子どもに正しく教えられる?AIに書き込んではいけない「個人情報」。第一人者が教える年齢に合わせた「ぼかし方」

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あなたは本当に安全にAIを使い、子どもに適切な使い方を教えられるだろうか?A I リテラシーの第一人者である札幌国際大学基盤教育部・教職センター准教授の安井政樹さんは、著書『「考える力」と「好奇心」をぐんぐん伸ばす A I×学び入門』(日経BP)で、「個人情報とプライバシー」の扱い方を子どもたちにどう伝えるかを指南している。

本書から一部抜粋・再編集して紹介する。

個人情報は名前や学校名だけではない

AI時代の親にとって避けて通れないテーマが「プライバシーと個人情報」の扱い方です。これは、「方向性を示すルール」のなかでも、特に自分や家族、友人を守るために、決めておきたい重要なルールです。

子どもたちにまず伝えたいのは、「個人情報は名前や学校名だけではない」ということです。

名前、住所、学校、学年に加え、

・誕生日ケーキ(名前も生年月日も同時に公開してしまう)
・制服姿の写真(学校を特定できてしまう)
・最寄り駅
・部活の種類
・通っている塾
・志望校
・登下校や塾の行き帰りの時間帯

これらは安易にAIやSNS、アプリに書き込んではいけない個人情報です。

部活や塾など、もしかしたら一見ささいな情報だと感じられるかもしれません。しかし、こうした情報も、組み合わせれば、簡単に個人を特定できてしまう時代です。

個人が特定できてしまえば、思わぬ不利益を被る可能性があります。SNSでの本人の特定やネットストーカーなどの被害、なりすましやフェイク画像、つくり話による悪意ある投稿などによる炎上等、デジタルタトゥーになってしまう危険性も高まります。

また、就職活動では、最終段階でSNS調査をする企業も増えてきており、リアルな履歴書としてネット上の情報が使われる時代です。だからこそ、不必要な情報はアップしないほうがいいのです。

こうした個人情報の扱いは、子どもだけでなく、大人自身も注意する必要があります。大人が個人情報の範囲を狭く捉えていると、子どもも同じように理解してしまうでしょう。もしあなたが、個人情報を狭く考えているならば、まずはあなた自身が「どこまでを個人情報と考えるか」をアップデートすることが必要です。

個人情報を書かずに相談するには?

多くのウェブサービスやアプリは、「安全に配慮」「特定の目的だけに使う」「機械学習に利用しない」とうたっています。しかし、クレジットカードの番号やパスワードでさえ漏れることがあるのですから、「絶対安全」はありません。

個人情報は入力する前に、適切な「言い換え」「ぼかし方」を家庭で共有しておきましょう。

・固有名詞は極力使わない
(例)「 〇〇市立△△中学校に通っています」ではなく、「中学生です」で十分な場
面が多い
友だちや兄弟の本名は書かず、「仮名:Aくん」「弟」といった表現にする

・家や生活圏を特定させない
(例)「 家の近くに〇〇があります」ではなく、「今度〇〇に行く予定です」と言い
換える

・習慣や行動パターンを明かさない
(例)「毎週○曜日の塾のあとに○○に行きます」ではなく、「○○に行きます」で十分な場面が多い

こうした具体的な言い換えの「型」を家族で共有しておくと、いざというときにも慌てずに済みます。

「高濃度情報」が個人特定の引き金に

また、「情報の濃度」という考え方も役に立ちます。

恋愛相談などで、

「友だちの話なんだけどね……」

と話し始めたのに、妙に詳しくて(情報の濃度が高くて)「この子自身の話だな」と勘づかれてしまう、というのは、ドラマや漫画でよく見ると思います。対面で知り合いに相談しているならば「この子自身の話だな」と勘づかれてもトラブルに発展することはあまりありませんが、オンラインとなると話は別です。

情報は原則として、足せば足すほど個人が特定されやすくなります。

・「サッカー部です」程度なら、まだ濃度は低め。「毎週火曜と木曜の18時30分に、〇〇公園で自主練をしています」まで書くと、行動パターンを自ら公開している状態

・「東京都在住の女子中学生です」なら、まだ濃度は低め。「○○区立○○中学校の○年生女子です」は、属性を自ら公開している状態

という具合です。「どのくらいの情報の濃度にすれば、十分に目的を達成できるか」を考え、最低限の情報で個人を特定されないようにすることが大切です。

ただし、「情報の濃度」は個人情報を明かさずに質問するための大切な考え方ですが、調整が難しいことでもあります。大人であっても、必要な情報が足りなくて伝わらなかったり、最初から細かく伝えすぎて混乱させたりという人もいます。

そこで家庭では、慣れるまでは、

「今日は濃度が高すぎないかな?」

と親子で確認する習慣を持つとよいでしょう。これは、AIに限らず、SNSも含めて、メディアリテラシーとして身につけたいことです。

子どもの年齢に合わせた線引き

個人情報を書かないことは重要ですが、小学校低学年の子にいきなり「固有名詞を使わずに言い換えよう」「情報の濃度を調整して」というのは無理があります。

そこで家庭では、年齢に応じた線引きもあらかじめ話し合っておきましょう。

年齢に応じた線引きとは、次のような形です。

小学生: 本名と顔写真は原則入力しない。制服や校章が写った写真は使わない

中学生: 言い換えに加え、公開範囲や保存の有無を自分で確認する練習をする

高校生: 定期的に自分の使い方が大丈夫かを確認し、少しでも迷ったら周囲の大人に相談する

どの年代でも、位置情報と時間情報は特に慎重に扱い、現在地やルーティンが推測される表現は避けることを共通ルールにしておくとよいでしょう。その際には、「お父さん(お母さん)なら何と言うかな」と考えてみるように促せば、より安全な判断ができるはずです。

また、どの年代でも、画面が出たらすぐ入力したり、書いたらすぐ送信・投稿したりするのではなく、いったん操作する手を止めて立ち止まることも大切です。

「入力前に一呼吸」
「送信・投稿前に一呼吸」

を心がけるだけでも、個人情報を不用意に公開してしまうなどのトラブルの防止につながります。

安井政樹(やすい・まさき)
札幌国際大学基盤教育部・教職センター准教授。文部科学省学校DX 戦略アドバイザー。デジタル庁デジタル推進委員。