、「ビジネスの観点からは、AIに頼りきった英語では、取引先や顧客とのコミュニケーションが深まらないリスクがある。ビジネスの場は競争であり、商談でもAI頼りのたどたどしい英語よりも、自分の言葉でコミュニケーションができたほうが有利になる。特に、海外企業とのコンペにおいては、AI頼りの英語では競合に打ち勝っていくのは難しいと考えている」と、ビジネスではAIに頼らず自分の言葉で伝えていく必要があると訴えた。


左から:プチ・レトル 代表取締役の谷口恵子氏、国際ビジネスコミュニケーション協会 常務理事の永井聡一郎氏

では、今、ビジネスの現場では、どのような英語力が求められているのだろうか。谷口氏は、「コロナ禍を経てオンライン会議が当たり前になった現在、海外企業の担当者と直接コミュニケーションをとる機会も増えている。そのためビジネスの現場では、リスニングやスピーキングの能力が重視されていると感じる。実際に企業研修でも、スピーキングのニーズが高まっており、ビジネス会話だけでなく雑談ができるまでのレベルを求める企業も増えてきている。また、少子高齢化が進む中で、外国人労働者のさらなる雇用拡大を見据えて、英語を共通言語にする動きも出てきている」と、スピーキング能力がさらに重要になると説く。これに永井氏は、「世界では、単なるビジネス英会話だけではなく、役割に応じて英語を使いこなすデュアラブルスキルにも注目されている。今後は、プロジェクトマネジメントやチームビルディング、コラボレーションなど、目的を達成するための高いレベルの英語力が必要になる」と、相手と目的に合わせて伝える英語力が求められると述べていた。

最後に、AI時代において英語力を「測る」ことの意味について谷口氏は、「AIを活用して独学でも英語学習ができるようになった中で、個人の英語力を『測る』意味は大きいと考えている。特に企業では、英語力を備えた人材育成の計画を立てやすくなり、効果測定の面からもTOEIC Programのテストは今後も必要不可欠だと思っている。そして、これからは、やはり英語で話す能力を測定する『TOEIC Speaking Test』の重要性がますます高まっていくとみている」との考えを示した。


国際ビジネスコミュニケーション協会 常務理事の永井聡一郎氏

再びIIBCの永井氏が登壇し、TOEIC Programの今後の展開について説明した。「AI時代のビジネス現場においては、『聞く・話す』を軸に、『伝える』英語力が求められる。そこで、英語で伝える力を評価する『TOEIC Speaking Test』の展開を推進していく」とのこと。「同テストは、コミュニケーションタスクを中心に設計されており、ノンネイティブスピーカーを対象に『実需』の英語力を測定する。試験時間は約20分間、問題数は計11問。テストの採点は、すべて認定を受けた採点者が行う。AIではなく人が採点をすることで、細かいミスがあっても、解答が『伝わっているかどうか』を加点方式で評価する。また、問題ごとに異なる採点者を置くことで、バイアスを排除し採点の客観性を担保している」と、「TOEIC Speaking Test」の概要について紹介した。

「今年2月からは、『TOEIC Speaking Test』の公式アプリとして『TOEIC Pal』を提供開始した。『TOEIC Pal』は、テストと同じ問題構成でスマホで練習できる学習ツールとなっている。AIが即時に回答を分析し、フィードバックしてくれるので、自分の弱点がすぐにわかる。テストの準備に加え、実践的な英語力も身につくのでぜひ活用してほしい」と、「TOEIC Speaking Test」の採用団体および受講者数がさらに伸びることに期待を寄せていた。

[調査概要]
調査名:「生成AI活用における英語コミュニケーションの実態と意識」に関する調査
調査期間:3月26日(木)〜28日(土)
調査方法:PRIZMAによるインターネット調査
対象人数:1032人
調査対象:20〜50代

国際ビジネスコミュニケーション協会=https://www.iibc-global.org